第5話 盗賊狩り

 ルータの町を出発して2日が経過した。現在俺達は食料を調達するために森の中にいる。


「シエス、この辺りに大きい魔物や動物の反応はあるか?」

「この辺りには無いよ。もう少し奥に進めば何か出てくるかもしれない」

「ならこのまま進むぞ」


 シエスに索敵を任せながら先へ進んで行く。索敵といえば、魔物の魔力を感じ取ったり、気配を読み取ったりするんだが、シエスの場合は熱源感知で索敵を行っており、索敵範囲は最大で約500m程度。この索敵方法であれば魔法等で姿を消したとしても発見できるためかなり重宝している。ただし、アンデッド系が多くいる場所では魔力感知の方で索敵を行うらしい。


「ユキ、この先に4つ反応があった。確かめてみる?」

「あぁ、確かめよう」




 反応があったところへ辿り着くとそこには、オークが3匹とオークの上位種族みたいなやつがいた。


「オークか……今日の飯はこいつで決まりだな」

「うん、オークのお肉はおいしい。ユキが料理すると、もっとおいしい」

「そいつはどうも。そんじゃ、速攻で終わらせるぞシエス」

「分かった」


 まず俺がオーク達の前に飛び出して、水属性の初級魔法水斬ウォーターカッターを1匹のオークの首めがけて放ち、切断して1匹目を狩る。続けて、仲間が殺されたことで俺に襲い掛かってきたところにシエスが、水斬ウォーターカッターをオーク達の背後から放ち2匹のオークの首を狩る。急に2匹のオークが死んだことで困惑した上位種族みたいなやつ。その隙を逃すことなく俺とシエスは同時に水斬ウォーターカッターを放ち、その首を狩った。


「ナイスアシストだ、シエス」

「どういたしまして。それとユキ…」

「ん?あぁ、わかってるよ」


 と言って、シエスの頭を撫でてやる。ルータの町を出て以降、手伝ってもらったり、ほめてやったりする度、頭を撫でてくれと要求してくるようになった。他にも、感情が表に出てくる頻度が多くなったり、時々ではあるが目に光が戻ってきたりしている。


「オークを解体するぞ」

「おー」



 解体作業を終わらせ、必要な部分を異空間収納ボックスへぶち込み、不必要な部分は土属性の初級魔法のホールで作った穴に入れ、周りにある土を被せて穴を埋める。血糊が付いた解体用ナイフは水球ウォーターボールで血糊を洗い流した。


「シエス、この辺りにまだ何かの反応があるか?」

「調べてみる……………………なんだろうコレ?」

「何か見つかったのか?」

「うん、わたし達と同じくらいの大きさが10個程」

「盗賊かなにかかもな」

「やっつける?」

「そうだな……一先ず様子を見てから決めるぞ。シエス、案内してくれ」

「分かった」


 再び反応があった場所へシエスの後を追うように移動を開始した。





 移動を開始して約10分、遺跡のような場所に着いた。そこの中央にアジトと思われる洞窟のような入り口があり、下へ降りれるようになってるようだ。ついでに見張りらしき人間も見つけた。


「これは盗賊確定か?」

「多分そうだと思う」

「一度中に入ってみるぞ。幻影系の魔法を使えばある程度なら大丈夫だろうし」

「もし見つかったら?」

「その時に決める。そんじゃ行くぞ」

「うん」


 城から脱出する時にも使った、光属性の初級魔法幻影イリュージョンで姿を隠し、見張りに気付かれることなくアジトの中へ入る。


 中へ入ると盗賊達がテーブルを囲んで騒いでいた。


「へへへ、今回も大量だったな!」

「そうだな!」

「しかもレア物も手に入ったしな!」

「なんだったけな?」

「おいおい忘れたのか?魔晶石だぜ魔晶石。」

「そうだった、そうだった」

「魔晶石ってなんですかリーダー?」

「お前は魔晶石を初めて見たんだっけな。よし、俺様直々に説明してやろう。魔晶石ってのは簡単に言えば魔力の結晶だ。自身の魔力が足りない時に魔晶石を使って魔力を補充、逆に万が一の時に備え魔力を貯めておくことができる代物だ」

