第167話 魔王城
「そうですね・・僕も女王に報告しなければなりません」
レオがうなずく。
「私も帰るわね」
アンナも言う。
「僕は・・お館様・・仕えていた人が亡くなってしまった・・」
クリストファーが下を向いてつぶやいている。
「えっと、クリストファーさんでしたね。 取りあえず私たちと一緒にペンタゴンに行きませんか?」
アリスが声をかけていた。
人は何か寄り添えるものがないと不安で仕方がないだろう。
クリストファーがまるで迷子の子犬のような顔でアリスを見る。
そしてゆっくりとうなずいていた。
「あ、えぇ・・わかりました。 ありがとうございます」
レオとアンナは俺たちに軽く手を振って、そのまま去って行く。
クララは俺の傍でいた。
「クララ・・君がいたおかげで俺も心強かったよ」
「フフフ・・そう?」
クララがそう言って俺の腕に絡んでくる。
!
さ、さすがクララ!
胸の圧力が凄いぞ。
・・・
「・・やっぱダメね・・テツの魔素は吸収できないみたい」
?
「は? な、何やってんだよクララ」
俺は驚いた。
このタイミングで何やってんだ?
「ごめん、ごめん。 ちょっと試してみただけ、テヘッ」
・・・
この女・・胸がでかいだけのアホか?
俺はそう思ってクララの胸を見てから、アリスの胸に目がいってしまった。
ドン!
アリスのボディブローが容赦なく俺に炸裂。
「グホッ・・あのねアリス・・何でいきなり暴力を振るうんだ? アメリカって訴訟の国だろ? これって訴えることができる案件なんじゃないのか?」
俺に別にダメージはない。
だが、アリスのヒステリックな行動が信じられないのだ。
「何言ってるのよ、テツ。 女性が不快な思いをすれば、それはセクシャルハラスメントよ。 常識でしょ!」
「い、いや待て! 男性の人権はないのか?」
俺の言葉にアリスは即答。
「あるわけないじゃない! だって事実、テツは私の胸を許可なく見たんでしょ?」
「え?」
・・・
確かに、超加速で見たことはある。
だが、それを今言うか?
女の人はこうやって記憶をごちゃまぜにして男を追い込むのか?
アリスが腕を組みながら答える。
「図星ね・・即答できないってことは、容疑者ね」
「い、いや待てアリス・・今はそんなこと言ってないぞ・・あれ? 何の話をしていたんだ・・そうそう、俺が殴られた話・・」
俺が反論しようとすると、アリスはクリストファーと共に移動し出していた。
「ちょ、ちょっと待てアリス・・」
俺が追いかけようとすると、クララが俺の腕を掴む。
「テツ・・ゆっくり行きましょ」
俺はクララの顔を見る。
「う、うん」
クララの胸の圧力に負けた。
「・・やっぱダメね」
「は? クララ、また試したのか?」
俺はもう言葉を失っていた。
アリスはクリストファーを伴って笑顔で帰還していく。
◇
<魔族領域:魔王城の中>
ディアボロスの視界が回復してきた。
白い空間に景色が浮かんで来る。
広い建物の中のようだ。
気配がある。
誰かいるようだ。
・・・
ディアボロスは周辺を探っていた。
!!
こ、ここは・・魔王城、玉座の間ではないか!
な・・いったい、どういうことだ?
ディアボロスはキョロキョロとしながら怯える子犬のようになっていた。
「ディアボロス・・」
声が聞こえた。
ビクッと身体が反応する。
ディアボロスはその声の方をゆっくりと向く。
・・・
身体が動かない。
いや、動けない。
相手の術にかかっているのではない。
動けないのだ。
格が違うと言えばそれまでだが。
「ま、魔王様・・」
ディアボロスは思わず言葉が出ていた。
魔王はゆっくりとディアボロスに近づいていく。
一歩近づく度に、ディアボロスの恐怖心が高まる。
「ディアボロス・・何を怯えているのだ」
魔王が問いかける。
答えは期待していない。
魔王はディアボロスの前まできて、その視線を重ねる。
ジッとディアボロスを見つめたまま問う。
「ディアボロス・・人の世界は楽しかったのか?」
ディアボロスは即答できなかった。
震える身体を抑えながら、答えようとする。
「は、はい・・魔王さ・・」
バシ!
ディアボロスの頬をムチがかすめた。
「誰が口を開けと言った!」
ディアボロスを囲むようにして立っている中の1人、女の人が声を荒げる。
「この大罪人の恥知らずが・・」
女の人の横の人物も言葉を出す。
ディアボロスは鞭打たれた頬を抑えつつ、言葉の方を向く。
「き、貴様は・・」
ディアボロスがまた言葉を発しようとすると、ムチが飛んで来た。
バシ!!
「だから言っている。 口を開くな! このクズが・・」
ディアボロスは頬を押さえながら、その場で動くことができない。
魔王はディアボロスに背を向けて自分の椅子に向かう。
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