逃走
1
まんまと宝石を盗み出した彼らは車とバイク、ハンググライダーに分かれてアジトへと向かっていた。
「パンダくんが警報鳴らした時はどうなるかと思ったけど、なんとかなって良かったね」
「本当に。やらかしてくれたよねぇ」
バイクを走らせながらふふっと笑った柴犬にため息をついた猫。そのイヤホンからはまだまだ狐のお説教が流れていた。
「大体、なんで赤外線なんて初歩的なところでかかるん?ウサギもバディなんやから二人でなんとかせぇよ」
「はい、すいません」
「仰る通りです」
ふふっと笑った羊にハンググライダーからの景色を純粋に楽しんでいたネズミ。
今夜も彼らは騒がしい。
「まあ、お説教はこのくらいにして……仕事やで、パンダ」
「久しぶりに撃ちたかったなぁ……猫ちゃん頼める?」
そう言ったドライバー二人はそのまま加速させた。猫はどこから取り出したのか銃を確認し、パンダはライフルを準備する。
「この先に五分後くらいに直線あるわ。やるならそこやね」
「追跡五台です。空はいません」
羊とネズミの正確な情報に静かに頷く二人。
「ええ車乗ってんのに残念やなぁ」
そう言って後ろを確認したウサギは今回は出る幕がない、と残念そう。
「上開ける」
そう言って天井を開けた狐。
「久々に上開けたな……」
「追跡されるの久しぶりやもんな」
パソコンで地図を確認しながらの羊の言葉をウサギが拾う。
「あと二分くらいで直線だけど大丈夫そう?」
「余裕」
柴犬の問いかけにニヤッとした猫。
「車揺れるからなぁ……」
「とか言いながらちゃんと当てるから腹立つ」
対して自信なさげなパンダにウサギが悪態をつく。
「あと三十秒で直線」
「運転は任せな」
羊の言葉にニヤッとした狐。猫とパンダはそれぞれ銃とライフルを構える。
「あいつら発砲する気か!?」
「大丈夫だ、車やバイクに揺られていて当たるわけがない」
追跡車の中は余裕の表情で埋め尽くされていた。
「当たるか当たらないか」
「てめぇの目で確かめろ」
そう言って笑ったパンダと猫は手始めに一台、両サイドのタイヤをパンクさせる。
「な!?」
「車から狙うのやっぱり難しいっすよ」
大混乱の追跡車に対して眉をひそめたパンダ。
「んー直線でも難しいもんは難しいね」
「巻き込みで二台クラッシュしました」
ちぇーっと不貞腐れた猫に対してネズミは冷静に情報を流した。
「あんまり撃ちたくないからなぁ。重なっとるとこないん?」
狐は運転しながらネズミに問いかける。
「両サイドそれぞれ縦に重なって運転してます。前やれば巻き込みクラッシュですよ」
了解、と返事をハモらせた猫とパンダの目はとてつもなく真剣だった。
「次の直線は?」
「次の角曲がったとこやね」
ウサギのフォローにすかさず答える羊。
「余裕っすね」
「柴犬ちゃん悪いんだけど次は少しだけ落として」
「おっけー」
静かに呟いたパンダと柴犬に的確に指示を出した猫はそのまま直線に入る。余裕の表情でタイヤを撃ち抜いた猫とパンダ。
銃声が重なる。
「またね」
ニヤついた表情の猫とパンダはクラッシュした先を嘲笑った。
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