第14話 薬屋 アルフ
翌朝、俺とシエスは、今日から3日間バイトをすることになる薬屋へやって来た。昨日西区を散策して、店の位置を把握しておいたため、迷うことなく辿り着いた。
店内へ入ると、老いたエルフの男が俺達を出迎えた。
「人間とエルフの娘……主らがトルーガの言っていた、お手伝いさんじゃな?」
「そうだ。これから3日間世話になる」
「お世話になる」
「うむ、よろしく頼むぞ。」
俺達を店の奥にある小さな部屋へ案内した後、小さなテーブルを囲うように座って話を切り出した。
「では先ず先に、お主らの名前を言ってくれぬかの?儂はアルフ・セプテムじゃ」
「俺は矢神悠貴」
「わたしはシエス。シエス・ノワール」
「ヤガミユキ……?もしやお主、異世界から来た者か?」
「そうだが、よく俺が異世界から人間だと判ったな」
「数百年前に同じような名前の人間に出会ってじゃな…そやつも異世界から来たと言っておったから、もしかしたらと思ったんじゃよ」
「なるほどな」
この爺さんは俺のような異世界人に会ったことがことがあるのか…
それに歳を老いていることもあり、色々なことを知っていそうだな……これは仕事後にでも、爺さんの知識を分けてもらうとしよう。
「長話のなんじゃし、そろそろ仕事の話をしようかの…だが、1つ確認したいことがあるんじゃがいいか?」
「問題ない、話してくれ」
「うむ。お主ら、
「たしか、人間達のところと通貨そのものが違うんだよね?」
「そうじゃ」
「バルバから少しだけ聞いただけだから、把握は出来ていない」
「あい分かった。ならば、先に説明しておこう」
「頼む」
「
「持っている、少し待ってくれ」
「ほほう…ユキ、
「この魔法って、そんなに珍しいのか?」
「人間が使う場合だけじゃがな」
「つまり、エルフや魔人族達等は基本使えるのか?」
「そうじゃな。って、話が脱線してしまったのう…」
「お爺さんが脱線させたんでしょ?」
「いやあ、すまんの嬢ちゃん。それで、通貨の価値なんじゃが……」
そう言ったアルフは、先ず小さなテーブルの上に魔王領の通貨を銅貨、銀貨、金貨、金貨10枚の順に並べる。次にそれぞれの通貨の下へ俺が渡した通貨を並べた。銅貨の下には石貨、銀貨の下には銅貨、金貨の下には銀貨、金貨10枚の下には金貨という具合だ。
「大金貨は
「大金貨は金貨100枚じゃ」
「なるほど、魔王領は人間の国に比べて、通貨の価値が低いのか……もしかして近くに鉱山が沢山あるからか?」
「正解じゃ。さてと、通貨の説明も終わったことじゃし、仕事の説明をせんとな」
「お主らに頼みたい仕事は基本2つじゃ。接客と品出しこの2つじゃ。と言っても……お主ら笑えるか?」
「悪いが俺は不可能だ」
「わたしも無理」
「…お主らの顔を見た感じ無理じゃろうとは思っとったわい……まぁ、良かろう。不愛想でもこの
「了解だ。何かこれだけはするなとか、注意点はあるか?」
「特に無いのう…っといかんいかん忘れるところじゃった。ユキ、こやつを頭に着けておれ」
と言って渡されたものは角が付いたカチューシャのようなものだ。
「お主がバルバ様の関係者と知っているのは儂とトルーガくらいなものだからのう、万が一の事を考えて、昨晩作っておいたのじゃ。これで一応外見は魔人族に見えるはずじゃ」
「感謝するアルフ」
「ど、どういたしましてじゃ(…こんなにも感情の込められていない感謝の言葉を聞いたのは初めてじゃ…)」
「ユキ着けてみてよ」
「あぁ」
早速頭に着けてみたが…サイズピッタリだな。
「どうじゃ、サイズは合っとるかの?」
「問題ない」
「ユキ、それ似合ってる」
「そうか」
「さてと、準備も出来たから店を開けるのじゃ」
開店後、早速1人の客が来た。
俺は計算が出来るということでカウンターにいる。シエスは品出しだ。
「アルフさんおはようございます。今日もいつものやつ貰えるかしら?」
「いらっしゃい、奥さん。いつものやつじゃな。シエス、棚の上の右端から2番目に置いてあるモノを持ってきてくれ」
「分かった」
「あら、アルフさん、新しく人を雇ったの?」
「若いのがいてくれると楽じゃからな」
「これでいい?」
「ありがとうじゃシエス。奥さん今日は何個じゃ?」
「そうね…8個いただけるかしら」
「あい分かった。8個じゃと銅貨8枚じゃな」
「分かったわ」
と客が渡してきたのは銀貨。それを受け取った俺は銅貨2枚を客に返す。
「アルフさんありがとう、また明日も来るわね」
「こちらこそ、いつもありがとうじゃ」
「お爺さん、あの人毎日ここに来るの?」
「そうじゃ。あの奥さんは旦那と2人で治療院をしておるからの」
「そうなんだ」
こんな感じで外が暗くなるまで仕事をした。時々、シエスにセクハラしようとした馬鹿がいたが、アルフが孫娘を守るが如く、ボディーガードしていた。その際にシエスが俺の方をチラッと見ていたが、何故こっちを見たのかサッパリ解らん。
「お疲れ様じゃ2人共。お主らはこの後、宿に帰るだけかのう?」
「そうだ。他に行く当ても無いしな」
「なら、晩飯を食っていくかの?ユキも儂に色々と訊きたい事があるんじゃろ?」
この爺さん、俺の心でも読んでいたのか?
「ほっほっほ。たとえ無表情でも、何かを知りたいと思っておるやつの顔は一目で判るんじゃよ」
「ユキ、お爺さんに何訊くの?」
「それは晩飯中にでも話す」
「では2人共。飯の準備を手伝ってくれじゃ」
「あぁ、分かった」
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