第196話 この槍なのか?
「閣下・・これではまるで日本は武装国家ではありませんか」
神崎の言葉にクソウはニヤッとしてうなずく。
「そうなるかな? 2000m級の山に順次レールガンを設置する。 これで防衛力は強化できるだろう。 ミサイルなどではコストがかかり過ぎる。 それにエネルギー供給も核融合をそれぞれに付随させる。 日本のエネルギーも、不足どころか問題解決だ。 これを一石二鳥というのだろうね」
クソウが嬉しそうに答えていた。
「閣下の構想は理解しました。 確かに、日本のような小国が立って歩くにはこれくらいでなければ難しいと思われますが、まさかこれほどのことを考えておられるとは・・」
神崎は素直に驚いていた。
「そういうことだ。 所詮は力を持たなければ発言力がないのだよ。 それに佐藤のような帰還者の存在もある。 こちらは公になっていないが、諸外国の政府内では公然の秘密だよ。 だからこそ今がチャンスなんだ。 普通の我々が力を備えるためのね」
クソウの言葉に山本もうなずいていた。
「神崎君、これからは忙しくなる。 君の役割も大きい。 それに現政権の一掃が急務だよ」
「山本さん・・わかっております」
神崎はゆっくりとうなずいていた。
レールガンと核融合構想。
既にこの神崎の町には設置が開始されている。
2000m級の山々に死角を作らずにレールガンを設置する。
マッハ50を超える速度で特殊弾を撃ち出すものだ。
日本の領海における防衛力は格段に上がるだろう。
小型化すれば、艦船などにも搭載が可能かもしれない。
そういった概要が、資料に記載されていた。
まさかクソウと山本がここまで考えていたとは思わなかった。
佐藤のような特殊な能力に依存することなく、自国で力をつける。
それも諸外国の介入を許さずに純国産で行うようだ。
研究としての施設は設置するも、はっきり言ってダミーだ。
神崎は改めて気を引き締め直す。
現段階で隣国には、もはや脅威はない。
中国は連邦国として運営されていくし、ロシアも分割されるという話だ。
本当の意味で世界の中で生きていくには、これくらいのことを平気でできなければいけないのだろう。
神崎はそう思うと、書類を机に置いた。
◇
<テツ>
俺はホテルに帰って来ていた。
まだ早朝だが、受付に行ってフローラと俺のチェックアウトの手続きをしてもらう。
それほどの時間もかからずに終え、俺は帰路についた。
超加速で移動。
それほどのタイムラグもなく神崎の町に到着。
時間は6時前。
俺は取りあえず自分の家に戻る。
家の中に入り、魔族から送ってもらった赤い槍を取り出してみる。
改めて見つめると、赤いくせに青白く光を纏っているような感じがする。
まるで生きているようだ。
槍をそっと手に取って立ててみた。
羽のように軽い。
何度か素振りしてみる。
・・・
何というか、まるで俺のためにあるような武器という感じを受ける。
槍を見つめていると、だんだんと握る力が強くなってきたようだ。
『・・あん♡』
?
妙な声が聞こえた。
いや、響いた。
槍をそっと立てかける。
・・・
間違いなく喘ぎ声だ。
俺の家に誰かいるのか?
いや、そんなはずはない。
誰もいなかったはずだ。
俺はそう思いながらも家の中を探索する。
・・・
誰もいない。
当然だ。
元の場所に戻って来て槍を手に取る。
やはりグッと握ってしまった。
『あん♡』
!!
俺は槍を凝視した!
こ、この槍から声が聞こえる。
槍をなでなでしてみる。
『・・ウフフ・・くすぐったい・・』
は?
どういうこと?
今度は両手でグッと力を込めてみた。
『いやん♡』
・・・
聞こえてくるというか俺の頭に直接響くような声。
俺は槍を持って心で話しかけてみる。
『おい、この槍だよな、俺に語りかけてきたのは』
『・・・』
槍は何も言わない。
ふぅ・・勘違いのはずはないのだが。
俺はそう思い、改めて槍をグッと握る。
『あん♡』
間違いない!
槍から聞こえるというか響く。
今度は力強く握ったまま語り掛ける。
『おい、やっぱり槍なんだな? どういうことだ?』
『・・』
『変な声をというか言葉を出すくせに、話せないってことはないだろう』
俺は槍に語りかけている。
声に出すのではなく、心でだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます