『しんどいのは自分なのに』

 自室に戻ったネズミは一人考えを巡らせた。

 彼にとっては彼女の思考は理解出来ないもので、その逆もまたあるのだろう。そうしてみんなに挨拶をしてから一時間が経過していた。

「ネズミくんまだ起きてるっすか?」

「起きてますけど」

 失礼するっす〜と言って入ってきたのは案の定パンダ。彼も今日は狙撃班でだいぶ精神を削りながら戦ったはずだ。

「どうしたんですか」

「いやー今日ぼーっとしてたんで」

 珍しいなーと思っただけっすよ、と窓から見える月を眺める。

「猫さんもそうっすけど、言いたくないことは言わなければいいと思うんすよ。だから、今ここで話せとは言わない。だけど」

『一人がしんどくなったら誰か頼った方がいいっすよ』

 そう言って眼鏡を上げたパンダはふわっと笑った。

「……そうですね。そのときは頼ると思います」

「そうしろそうしろ」

 それだけっす、と部屋を出たパンダ。

 ベッドに倒れ込んだネズミはそのまま目を閉じ、不器用ながら言葉に少し笑いながら意識の海へと溶けていった。

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