第2話 レティシア・エルミール

私が優しそうな感じを頑張って出しながら名前を聞くと少女はうろたえ始めた。

あわあわと慌て始めて混乱しながら言葉を続ける。


「えええ! えっと! わわわ私はっ! レティシア・エルミール! でしゅ!」

「…そうなんだ、中等部では見かけたことなかったけど。高等部からの編入かな?」

「は、ひゃい! よろしくお願いいたします!」


は? 可愛すぎか?


視線をそこらにあたふたと移動させそわそわとしている。あまり話に慣れていないのか噛み噛みだ。手ももじもじと動かしどうみても可愛い。

前世で陰キャだったから多少は分かる。これは突っ込みすぎると思いっきり引くタイプ、つまり最初はある程度引いたほうがいい。徐々に距離を詰めていきたい。

というより胸の高鳴りがやばい、こういう時はあまりポーカーフェイスの上手い自分の顔に感謝だ。

私は彼女に右手を差し出す、握手だ。流石に突っ込みすぎかもしれないがある程度友好的であることは示しておきたい。


「改めて、ジェスター・エルディストだよ。魔法適性は雷、固有神技については黙っているように言われているから言えないんだ。よろしくね」

「ああ改めましてっ、レティシア・エルミールです。魔法適性は風で固有神技はしょ、植物を操ることが出来ます…! よ、よろしくお願いいたしますぅ…」


ちなみに固有神技というのは各個人が持つ特殊能力のようなものだ。

持ってない人もいるがエルミールさんが言った植物を操るや近くの動物や魔物を操ることが出来るものもいる。私も一応持ってはいるけど両親から危険にならない限り使うなと言われて、他の人に伝えるのも禁止されている。


自己紹介をして握手をする。

柔らかで小さい手に思わず思考があれになるが表情を引き締めて彼女の右手、細かくいうと薬指を確認する。

婚約者がいる場合は必ず右手の薬指に指輪を付けないといけない。確認をすると彼女は指輪を付けていない、安堵した声が思わず出そうになった。


手を離すと同時に教師が来たので軽く声をかけて前に向き直る。今日はこのぐらいにしておこう、まだ婚約者がいないなら私にもチャンスはある!

と言っても彼女いない歴約55年の私に恋愛ができるかいささか疑問だけど。


「静粛に。進級並びに入学おめでとう、私は担任のジャック・コントラクト。主に魔法などを教えることになる。一年間だけになるかはわからないがよろしく頼む」


教卓へと視線を向けると眼鏡を掛けた30代前半ほどの男性が立っていた。少し堅物そうな雰囲気があるが仕事はとても出来そうである。

時間割を見ると一日6項目の授業、休日が2日。授業内容は日本の時とは大きく違い知識よりも実用に主を置いたものが多い、歴史や一般常識という項目もあるがほとんどは魔法や戦いに関係するものが多い。


戦士を育てているわけではないのに何故こんなに戦闘項目が多いのだろうか。

この世界がゲームだと仮定するとたまに聞くRPG要素と恋愛シミュレーションが合わさったものなのかもしれない。

そう思うとこのように戦闘の授業が多いのは納得出来る。ある程度戦い方とか学んだほうがいいのかもしれない。戦えなくて何か問題が起きたら困るし。

というわけで説明も終わったので解散となった。家まで距離のある子は寮へ、家に帰れる子は外へと歩を進める。エルミールさんも寮へと向かっているようだ。


ちなみに私は今日は家に帰る予定だが寮の方へと足を向ける。

生徒が多い通路からあまりいない通路へ進みとある部屋のそばにより扉に向かいノックをする。


コンコンコン


「開いているぞ」


中から男性の声が聞こえたので私は扉を開けて部屋へと入る。中には同じ制服を着た一人の男子生徒がいた。赤い髪をした自分と同じ一年生が椅子に腰かけ私を歓迎してくれた。


「やぁスぺルド、調子はどうかな?」

「悪くはないな」


彼の名前はスペルド・トライピークス、この国の国王の息子。

所謂王子である。



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時折編集したりしてすいません、突発で書くと修正箇所が多くなってしまいますね。

もしかしたらこの王子の名前も次話までに変更するかもしれないです。

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