第151話 マイペース



クラウスとアンナは驚いていた。

「帰還者が亡くなったのですか? ま、まさか例の脅威の・・」

「いえ、ペンタゴンで暗殺者に銃撃されたようなのです」

メリケン首相の回答を聞いてクラウスは少し笑っていた。

「銃撃・・ですか」

メリケン首相が不審そうな顔を向ける。

「どうかしたのですか、クラウス」

クラウスはアンナと顔を見合わせるとメリケン首相に言う。

「メリケン首相、我々帰還者に銃は効果ありません」

その言葉にメリケン首相の目が一回り大きくなった感じがした。


「そういえば・・そうでしたね。 私としたことが、あまりにも衝撃的な映像だったもので疑うことすら忘れていました」

メリケン首相は軽く咳ばらいをすると話を続ける。

「いえね、サラと思われる人が銃で撃たれた映像があったのですよ。 それを見て何も疑うことなく受けれてしまったようです。 えへん・・それと、日本から知らせがありました。 帰還者をアメリカに行かせる予定だと」

「帰還者とは・・あの佐藤のことでしょうか」

クラウスは思わず聞いていた。

「それ以外に考えられません」

「し、失礼しました。 いったいどういうことなのでしょう?」

クラウスの言葉にメリケン首相もうなずく。

「えぇ、私も不思議に思っているのです。 だからこそ、あなたたちの考えを聞きたかったのですよ。 日本はどうも帰還者の扱いを秘密裏にしているようです。 それが今度はわざわざ教えてくれる。 アメリカにしてもご丁寧に帰還者の撃たれた映像をつけてまで知らせる始末。 何かが起ころうとしている感じがします」


メリケン首相の言葉にクラウスとアンナはうなずく。

「首相、サラなる帰還者はおそらく死んではいないと思います」

クラウスの後に続けてアンナが話す。

「はい、私たちが感じたあの強烈な魔素・・脅威です。 もしかすると、その脅威に対する何らかの対処を話し合うのかもしれませんね」

アンナの言葉にメリケン首相がうなずく。

「なるほど・・それで帰還者を集めていると・・ふむ」

・・・

メリケン首相は少し考えていたが、顔を前に向け話し出す。

「わかりました。 中国もどうやら連合国になりそうですし、隣のロシアの脅威も今は収まっています。 クラウスかアンナのどちらかをアメリカに派遣したいと思いますが、どうですか?」


イギリスでも同じようなことが起きていた。

そして、イギリスからはレオが派遣されることになる。


<日本>


朝食後、俺たちが食堂から帰る途中、俺の携帯が鳴っていた。

俺はクララをチラッと見てうなずくと、携帯に出る。


「はい、佐藤です。 えぇ、おはようございます・・」

・・・

・・

どうやらクソウのところへ来てくれという話みたいだ。

俺は携帯を切るとクララに言う。

「クララ、何か知らないがクソウのところへ来てくれってさ」

「ふぅ・・お腹いっぱい。 美味しかったわ」

「あの・・クララさん、俺今からクソウのところへ行くんだけど・・」

「わかってるわよ。 私も一緒ってことでいいのよね?」

クララが軽く言う。

そういえば、クララは俺につきっきりって話だったよな?

あれ、違ったか?

俺たちはすぐに用意をしてクソウのところへ向かう。



何でこうなった?

クソウの部屋で俺は椅子に座っている。

横にはクララがいる。

向かいにクソウと山本。

その横には神崎とデイビッドがいる。


山本とクソウの話では、俺にアメリカに行ってくれという話だ。

何やらアメリカで帰還者が亡くなったという情報をくれたらしい。

即座にデイビッドが笑いながら否定したそうだ。

「閣下、アメリカの情報戦ですよ。 何か大きな動きが起こったようですね」

デイビッドは言う。


「どうかね、佐藤君。 アメリカに行ってもらってもいいだろうか? 何か君ばかりに動いてもらって申し訳ないが・・」

クソウがそう声をかけるが、全然申し訳なく思ってないだろう。

確かに、俺としては特にやることはない。

チラっとクララを見る。

下を向いてうつらうつらしているようだ。

食後で眠くなったってか?

おい!

この女、場所を考えろ!

俺は肘でクララをグッと押す。

クララがボヤ~ッとしながらゆっくりと辺りを見渡して俺を見る。

「なぁにテツ。 おいしい食事を食べたらついつい眠なっちゃって・・そうね、別にいいんじゃない。 テツの好きなようにすれば。 気に入らなければ自由にしていいんだしさぁ」

クララが完全に無責任な発言をする。

クソウたちも相手にしていないようだ。



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