妖光

 今にも泣き出しそうな空を横目にとある建物の前に立つ赤いイヤリングが特徴の少年。

 警戒しながら扉を開くとパーカーの上に白衣を羽織った少女がソファに腰掛けていた。振り返った彼女の耳には紺碧色のイヤリングが光っている。

「こんにちは」

「この手紙を出したのは貴方ですか?」

「そうだよ」

 お話するのは初めましてだね、と笑った少女に対して目を細めた。

「あと四人来るから説明はそのときに。適当に腰掛けとって」

 はあ、と返事をして向かいのソファに腰掛けて初めて窓枠に腰掛けた短い髪の少女に気がつく。

「え、」

「初めまして、かな」

 グッと伸びをしたその仕草は猫そのもの。

「初めましてですね。貴方もこの手紙を?」

「うん。差出人はどうやらあの子みたいだね」

 そう言ってソファに座る少女を指さした彼女の耳には青いイヤリングが見えた。

「こんちわー、手紙の場所って合ってます?」

 そのとき開いた扉からは関西弁が聞こえる。

「合っとるよ。久しぶりやね」

「久しぶり!」

 関西弁に反応した猫のような少女は目を丸くしてその少年の名前を呼んだ。

「なんで?」

「俺のとこにも手紙来とった」

 そうなんだ、と笑った少女の目に浅葱色のイヤリングが光る。そこに二人の少女が入ってくる。

「こんにちわー」

「どうもー」

 ふわふわとした声に軽やかな関西弁が響く。

「あれ、君も来てたんだ?」

「そっちこそ」

 彼女の耳には水色のイヤリングが揺れていた。

「初めましてだよね?よろしく」

 先程一緒に入ってきた少女の耳には紫のイヤリングがついていた。

「このイヤリング、みんなおそろいみたいやね」

「そうですね」

 よく似合ってます、と褒めるとありがとう、と少し照れたように笑った。

「遅れました申し訳ない」

「タオル持ってくるで待ってな」

 ライフルバックを背負った彼はびっしょりと濡れていたがその耳には緑のイヤリングがついていた。どうやら七人全員の耳にイヤリングがついているらしい。

 パタパタとタオルを取りに行った紺碧の彼女を横目に青の彼女が良かったらどうぞ、と腰に巻いていた緑っぽいジャージを渡す。

「いいんすか?」

「なんならあげるよ。上着いくつか持ってるし」

 そう笑った彼女にあざっす、と受け取る。

「コレで全員やね」

 緑の彼にタオルを渡し、そう言って靴を脱いでソファに立つ。

「みんなでグループを組みたいなと思って集まってもらったんよ。グループ名は決めてないけど、手紙と同封したみんなが今つけてくれてるイヤリングとこの二つ」

 そう言って紙袋をそれぞれに手渡す。袋にはそれぞれのイヤリングに沿ったネームタグのようなものがついていた。

「これ、私が作ったブレスレット」

 そう呟いたのは青の彼女。

「そう、私が依頼して作ってもらったやつ」

 それぞれがブレスレットを手首につけ、袋を見ると獣耳がついたパーカーが入っていた。

「私手作りの獣耳パーカー。みんなにはこれからコードネームで呼び合ってもらって、ここをアジトとしたいなって」

 そうして自らフードを被った紺碧の彼女は狐の耳がついていた。

「私は紺碧の狐。狐って呼んでな。そしてほかのメンバーは青い猫、浅葱のウサギ、紫の羊、赤いネズミ、水色の柴犬、緑のパンダ」

「楽しそう、いいね!」

「パーカーありがとう」

 ふふっと笑った水色の彼女に目を細めて笑った青の彼女。

 それぞれフードを被り、動きやすさを確認してニヤッとした。そうして彼らは後に動物の名前をコードネームとし、世の中を引っ掻き回していく。


 これは彼らが集まり、動物のパーカーを来て妖しく笑うまでの結成の話である。

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