第6話 ドルガ

 森の中に再び入って約2時間くらい経った頃、シエスが俺に声を掛けてきた。


「ユキ、これから何処へ行くの?」

「そうだな………………候補は2つ。1つ目は、北にある商業都市のダリル王国に行く。2つ目は、亜人達の住む大森林に行く。1つ目の理由は、商業都市であるから魔王や他の国の情報等、様々な情報が手に入る可能性が非常に高いから。2つ目の理由は、亜人ならこの世界での辺境の地に詳しいやつがいるかもしれないこと、人間より信用できそうであることだ。シエス、何か質問とかあるか?」

「ある…………なんで南のガルラ帝国は候補から外れているの?」

「ガルラ帝国は武装国家だ。つまり軍事力が高い。万が一、ガルラ帝国と敵対した場合、今の俺達では速攻で殲滅させられてしまう可能性しかない。戦闘力でもそうだが、ガルラ帝国に関しての情報が皆無ってのも要因の1つだ。だから現状ではガルラ帝国には行かない。まぁ、いずれは行くけどな」

「なるほど…………それともう1つだけ訊きたいことがある。前から思ってたけど、情報ってそんなに大事なものなの?」


 とシエスが俺に訊いてきた。何故、情報が大事かか…………この疑問に、俺はこう答えてやった。


「情報が大事なのかどうかか…………まず、大事か大事ではないかで言うと、非常に大事だ。例えば、魔物を狩る時、狩る魔物の生態や特徴、行動パターンを知っているのと知っていないのではどっちが狩りやすい?」

「知っている方が狩りやすい」

「そうだ。情報が無くても魔物を狩ることはできると思うが、狩りやすさは段違いだ。そして危険度もな」

「危険度?そっか…魔物の行動パターンとか生態を知ってたら対策できる」

「そういうことだ。まぁ、イレギュラーも偶にあるだろうが、それはその時考えればいい。さて、情報は大事ってことが少しは解ったか?」

「うん」


 シエスが頷いたのを確認した後、周りに何もいないことを確認しその場にシエスと共に座る。

 異空間収納ボックスを唱え異空間から小さなちゃぶ台を取り出し、ルータの町でもらった地図を広げる。


「そんじゃ、話を戻すぞ」

「ダリル王国に行くか、亜人の住む大森林に行くかって話だったっけ?」

「あぁ…んで、今俺達がいるのは大体この辺りだ」


 地図の上に小さな石を置いて場所を示す。


「ダリル王国がここ、亜人達の住む大森林がここだ」


 これらの場所にも小さな石を置いて場所を示す。


「俺は情報が確実に集まりそうなダリル王国へ先に行きたいと思っているがシエスはどうだ?」

「わたしも賛成。それにダリル王国の方がここから近いんでしょ?」

「大森林よりはな………それがどうした?」

「近い方がより早く情報収集を始められる」

「たしかにそうだな…………それじゃダリル王国に行くぞ」

「おー」




 次の目的地をダリル王国に決め、1週間が経過し、俺達は今ロゼ王国の最北に位置する『ドルガ』という街に着いた。


「さて、どうやって街へ入るか…」

「フードを深く被って入るのはダメ?」

「街の中ならそれでもいいがここではダメだ」

「なら幻影イリュージョンで姿を別人に変える?」

「俺もそうしようかと考えたんだが、その案もダメみたいだ。シエス、街の入口付近をよく見てくれ」


「…………門番みたいな人に何か渡してる?」

「おそらく通行料とかだろ」

「お金ならあるよ?」

「それはそうなんだが、万が一の事を考えるとな…」

「なら、姿を別人に変えるんじゃなくて、姿を消して入るの?」

「あぁ、そうしようと思う。早速準備をするぞ」





 姿を幻影イリュージョンで隠し、街へ入る人間に門番が気を取られている間に進み、無事街へ入る事ができた。一旦、人気の無いところへ移動し異空間収納ボックスからローブを取り出し着る。


 フードを深く被り、簡単に顔が見えないことをシエスとお互いに確認し、情報収集のために街の探索を始める。




「人間がいっぱいいる…」

「シエス逸れるなよ?」

「ユキの手を握ってるから大丈夫」


 人混みを掻き分けながら進んでいくと大きな噴水がある噴水広場みたいなところへ辿り着いた。


「おっきい…」

「そうだな……ん?」


 噴水の側に掲示板みたいなのを見つけた。噴水を見続けているシエスを引きずりながら掲示板を確認する。


「(………やっぱり俺達の手配書みたいなのがあったか…)シエス、これを見ろ」

「ん〜?ユキの顔とわたしの顔が描いてある。それと……むっ、ユキが厄災をもたらす?エルフの少女を奴隷にしている?もしかして…」

「そういう事だろうな。しかし俺の顔に結構似てるなこの似顔絵(シエスの方は全く似てないが…)」

「そう?わたしは全く似てないと思う。だってユキの顔はこんなに悪い顔してない。それとこんなにカッコ悪くない」


 なんだ?シエスから見る俺の顔には美形フィルターでもかかっているのか?


「………そうか。それと懸賞金額みたいなのは…ほう…(白金貨1000枚と…結構高いのか?)」

「懸賞金額かなり高いね」

「そんなに高いのか?」

「うん。白金貨1枚で10万セレスだもん」

「セレス?通貨の単位か?」

「そう。1セレスが石貨1枚」


 シエスの説明によると銅貨1枚で10セレス、銀貨1枚で100セレス、金貨1枚で1000セレス、大金貨1枚で1万セレス、そして白金貨1枚で10万セレスだそうだ。

そうなると白金貨1000枚で1億か……円で例えると凄まじい金額だな。


「またユキの役に立てた?」

「あぁ、役に立ったよ。ありがとなシエス」


 シエスの頭を撫でながら、今後の予定を立てていく。本当はこの街を突っ切ってダリル王国へ行きたいところだが、情報が皆無の状態でダリル王国へ行くのは得策ではない。

 よって、先ずは図書館に行きガルラ帝国とロゼ王国、ダリル王国の情報をある程度集める。それと同時に、この世界の僻地と兵器等についても多少は調べておく。大体1、2週間くらいか?

 次は金を稼ぐ。

 最後は魔法の鍛錬だ。

 今のところはこんな感じだな。


「シエス、図書館を探すぞ」

「分かった」


 俺達は図書館を探すべく、歩き出した。

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