第4話 彼女の独り言

「…ふぅ」


ドキドキの説明が終わり少女、レティシア・エルミールは寮へと荷物を抱えてきた。

荷物を下ろすと息を吐き部屋を見渡して驚く。


「私の部屋より広い…」


机にベッドや本棚はもちろん、個室シャワーや小さいけどキッチンも付いている。魔導式の冷蔵庫にクーラーまで…。ちょっとした家よりいいかもしれない、しかも個室。実家では妹と同室だったので特別な感じがする。

とりあえずはすでに届いている荷物の荷解きをしないと…、でも多いから必要なものだけ...。


一応は女の子なので荷物は多い、即座に必要になるものとそうでないものを分けて荷解きをしていると一冊のノートがパラリと落ちた。レティシアは入れた覚えのないノートであり表紙には『これから君もクラスの中心! フェリちゃんのお助けノート!』と可愛らしい丸文字で書かれていた。


「フェリ...何を書いてるの...」


レティシアは思わず額を手で押さえ、ため息を吐いた。

フェリシテ・エルミール、レティシアの一つ下の妹であり内気なレティシアとは違い社交的で色々な人と仲良くなれる才能を持った子である。どうにも楽観的というかノリで物事を決めてしまう節がある。このノートもその場のノリで書いたのだろう。

ペらりとめくるとデフォルメされたフェリとレティシアの絵が書かれており、教卓らしき所に立っている眼鏡をかけたフェリが椅子に座るレティシアに何かを教えているような絵がある。無駄に凝っている…なぜそこまで頑張ってしまったのか…。

ペらりとページをめくると『① 挨拶はクールに!』と書かれている、少し遅かった。


①挨拶はクールに!


お姉ちゃんは冷静にしているとツリ目だし結構カッコいいからあまり慌てずに冷静にすればカッコよくみられると思うよ!


先ほどの挨拶を思い出す。

『「えええ! えっと! わわわ私はっ! レティシア・エルミール! でしゅ!」「は、ひゃい! よろしくお願いいたします!」「……よ、よろしくお願いいたしますぅ…」』


…うん、もう駄目だね。全然クールじゃなかったね。

いやでもだよ? 公爵貴族だよ? 席に着いて隣を見たらこの国の中でも5家に入るレベルだよ? しかも凄いカッコよかった…、本当に驚いた。


②婚約者におすすめ貴族!

◇コーム・デュシャン

中堅貴族、悪い噂もなく人当たりもよい

◇……

◇……

◇ジェスター・エルディスト

おすすめ貴族ナンバー1! この家は婚約者を作らずに自分で結婚相手を決めている家でもし選ばれれば庶民でも結婚することが出来る! お姉ちゃんもまずはここは狙うべき!!!


無理…一番無理…なり立て貴族にそんな方にアタックする勇気ない…。

というかお父さんもお母さんも「良ければ学校で婚約者でも探してきなさい」っておかしいでしょ、貴族になったからって突然婚約者探したほうがいいって。


その後も婚約者が必要な理由とかこういう振る舞いはしちゃいけないとか書いてあるけど正直なんというか文字の書き方のせいかあんまり頭に入ってこない。

そして最後には【重要!】と大きく書かれたところに一言書いてあった。


◇お姉ちゃんは滅茶苦茶着やせするタイプだし押し倒して胸でも当てればいっぱt


私は地面にノートを叩きつけた。




荷解きが終わり、部屋を再度見渡す。荷物は全部片づけられたわけではないがしばらくはこのぐらいでも大丈夫だろう。時間的にもそろそろお昼だ、まだ食堂が開くのは明日からのため今日は外で食べに行かないといけない。そういう生徒のためが近くの食事処が書かれたパンフレットも入学案内に挟まれていた。


「突然貴族になった上に婚約者探しかぁ…」


婚約者、そう呟くと頭に思い浮かぶのは隣の席のジェスター・エルディスト様

もしもあんな人の婚約者になれたなら…。

そこまで思い至った後になんだか恥ずかしくなり頭を振りその思いを飛ばす。

とりあえずご飯を食べに行こう。


私は財布とパンフレットを手に持ち外へと足を進めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


お久し振りです。最近色々と忙しくてなかなか書けませんでした。

今後もちゃんと書けたらいいなぁ…

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