乙女ゲーっぽい世界に来たけどモブっぽい子に恋した
黒巛清流
第1話 乙女ゲー世界?
私が所謂異世界転生をしたと言うことに気付いたのは5歳の頃だ。
唐突に、別に事故や魔物に襲われたと言うこともなく。ふと夢から覚めるように前世の記憶を取り戻した。
前世では20代半ばの成人男性、まぁ能力は高くない普通の一般人。
名前も名字4文字名前3文字の普通の名前だ。
特に死んだという記憶もなく、何歳まで生きたかもいまいち覚えてない。
何故ここにいるのかもさっぱりだ
そして転生後の今の名前はジェスター・エルディスト、間に『ドゥ』や『フォン』などのミドルネームもあるがとりあえずこれでいい。
エルディスト家は公爵貴族と言うもので生活面で苦労することはなかった。
もちろん幼い頃からテーブルマナーや礼儀作法なんかを教わり、剣術に魔法の勉強もしていた。そう、そしてこの世界には魔法と言う概念も存在する。
呪文を唱えて火や水を操り敵へと攻撃するものから傷を癒すものまであり、人によっては適正などもある。私の適性は雷という珍しい属性のようで相手を痺れさせたりすることが出来た。容姿は髪は灰色がかった黒髪、顔立ちはクールっぽい印象。
中々の美形だがこの世界の住人は美形ばかりである、自分がどのくらい顔がいいのかはさっぱりだ。
魔法が存在すると言うことにも驚いたが魔物が存在することにも驚いた。
父に連れられて狼のような魔物を見たことがある。必要なことだとは思うけど
まだ小学生でもない年齢の子に首を斬り飛ばす様子を見せるものではないと思いますよ。しばらく肉が食べられなくなった、しばらくしたら慣れたけど。
そして12歳頃に気付いたことがある、他の貴族の者達は婚約者などが出来ており貴族同士の繋がりが出来ているが私にはそういう話が全く来ない。
社交界デビューも済ませたが父が私に婚約者だと紹介する女性はいなかったので疑問に思って父に聞いてみたことがあった。すると
「ジェスターには私と同じように自由に恋愛をしてほしいんだ」
聞くところによると父は婿養子で母に一目惚れし求婚し続け、母方の祖母から伝えられた無茶難題を見事クリアし母のハートを見事にゲットしたらしい。まぁ今も愛しあっているのを見ると結婚出来てよかったんだろうなと思う。
と言っても私が恋愛…前世でも恋愛どころか初恋もしたことなく結婚したいや恋愛をしたいと思ったことも多かったが全くそういう縁もなかったし積極的に作ろうとも思ってなかった。そんな私が…恋愛…?
ふと子供の頃は高校生になれば彼女が出来て20代半ばになれば結婚できると思っていたな。と悲しい思い出を振り返る。
そんなこんなで私ももう16歳、中高一貫の『プレカディア学園』の高等部に入ることになった。魔法を使える子は大体ここに入ることになると説明を受けたが一校だけでこの国の子供全員に教育を受けさせることが出来るのだろうか。
まぁ私が心配することではないな。と入学式で学園長の話を聞きながらぼんやり考える。相変わらずどこも見ても美形ばかりだ、公爵貴族ということで私も目立ってはいるが…ちなみにここに来るまでろくに同世代と交流を取っていない。会うのは基本的に年上ばかりだ、だからかちょっと喋り方も堅苦しいものになっている。
「続きまして生徒会長の…」
と隣の二年生の列から一人の生徒が壇上へと昇る、眼鏡をかけた紫色っぽい髪を後ろに軽く撫でつけた男子生徒でいかにも頭の良い優等生といった雰囲気だ。
「俺の名前はバート・シーケンス、二年生だが生徒会長を務めている。極めて異例らしいが分からないことがあったら聞いてくれ、力になろう」
「あれがあのシーケンス家の…」
「稀代の天才と言われている…」
シーケンス家、聞いたことはある。何でも一代で貴族まで上り詰めたと言われておりその要因には息子の力が大きいと言われていた。恐らくその息子と言うのが彼のことだろう。成金扱いされていて一部古くからいる貴族からは嫌われているようだ。それにしても…
「…アニメやゲームみたいだな」
周りの生徒や教員を見ながら色とりどりの髪色に驚愕する。
灰色がかっている私の髪でも珍しいなって思って目立たないかなと思っていたらピンクに紫に赤青緑、様々なカラーバリエーションに私の髪色は全く目立たないという感じであった。だけどもあれだな、この世界をゲームとして考えたら事前情報を集めると乙女ゲーっぽいなぁとは思う。乙女ゲーはやったことないけど、入ってくる情報が男子生徒の者ばかり。中等部三年の男子生徒の情報も入ってきている。と考えると来年ぐらいに乙女ゲーのようなものが始まりそうだなって思っている。私乙女ゲーやった記憶ないけど。多分主人公は転校生みたいな感じで編入してくる感じなんだろう。
乙女ゲーはどういうものかはよく分からないが多分なんか特別な魔力とかそんな感じのを持っているんじゃないかな。まぁ悪役令嬢ものの小説程度の知識しか知らんけど。
注目しておくのは先ほどの生徒会長、同級生二人、そして後輩に一人。
と乙女ゲーのキャラっぽいなぁと思っているとふと気づく。
…あれ? 私も攻略対象っぽくない?
相手がいない公爵家の息子、人と関わらなかったから周りから浮いている男子生徒。顔立ちも悪くない。おや、攻略対象だな?
まぁ攻略対象だったとしてもイベント通りに動く気はないが。
そんなことを思いつつも私もヒロインにあったら好きになるのかな。
こういう作品のヒロインって普通って設定だけど滅茶苦茶可愛いし、なんならモブとかも可愛いし。
入学式が終わったあと表情を変えずに内心は可愛い子達に鼻の下を伸ばしながら教室へと向かう、どうやらこの後教室でクラスメイトと担任の確認後解散となるらしい。
ちなみにこの学園は全寮制であるが今日はまだ家に帰る生徒が多いらしい、明日から寮生活が始まるようだ。
と、教室に到着した。教室は扇型で階段状になっていて席順は決められているようだ。決められた席に着く、端っこの方でいい位置だ。
と席に着くと隣の席に同時に人が座ったようでそちらの方を向いた。
もしその時の感情を言葉にするなら多分、『一目惚れ』というのだろう。
私は隣に座ったその少女に心を奪われた。
若草色の目隠れ気味の髪に小心者なのかおどおどとした雰囲気、美人と言うよりは愛らしいといった表情。そのすべてに心が奪われた。
私は思わず彼女に視線を合わせて自己紹介をする。
「僕の名前はジェスター・エルディスト。君の名前を聞いてもいいかな?」
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