第166話 なんかあっけないな
リカが言葉を出す。
「ケン・・私たち、魔王に感謝されちゃったね」
「ぷっ・・あっはははは・・」
「な、なによ~、笑うことないじゃない」
リカがケンに詰め寄る。
「ごめんリカ。 でも、確かに感謝されちゃったね。 テツさん・・何かあっけなかったですが、これで解決ですかね?」
俺も軽く笑いながら答える。
「あぁ・・もう大丈夫だと思うよ。 それにしても、本当にありがとう。 ケン君たちが来てくれなかったら、危なかったよ」
「で、でしょ?」
リカが答える。
「リカ・・そこは俺が答えるところだけど・・」
「えぇ~・・」
俺はケンとリカのやり取りを見ながらも、本当にホッとした。
完全に脅威はなくなった。
だがあのディアボロス・・ここで死んでおけばよかっただろうなとも思う。
「テツさん、あの魔族ですが・・どうなるんでしょうね?」
「そうそう」
ケンとリカが聞いてくる。
「フフ・・そうだなぁ・・死ぬに死ねず、情報を搾り取られるだけ取られて、後は消滅させられる。 転生なんてできないように、その魂までも消されるだろうね」
「う、嘘は・・言ってないわね」
リカが言う。
「あはは・・リカさん、嘘言う訳ないじゃない」
「だって・・怖いこと言うんだもの」
リカがケンの腕を掴み軽く引いている。
「うん・・確かに。 魂までも消されるって・・考えただけでも怖いね」
「そうなんだよ。 死ぬだけじゃないんだ。 その存在そのものが消されるんだ」
俺はそう言葉を出すと共に寒気がした。
「おっと・・じゃあ僕たちはこれで帰りますね。 また日本で」
「うん、じゃあね、テツさん」
ケンとリカはにっこりと微笑むとサッと去っていった。
ケンたちの後ろ姿を見送り、視線を移動させる。
・・・
レオとアンナ、アリスが間抜け面というのだろうか・・ポカンとした感じで突っ立っている。
クララは腕を組んで微笑んでいた。
俺はゆっくりとアリスたちの所へ向かう。
◇
俺が近づいて行くとクララが笑顔で迎えてくれる。
「テツ・・終わったようね」
「あぁ・・これで魔族の脅威はなくなったと思うよ」
俺の答えにクララがつぶやく。
「そうね・・魔族の脅威はなくなったわ。 でも、人って欲深いから・・」
クララの言葉を聞き、俺も素直に喜べなかった。
俺たちはゆっくりとアリスのところへ向かって行く。
「アリス・・アンナ、レオ・・それにクリストファー・・ありがとう」
俺は取りあえずお礼を言った。
戦わずとも、彼女らがいたからこそディアボロスに集中できたのだから。
「え、えぇ・・問題ないわ」
アリスが答える。
「テツ・・あなた・・本当に人間なの?」
アンナが腕組をしたまま聞く。
「え? ア、アンナ・・人間に決まってるじゃないか」
アンナがジッと俺を見る。
「ふぅ・・日本人・・いや、テツの規格が私の想像を超えているわ。 とにかくこれで脅威が去ったわけね」
アンナはそう言いながら腕組を解き、腰に両手を当てた。
・・・
俺がいけなかったんだ。
ついつい男の性か?
アンナが腕を腰に置くときに胸が揺れたんだ。
こいつやっぱノーブラか?
ドン!
アンナが俺のボディを殴る。
「ぐふっ・・ア、アンナ・・」
アンナが見下ろすような目線で俺を見る。
「少しでもテツを凄いと思った自分を軽蔑するわ。 ほんっとにこの男は胸しか見ないのね!」
俺はアリスの方を向いた。
アリスはプイッと横を向く。
「テツ・・君を助けてくれた子供たちは誰なんだい?」
レオが微笑みながら聞いてくる。
俺は一瞬迷ったが、どうせ隠せるはずもない。
「あ、あぁ・・彼らは俺と一緒に召喚された帰還者だよ」
!!!
その場の全員が驚いていた。
クララ以外だが。
「な・・日本人って・・テツの他に2人もいたのか・・それはまた・・」
レオが驚いていた。
これでイギリスの知るところとなるだろう。
クリストファーは黙って聞いている。
「まぁ、彼らは何もしないからね。 政府にもタッチしないようにしてくれって言ってあるんだ。 今だって研修旅行でワシントンに来てたくらいだからね」
俺は一応説明してみたが、聞いていないだろうな。
「え、えへん・・皆さん、ご協力ありがとう。 取りあえず、これで人類の脅威は収束したと思います。 私たちもペンタゴンに戻ります。 各国の方々もそれぞれの任務があるでしょう。 これで失礼します」
アリスがパッと雰囲気を変えていた。
・・・
アリス・・さすがだ。
俺にはできない。
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