第202話 先行き不明



「なるほどなぁ・・でも、クララには見つかってしまったわけだ」

メカラがうなずく。

「だから、連れ出すのは簡単だったわよ。 孤児院にドンとお金を見せたら、喜んでくれたわ」

なるほど、どこでも金か。

「それでメカラをどうするつもりなんだ、クララ」

「さぁ・・」

クララが首を傾げる。

「さぁって・・あのなぁ・・」

俺は呆れた。

メカラの方を向いて微笑む。

メカラがビクッとして背筋を伸ばす。

・・

いやいや、俺が凹むぞ。


「メカラ・・俺は何もしないよ。 それよりもクララ・・お前が身請け人だよな・・妹か子供として面倒みるのか?」

俺は聞いてみる。

「う~ん・・まぁ、お金はいっぱい持ってるけど、どうしよっか?」

「い、いや、こっちが聞いているんだ!」

俺には言葉が浮かばない。

メカラを見ながら俺は聞いてみた。

「メカラはどうしたいんだ?」

「は、はい・・えっと・・私は親もおりませんし、どこでも生きてゆけます。 クララさんに拾ってもらい感謝しております。 孤児院にも多額のお金を寄付してくれたそうで・・」

メカラがモジモジしながら話している。

拾ってもらってって・・猫じゃないんだぞ。

それにしてもメカラっていい子なんだ。

心の声です、はい。


「そ、それで・・もし迷惑でなければ、クララさんのそばでいてもいいですか?」

メカラがクララを見つめる。

「う~ん・・そうねぇ・・私、たまにいなくなっちゃうときがあるけど、それでもいい?」

「はい!」

「あっそ。 それに私がいない時は、テツが面倒見てくれるわね」

「はぁ?」

俺は更に驚く。

「ク、クララ、お前いったい何言ってるんだ?」

「よ、よろしくお願いします、テツさん」

メカラが頭を下げていた。

そんなキラキラした目で見られたら、変態な男なら勘違いするぞ。


俺は自分の頭をグシャグシャとかきながらうなずく。

「まぁ・・何とかなるだろ」

俺は半ばあきらめて答える。

「良かったね、メカラ。 言った通りだったでしょ」

クララが微笑む。

「はい!」

 ん?

「何が言った通りだ?」

俺はクララに詰め寄る。

「テツは決して見捨てないって・・向こうで身請けした時に話したのよ」

「はぁ・・やられた。 出来レースかよ」

「ううん・・違うんです、テツさん。 孤児院でもいい様に利用されそうな感じだったのです。 それをクララさんが・・フフ・・お金に物を言わせて私の存在を消したのですよ」

メカラが嬉しそうに話す。


やはりメカラの存在を国などの機関に売ろうとしていたような感じがあったそうだ。

ただ、こちらに帰って来てそれほど時間も経過していないので、大きな話にならなかっただけらしい。

それよりも中国の内乱情報の方が大きかったようだ。

それでタイも自国に帰還者がいるとハッタリを言ったのかもしれない。

まぁ事実だったのだが。


「まぁ、これからよろしくな、メカラ」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

メカラと握手する。

「それで、だ。 クララ、何故俺の家にいる?」

クララは平然と答える。

「さっきも言ったでしょ、鍵が開いてたからって」

「それはわかったよ。 でもお前の家は隣だろ?」

「べ、別にいいじゃない。 それにフローラは帰ったのでしょ?」

クララが話題を転換する。

「え? あ、あぁ、よくわかったな」

俺は少し驚いた。

「まぁね、私のスキルみたいなものよ。 これで安心して日常が取り戻せるわ」

クララがニコニコしていた。


俺は少し考えていたが、クララにこれまでのことを話してみようと思った。

「クララ、実はな・・」

・・・

・・

メカラもいたが、一緒に聞いてもらった。

「それは当たり前よ。 クソウ大臣の言う通りよ。 所詮人間なんて、そんなものよ」

「俺も冷静に考えると、そうかもって思っているんだ」

「誰でも彼でも助けてどうするのよ。 自分の身近な人だけでいいじゃない。 人ってそうやって繋がっているんだから。 クズなんていなくなってしまえばいいのよ」

クララが過激な発言をする。

そして、実際に排除していた。

「クララが言うと、言葉に重みがあるな。 確かに、俺もどうかしていたかもしれない。 自分の生まれ育った国がめちゃくちゃになるのは許せない気持ちがあるが、世界までは考えれない。 ほんと・・自分の目に映るものだけでいいよな」

俺の言葉にクララは無言で微笑む。

メカラは何も言わない。

「さてと・・後はどうなるんだろうな、この世界は・・」

俺は頭の後ろで手を組んでソファに深く座り直す。


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