「そいつはすごいですね」

「ただ、今回のはそこまで大きくないから、貯められる量も多くはないぜ」

「でもレア物なんですよね?」

「そうだな。魔晶石は話を聞く限り、魔族や魔王が住んでいる付近でしか取れないらしいからな」

「いずれは魔王のとこにも盗みに行きたいぜ!」

「やめとけ。行ったら確実に死ぬぞ」

「それはわかってるけどよぉ~」


 魔晶石か……今の俺達には便利な物みたいだな。それを奪うとするか…

幻影イリュージョンを解き、シエスと一緒に迅雷じんらいを放つ。俺達が突然何もないところから出現したことに驚いていた盗賊達は迅雷じんらいをまともに浴びて全員戦闘不能になった。俺は先ほどリーダーと呼ばれていた男の元へ向かう。


「き…貴様ら…………どう、やって、ここに…入った?」

「答えるつもりはない。魔晶石とやらを寄越せ」

「ど、どこで…それを…………」

「答えるつもりはないと言ってるだろ。さっさと寄越せ」

「き、きさま…なんかに…やるわけ、には…」

「…………お前、自分の命が俺に握られていることを理解しているのか?」

「おまえ、のような、ガキが人を…殺せるわけ、ないだろ…」


「……………………シエス、こいつの仲間を1人連れてこい」

「分かった」

「な、なにを…」

「見ていれば判る」


 シエスが持ってきた盗賊の男の首へ手を向ける。そして……


「俺が人を殺せない?だったら証明してやる」

「ま、待ってk」


 水斬ウォーターカッターを放ち盗賊の首を刎ねて殺す。するとリーダーの男は顔面を蒼白させ、ようやく俺の言うことを聞き始めた。


「わ、分かった!おまえの、言う通り…魔晶石をやる。だから、仲間には、手を出さないで…くれ」

「いいだろう」



 リーダーの男の首根っこを掴み、シエスと共にアジトの奥へ男を引き摺って行く。



 アジトの奥へ移動すると財宝が大量に積まれている場所に来た。


「魔晶石はどこだ?」

「そ、そこに置いてある」


 リーダーの男が指さした先には10cm程のひし形で漆黒の水晶が小さな丸テーブルの上に置いてあった。


「シエス、魔晶石を持ってくるついでに短剣や片手剣等、何個か武器と金も持って来い」

「分かった」

「ま、魔晶石だけ、じゃないのか!?」

「誰が魔晶石だけもらうと言った?」

「うっ…………」

「だが安心しろ。お前等の財を全て取るつもりはない。だが、お前等が俺達に牙を向けるようであれば根こそぎ奪ってやるからな」

「わ、分かった。アンタ達には、今後関わらないように、する…」

「それでいい」


 5分程その場で待っていると、物色していたシエスが得物を持って戻ってきた。シエスが持ってきたのは短剣を2本、片手剣を1本、小刀を1本、そして金貨を50枚だ。


「ユキ、武器の良さなんてよく判らないからテキトーに持ってきた。どれ使う?」

「そうだな……小刀を貰うぞ。お前は?」

「わたしは短剣にする」

「残りは異空間収納ボックスに入れておこう」

「魔晶石はどうするの?」

「お前が持ってろ」

「ユキが欲しいから貰ったんじゃないの?」

「たしかにそうだが、俺が使うなんて一言も言ってないぞ。魔晶石を使うのは戦闘時が多いはずだから、お前が持っておけ」

「そういうことなら、わたしが持っておく」


 さて、ここでの要件も済んだことだし、そろそろここから出るとするか…………


「シエス、ここから出るぞ」

「この人間はどうするの?」

「放っておけ」

「分かった」

「出て行くなら、早く出て行ってくれ…………」



 リーダーの男に急かされるようにアジトから出た俺達は、再び森の中に入った。

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