番外編―雨

 バイクから降りた猫は

『ごめんネズミ、僕の分の夕食抜いといて』と弱く笑い、雨に打たれた髪や服をそのままにどこかへフラフラ歩いて行った。

「どうしたんすかね」

「さあ……一人称変わってるし、何かあったのは確かだろうけど」

『本人が話したくなるまで聞かない方が良さげだね』

 そんなパンダと柴犬の会話を横にその背中をボーッと眺める一人の影があった。

「おーい、大丈夫?」

「あ、大丈夫です。夕飯考えてて」

 ネズミの目の前でヒラヒラと手を振った羊はいつもごめんね、と眉を下げた。

「ネズミ〜夕飯何〜?」

「今考えてます」

「俺パスタ食べたい」

 いつもごとく夕食のメニューを聞いてきた狐に答えつつ、リクエストを告げた彼に目を細めた。

『やめて?売ったくせに』

 そう言った猫の冷たい目の先には確かに浅葱色の彼がいた。恐らくその現場を見たのは彼、ネズミだけだ。

「とりあえずみんな風邪引く前にお風呂入ろう。沸かしておいたから」

 そう言って歩き出した柴犬を先頭にゾロゾロとアジトへ足を進める。流石柴ちゃんやなぁと笑う彼の顔は先程の彼女の顔と正反対。

 その横顔を見ながら何かあったかと仮説を立てる。

「風呂風呂〜」

 そう言って部屋に戻るパンダや気持ち悪、とパーカーを脱ぐ狐を横目に男性用浴室へ向かった。

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