前夜
1
「何か面白いことないんかな〜」
そう言ってiPadを眺める狐は回る椅子の上で唸っていた。
「最近はどこもかしこも平和やからねぇ」
そう言った羊は愛用しているノートパソコンの画面を眺める。二人して『面白いこと探し』だ。
「ただいまー」
「帰りました-って何やってるんですか」
「んー?」
最近つまらないなぁと思ってさぁ、と嘆く狐の横を猫は通り過ぎ、ネズミは立ち止まった。
「袋ちょうだい」
そうしてキッチンから戻ってきた猫はネズミの袋を持ってまたキッチンに消える。
「あ、すいません」
「大丈夫。結局持ってもらっちゃったし」
そう言った猫は笑った。
「残りのメンツはー?」
「パンダはライフル整備、柴ちゃんは車庫で私の車と自分のバイクの手入れ、ウサギは部屋で寝てる」
目線をそのままに羊はキッチンから問いかけに答える。
「あーもう何も無いじゃん!!」
そう叫んだ狐は項垂れた。
「じゃあ、僕らで作っちゃえばいいんじゃない?ねぇ、ネズミ」
そう言ってニヤッと笑った猫を合図に、三人はそれぞれ部屋に走って行く。
「ただいま戻りました〜ってどうしたのこれ」
「え、なんすか」
そこにちょうど帰宅した柴犬とパンダの目には動揺の色。
「面白いことないから自分たちで書いちゃおうってなったんよ」
そう言って肩を竦めた羊。五分後には狐はコピー用紙とシャーペン三本、そして消しゴムを、猫は愛用している小型のノートパソコンを、ネズミは寝ていたはずのウサギを連れて帰ってきた。
「なんで起こされたん?夕飯?」
「それを今から貴方が作るんですよ」
三人はテーブルに集まるなり設定、構想、文章を作り始めた。その目はまさに物書きそのもの。
「身代わりはウサギかぁ。頼むな」
「夜ご飯まで一緒に整備しよ!」
そう言って車庫に消えた羊と柴犬。
「え、嘘やんパンダ手伝ってや」
「猫さーん、拳銃の整備しときますねー」
「よろしく」
ウサギの声は聞こえないと言わんばかりに叫んだパンダは猫からの了承を勝ち取り、そのまま倉庫へ消える。
「ええ……しゃあない。やるか」
諦めたウサギはキッチンに消えた。
「ここの見取り図、俺描きますよ」
「マジ?頼もし!」
「その間に僕らは担当決めちゃおうか」
コピー用紙にああでもないこうでもない、と言いながら三人で構想を練り上げていく。
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