第5話

ど、どうする...



ここは妹のミヒロを優しく振って

マヒロ、お前のことが好きだ!と告ってみるか!?


俺が迷っていると、

マヒロが口を開いた。


「何してんの?シンジもミヒロも。

もうじき授業始まるよ。


私は移動教室に行くとこだけど」


ミヒロがここで、口を開いた。


「お姉ちゃん!私ね!

いま、シンジ先輩に告白したんだ!!

だから返事待ち!」


「ふーん...」


マヒロの奴は顔色ひとつ変えない。


...くそっ!と思った。

このとき。


例えば、マヒロのリアクションとして、


ええーっ、だめよ、私がシンジのこと

好きなんだから!と言ってくれたら嘸かし楽なのに。


そーなったら俺は、


仕方ねぇな。マヒロ。おまえと俺は同い年だし、幼馴染だから

おまえと付き合うわ!とカッコよく言えるのに。

そうはならなかった。

マヒロと俺は同じクラス。

そして、ユーマも同じクラスだった。


「次は音楽の授業だよ。とっとと教室にリコーダー取りに行かなきゃなんじゃない?

言っとくけど、あと、三分で授業始まるんだからね!」

「ミヒロも!とっとと一年三組に戻りなさいっ!」


「はーい!」


ミヒロはくるりと向きを変えた。


「先輩!いい返事、期待してますからね!」


「え、えーっと...」


今。女女してるのは妹のミヒロ。


この前行われた文化祭の美少女コンテストで

二、三年の綺麗な女子の先輩たちを差し置いて優勝したのはミヒロだった。


マヒロだって、髪の毛伸ばしたら

絶対負けてないのに。

マヒロはボーイッシュということもあり、

エントリーすらしなかったんだ。



姉妹なんだから、マヒロもミヒロも両方美人。


それにな、俺からみたら、

マヒロの方が可愛いと思うんだ。


俺はユーマとふたり、大慌て、

教室に戻って、音楽の授業の用意をした。


それから二人して急いで音楽室に向かったんだ。




ユーマは移動中も依然としてぶつくさ言ってた。


「あーあ

、俺、ミヒロちゃん

彼女にしたい」


「お前はさ、どーしてあの場でオッケーしなかったわけ?すげー、迷ってた風だったけど」


「いやー、それがさ!

俺、好きな女子が別にいるんだよ」


「マジ...!?誰だよ!?」


「実はさ、幼馴染のマヒロなんだ」


「は?マヒロ!?ミヒロちゃんの姉ちゃんだよな」


「なんでまた、あんなベリーショートの

怖い女が好きなんだよ。

ポニテちゃうじゃねーか!!」


「馬鹿だな。ユーマ。

マヒロは小学生の頃はずっと髪の毛が長くてポニテにしてたんだ」


「だからこそ、の、さっき

ポニテは正義!って宣言してみせたんだ!」


「マジか!?」


「おう、今度、写真持ってきてやる。

滅茶苦茶かわいいんだぜ...!

今年のミスコンは、妹のミヒロちゃんが

優勝したけど!マヒロのやつは参戦すらしてねーけど!あいつが本気出して、髪の毛伸ばして

メイクしたら、もうな...!


ぜってー、一位だと思うわ!!」




音楽室の階段を駆け上がって、

そんなセリフを少し大きめな声で吐いてたら。


ドカーンと踊り場のところで

俺はマヒロと偶然にもぶつかって事故キスした。



「んん....」


「ええええ」とユーマ。


俺も腰を抜かした。


お互いの唇が離れてから、

ふたりして真っ赤になった。


「な、なんだよ、マヒロ...!急に現れんなよな...!しかも、おまえ、これから授業だってのに、なんで、違う方向に向かおうとしてんだよ...!」


「音楽のファイル、忘れちゃったのよ!!」


「おまえ、相変わらず、ドジだなぁ...!」


俺が笑うと、


「う、うるさいっ!それよりなにより、

さっきの、

私のファーストキスだったのよ...!」



「俺だって、初めてだったわ」


「それよりな、おまえ、まさか俺らの

さっきの会話、聞いてたとか?」


マヒロは真っ赤になった。


あ、図星か。


俺は告白の手間が省けたと思った。


面と向かって言うと、

言葉に詰まって上手く伝えられねーだろーから。



「き、聞こえたわよ...!

わ、私、髪の毛を伸ばしてあげても

いいわよ...!」


「あんたのために、ぽ、ポニーテールにしてあげてもいいんだからねっ!!」



「お、おう!た、頼むわ!」



こんな会話をしてたら、

音楽室から先生が出てきた。


もちろん、俺とユーマは怒られた。


「何やってんの!二人とも遅刻だからね!

罰として、みんなのまえで独唱のテスト、やってもらうわよ!」


「そ、そんなぁ...!」


ユーマはガクッとしたが、

俺はそんな罰もへっちゃらな位、

嬉しさの方が優ってた。


なんでって、

マヒロと俺、どーやら両片思いだったみたいだから。


それにな。


俺は吹部でドラムを叩いてる。


そんなわけで、音感とリズム感には自信がある。


それに、将来の俺の夢はボーカリスト。


みんなの前で、独唱するなんてペナルティを

与えられたところで。


ビビってられるかってーの!!


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