第6話 次の予定
そろそろレティシアさんに私を周りとは違った風に印象付けたいなと思うようになってきた。今の状態だと【単なる隣の席の貴族の男】であるのだ、だからどうにかして彼女に私のことを印象付けしたい。
色々と考えてみるがいままで恋愛をしたことないため何をすればいいのかさっぱり分からない。突然物を送られても困るだろうし何かに誘うのもどうかと思う。
…休日だし外出でもしようかな。
私は帽子を被り変装用の伊達メガネをかける、この世界の住人は基本的に何か大きなイベントがない限り見た目を変えない。だから髪型や見た目を多少変えると急に周りが私を私と認識できなくなるのだ。もちろん近くで顔を確認したり知っている人だと気づくぐらいだがね。貴族が街に出るとなると恐れるものが多いが背後を確認すると護衛も数人見える、毎度すまないね。
「これを一ついいかい?」
「あいよ、一つ100ディアだ」
私は屋台に並んでいた焼き串を店主に頼み購入する。ちなみに1ディア=1円だ。流石に学園があり王都の中心と言われるこの街は中々賑わっており、学生の姿もちらほら見える。
しかし焼き鳥サイズの牛串一本ではやはり育ち盛りの男として物足りない、やはり私もどこか食事処に行くべきか。
ここに初めてきた生徒には学生向けに安い食事処が紹介されているパンフレットが配られる。私はとりあえず近場にある山菜を使った日本定食に近い食事処へと向かった。しかし何故かは知らないが日本的な食事が心なしか多い気がする。
今から行く所なんて天ぷら定食とかあるし、本当にどうなっているんだこの世界は。
食事所に到着すると周りは西洋風の建物なのに突然木造日本的建築の定食屋と言ってもいい建物がそこにあった。こじんまりしてて学園の生徒には不人気そうだけど私はこうしたのが親しみがあっていい。
客もそこそこいて学園の生徒も背中だけだが見える、女子生徒だ。山菜と鶏肉の天ぷら定食を頼み、唯一空いていたその女子生徒の隣に座った。
「ここ失礼するよ」
「あっ、はい…エルディスト様っ!?」
「-っ おや、エルミールさんじゃないか」
びびった、めっちゃびびった。変な声が出そうになった。
何となく入った席の隣がレティシアさんってマジか、ありがとう僕のポーカーフェイス。おかげで突如奇声を放つことにならないですんだよ。
彼女は天ぷら定食を頼んでいたようでフォークに鶏肉の天ぷらが刺さっていた。うーん美味しそう、来るのが楽しみだ。
「なななななんでこちらにぃ!?」
「こういう雰囲気のお店が結構好きでね、たまに利用するんだ」
最初の頃は周りの客も店員も驚いていたが流石にそこそこ通っていたら慣れたようでそこまで態度には出なくなった。
「あっ…え、エルディスト様もこ、来られるんですね」
「うん、たまには外を見回るのも好きだし新しい発見もあるしね。あと様は付けなくてもいいよ、同じ生徒じゃないか」
「そそそっ、そんなわけには…!」
「定食どうぞー」
と、同時に定食が届く。うーんこの辺にしておこうかな、やっぱり近寄りがたいのかな。出来るだけ親しみやすい感じを出していきたいんだけど…。
そのままレティシアさんは食事を終わらせると私に失礼しますと言ってそそくさと出て行ってしまった。
交友を深めたかったが仕方ないので食事をしながらこれからのことを思う。
前にも思ったけど恐らく物語が進むのは一年後、高等部二年になってからだ。
二年生になると課外授業、冒険科目が追加される。ダンジョンなどに向かい魔物と戦う授業のことだ。倒した魔物の素材は売買が可能のため経済状況に難のある貴族などはこの制度を利用している、ただやはり危険であることは変わりなく数年に1~2人程度ではあるが死者も出ている。なのでリサなど一部の令嬢などはダンジョンへの授業を免除されており、一部ではダンジョンへ護衛を同行させるものもいる。
一年生の頃は訓練だけのはずだ。私やスペルドのような家のものは幼少期から剣術指南などは受けているからゲームで言うとメインユニットみたいな感じだろうか。
確か…最近のゲームはなんだっけ…ノベル? だけではなくてRPG要素もあるとか主人公を鍛えて一緒に戦うとかそういうのがあるとか聞いたことがあるような気がする。私はそういうシミュレーションゲームはやらなかったのであまり詳しくないから何とも言えないが…。と言っても今から出来ることはろくにない。
そもそもここが何か原作がある世界かもわからない。出来るだけ力や知識などを…あぁ、主要人物になりそうな人と交流するのも大事か…恐らくスペルドやリサ、ジャック教諭、バート先輩、そして高等部になって転校してきたヒナワ国のクロバ。
明日からはスペルド以外の者と交流を深めていこう。
私はそう思いながら掴んでいた最後の天ぷらを口に入れた。
乙女ゲーっぽい世界に来たけどモブっぽい子に恋した 黒巛清流 @Kurokawaseiryu5103
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