第9話 俺が人間を辞めるまで―変身

それは、一方的だった。

血を吐いて倒れるリリス

その体は血だらけで頭も服も真っ赤に染っている。

「所詮お前は俺の実力には届かない」

そいつはひれ伏すリリスの顔を踏もうと足を上げる

「このぉ、、、くそ、やろぉ、、」

その苦しそうなリリスの声を聞いた時、

俺の何かが弾けた。

もう我慢の限界だッ!

「リリスゥ!!」

俺は一目散に走り出す。

「そんなに、叫んでどうしたんだ?

お前はさっき女を抱えて逃げただろう?

雑魚は布団にくるまって寝てろ」

1発でいい、当てろ!拳を!!

「オラァァァァ!」

「ハハハハ!!

なんだこのへにゃへにゃな拳はぁ!」

俺の拳は軽くそいつに受け止められる。

クソォ

「俺の拳じゃこいつには傷1つ与えられねぇ」

「ふっ、よく分かってるじゃないか」

くそ!せめてなんか武器があれば、俺にも勝機があるかもしれねぇのに。

カランカラン、、

「えっ、、、」

「なんだお前武器を使うのか?」

なんで俺は剣を握っている?

リリスがくれたのか?―

「逃げろ!」

いや、リリスは逃げろって言ってるし多分違うな

じゃあ誰が?

考えてる暇はない。

「当れェェェ!」

俺の振った4撃の剣技は全て空を切る。

しまいには剣の腹を叩かれて、折れてしまった。

「なんでだよ!」

「なんのために剣を振る?

お前はなにを守りたい?

お前のしたいことはなんだ?」

なんだよコイツっ!

くそ、武器武器武器!

カラン―

俺の左手が剣に触れた。

それはさっきの剣とは形状が違う。

新しい剣?

「オラッ!」

俺はひろいあげる勢いのまま剣を振る。

「やめろ海翔!お前、それ以上するのは人間を辞めるのと、同じだぞォ!」

初めて、俺の名前を呼んだな、リリス

っつーかやっぱり、これは『異能』なんだな。

「俺はここでリリスを見捨てるほど腐ってねぇつも

りだ。なんとなく、異能のこと分かった」

さっき武器を、いや、剣が欲しいって思ったら

剣が出てきた。

だから俺の能力は多分、イメージしたものを

出現させるんじゃないか?

だったら、アイツに攻撃を与えられるモノが欲しい!!

イメージしろ!アイツの体を、、、

いや、心臓を撃ち抜けばいいんじゃ?!

じゃあピストルか?―

その時、地面が膨れ上がると、

俺の足元から銀髪の男に向かって、指の太さぐらいの先の鋭い鉄柱が、4本そいつの体を貫いた。

「なぁッ!」

そいつは、体から力が抜けたようだが、

体に刺さった鉄柱のせいで地面に倒れることは出来ず、全体重を鉄柱に預けている。

「なに、しやがったテメェ、、、

なんだよ、、その、速さぁッ!」

「海翔ォ!お前まで、俺様と同じ道を行く必要は

ねぇ!」

それはさっきも、聞いたよ。

「俺が人間を辞めるだけでリリスを助けれるなら、

喜んで人間を辞めるさ!」

「なんでッ―」

「クラスメイトだろ?!

友達なんだ!命をかける理由はこれで充分だ。」

俺は槍を強くイメージした

右手には俺の身長の半分くらいのまぁまぁ

大きい槍。

俺はそいつを銀髪の男に向かって、投げつけた。

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