第201話 メカラ
自分の家に向かいながら考える。
ディアボロスの細胞・・そもそも人を管理したいと思っていたビリオネアの考えだったよな?
クソウもあんなこと言ってるが、それに参加したからこそワクチンを広めたんじゃないのか?
それとも知らなかったのか?
まさか政治家が知らないはずはない。
でも、今はとてもまともなことを言っている気がするし・・。
・・・
答えの出ない疑問が頭の中でグルグルめぐる。
「はぁ・・わからないな」
俺は一息吐くと、気を取り直す。
そんなことで悩める性格じゃない。
明日には忘れているかもしれない。
とにかく俺のやれることは終わったと思っていいだろう。
俺の家の前に来た。
ん?
妙な感じがする。
ロンは俺のアイテムボックスの中のはずだ。
勝手に出たのか?
まさか・・そんな。
家の中に誰かいる。
俺は警戒をしながら入り口のドアを開けた。
中に入りつつ、部屋の中を見渡す。
・・・
!!
テーブルのところで人が座っていた。
「おはよう、テツ」
「ク、クララか! あ~・・しんど・・」
「は? どういうこと? それに何でそんなに警戒しているのよ」
クララがバカにしたような顔で言う。
「あのね・・ここは俺の家のはずだろう? 何で俺より先にクララが入っているんだよ」
「え? 家の鍵が開いてたから」
クララは当然だと言わんばかりに平然と答える。
「え? 鍵が開いてた? そんなはずはないんだけどなぁ・・」
俺は自分の記憶に自信がない。
「ふぅ・・それはそうとクララ・・タイに調査に行ってくれてたんだよな・・その横の子って誰?」
クララの横でちょこんと座っている女の子? 男の子? どちらかよくわからないが、目が大きくてキラキラした可愛らしい子がいた。
その子が急いで立ち上がり、俺に頭を下げる。
「ど、どうも・・よろしくお願いします。 わ、私・・メカラ・・マニーメカラ・・いえ、メカラといいます。 よ、よろしくお願いします・・」
メカラと名乗る子がオドオドとしながら挨拶してきた。
かなり緊張しているようだ。
「メカラちゃん、あまり緊張しないでいいから・・テツなんて、ただのスケベなおっさんだから」
クララが余計なことを言う。
「あのなぁクララ、第一印象は大事だと思うぞ。 いきなりおっさんってことはないだろう。 俺、これでも若い方で通ってるし・・って、それよりも誰?」
「メカラちゃんよ」
クララが平然と答える。
「・・クララ、それはわかったよ。 だから誰だよ?」
「あ! そ、そうね・・えっと、タイの帰還者なの?」
「へっ?」
俺は驚いた。
どうみても小学生か中学生くらいにしか見えないぞ。
それが帰還者?
「い、いや・・まさか・・よく無事でいられたな」
俺は二重に驚く。
あの最悪の国、ブレイザブリクでよく生き延びれたものだ。
・・・・
・・・
・・
聞けば、召喚されてステータス画面をチェックされる。
その時には『僧侶』とあったそうだ。
タイの仏教徒の家に生まれたらしい。
生活レベルは中の下の方だと言う。
年齢は13歳。
家族は事故でいなくなり、孤児院で生活をしていたようだ。
ブレイザブリクでも、戦士として使い物にならないと判断。
まぁあの国の判断なんて、戦闘能力のみを規準としているからな。
あの王様たちが早急に街へ追放したそうだ。
途中、衛兵の副隊長のような人によって隣りの都市の教会に預けられたという。
王様には魔物の森に捨ててきたと報告したらしい。
さすがにこんな子供を王様などはともかく、衛兵たちは気が引けたのだろう。
副隊長がたまに様子を見に来たりして生活をしていたという。
そのうち教会で生活するうちに『回復師』として目覚めたそうだ。
副隊長が教会の関係者に圧力をかけ、メカラの能力を秘匿。
短い間だったが平穏な生活を送れたらしい。
案外、騎士団の中にもまともな人がいたわけだ。
俺には知る機会はなかったが。
そして現代の国に帰還。
孤児院から消えた時間に戻って来たという。
向こうでも自分の能力を秘匿するようにと教わり、帰還してもずっと普通に生活していたそうだ。
それが、ある時友人が怪我をしたらしい。
その傷を治したのがちょっとした話題になったそうだ。
奇跡を起こす女の子がいる、などと話が大きくなってきたという。
それ以来、実際に傷を治さなかったりして話題が沈静化。
その話題をタイ王国が勝手に帰還者がいると話してしまったようだ。
実際は事実だったのだが、諸外国が調べても大した情報も得られない。
それにまだ少女と呼べる女の子だ。
また、メカラ自身も目立つようなことはなるべくしなかったらしい。
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