第5話 世界について
「…つまりこの国の歴史において」
ジャック教諭の授業を聞きながらこの世界についてある程度頭の中でまとめていた。
国としては中世といった雰囲気もあるが食事や衛生関係は現代レベルだ。食事は洋風のものもあればこちらでいう極東、所謂日本料理もあった。一度試しで頼んでみたが米も日本で食べた普通の米だったし違和感もなかった。よくある異世界ものだと中世ヨーロッパって感じの雰囲気なのに食事や清潔さが現代の日本並みということがあるけどこれもそういうものなのだろうか。
それに色々なものがちぐはぐである。いま書き取りをしているものもそうだ、書いているのは現代でもあった普通のノートなのに書いているペンは万年筆だ。中には羽ペンを使っている人もいる。魔法も科学レベルまで発展しているのに乗り物は列車と馬車、自動車や飛行船らしきものはない。何とも言えない世界だなぁと思いつつも不都合は特にないからいいかな。
「…ではここまでだ、何か質問があるなら早めに頼む」
ジャック教諭がそう言って教本を閉じた瞬間、鐘が鳴る。ジャック教諭の授業は時間きっちりに終わるため生徒からの評判もいい、生徒達も雑談をしながら教本を仕舞う。これからは昼休みだ、私もカフェテリアに向かうことにしよう。
突然だが私は最初のあいさつからあまりレティシアさんとは話をしていない。あくまで隣になった生徒、時折授業内容で会話をする程度だ。理由としてはあまり他の生徒に関わらなかったのに急に絡みだしたら不審に思われるかと思ってね。まぁ…私が勇気が出せずに話しかけずらいという理由もあるけど。
高等部になってから初めてのカフェテリアへと向かうが特にいつも変りなく昼休みということで生徒がごった返している。
ここのはテイクアウト出来るサンドイッチなどの料理もあり中庭に向かう生徒もいるようだ、私は少し離れたところから今日の料理を見る。
パスタ、サンドイッチ、オムライス、かつ丼……。
うーん、実に国がバラバラだ。様々な料理を見ながら私はパスタの列に並びトレイを受け取る。パスタにサラダ、パンと小さなデザートも付いている。さてどこで食べようか、昼休みが始まったばかりと言うこともあるし人でいっぱいだ。席もほとんど埋まっている。と、辺りを見渡していると少し離れた位置にポツンと一人だけレティシアさんがいた。いじめられているのかと思ったが彼女は高等部編入組、もしかしたらこっちには知り合いがいないのかもしれない。近くの席を見ると知り合いで固まっているようだし単に混ざれなかったのだろう。
「隣、いいかな?」
近くまで行き後ろから声をかける。サンドイッチをまくまくと食べていた彼女はびくんっと体を跳ねさせるとこちらへと振り返りながら声を上げる。
「ははいぃっ! だだ、大丈夫で…」
「では失礼させてもらうよ」
後ろから移動し彼女の前にコトンとトレイを置いた。隣に行ってもよかったけど流石に私が耐えられそうになかったのだ。彼女はガチンと固まったままサンドイッチを持ち口をパクパクとしている。
「…どうかしたかい?」
「…ひゃいっ! 何でもないです!!!」
するとあわあわしながらサンドイッチを口に入れてまくまくと混乱しながらも食べている。それを見ながらパスタを口に入れると私の隣と彼女の隣トレイがコトンと置かれて声がかけられる。
「隣置かせてもらうな」
「失礼」
私の隣に座ったのはスペルド、そして彼女の隣に座ったのは彼の婚約者。リサだ。この学園でも有名な三人と同席したレティシアさんは完全に固まってしまった、石化と言ってもいいかもしれない。サンドイッチを口に入れたまま一切動かない、スペルドはその様子を見て少し笑っている。するとリサが声をかけた。
「そういえば同じクラスの子でしたわね。私の名前はエリザベス・フランメ、仲のいい人にはリサと呼ばれていますわ」
「よぉよよよよよよよよよっ! よろしくお願いします! わ、私はレティシア・エルミールですぅ!」
「えぇ。よろしくね」
リサ…エリザベス・フランメはスペルドの婚約者であり。公爵令嬢でもある。
性格は気さくな方であり周りからは少し怖がられているが取り巻きもいるしあまりその辺は気にしていないようではある。スペルドのことは子供の頃から好きだったようで小さな頃からよく相談ごとに乗っていた。適正は炎の魔法であり、固有神技もそれに関係する能力だ。
リサがレティシアさんに妙に迫るのは私が頼んだからである。どうにも面倒なことだがこの学校では派閥というものがあり誰かの下についた方が学園生活が送りやすいのだ。無所属だと下手をすればいじめの対象になったりすることもあるらしい、彼女は高等部からの編入生だ、そのことも知らないだろう。だからリサに頼んだ、快く引き受けてくれてよかったよ。彼女と話しているところを他の生徒に見せる、レティシアさん自体は認識してなくてもリサの派閥に入ったと思われるだろう。リサの派閥はこの学園内でもかなり大きい。ここに入っている子に何かしようとは思わないだろう。
スペルドはこのことを話した時「過保護だね」と笑っていた。いいじゃないか、好きな子のために頑張っても。
最後の方では少し話せるようにはなってるようだったし、これで派閥に関しては問題ないだろう。
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お久し振りです、話が全く思いつかなくて戦闘訓練の話を書いて消したり街に出てみる話を書いて消したりしてだいぶ遅くなってしまいました。
次も頑張って書いてみたい…。
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