第150話 連絡
<テツ>
ケン君との会話も終わり、俺はベッドに横になる。
何だかコトが大きくなってきたように感じる。
この現代社会に帰って来れたことで大満足のはずだ。
それがいつの間にか国などという大きな流れの中で動いている。
・・・
実感はない。
もし、俺が意志を押し通せば通るだろう。
だが、相手の了解を得ずに行うと、必ず何かしこりが残る。
それが消えることはない。
俺の経験が物語っている。
力があるからと言って、好き勝手やっていいわけがない。
俺は軽く頭を振る。
取りあえずクララの疑念は放置でいいだろう。
完全にシロとは言えないが、疑うだけしんどい。
問題はディアボロスだ。
倒せるのだろうか。
・・・
俺は天井を見ながら考えてみる。
わからない。
ただ、どんな戦闘になるのだろうか。
俺も全力で戦わなければいけないだろう。
奴も気づいているかもしれない。
俺の職種、聖戦士は魔族などには天敵だ。
魔王はそれを知っていても、俺に対する扱いは変わらなかった。
普通に接してくれた。
その恩は忘れてはいけない。
俺は握りこぶしを作り胸に置く。
「フフ・・まさかこんなことになるなんて・・チート能力って不自由なのかな。 チートどころか、現代人が得られる能力じゃないからな」
俺は自嘲する。
・・・
・・
コンコン・・俺の部屋をノックする音が聞こえた。
どうやら俺は寝ていたらしい。
携帯の時間を見る。
時間は6時10分。
俺はベッドから起き上がり覗口から外を見る。
クララだ。
俺はドアを開ける。
「おはようテツ。 どう? よく眠れたかな?」
クララが笑顔で話してくる。
「うん・・知らない間に眠っていたようだ。 まさか朝まで眠れるとは思わなかった」
「フフ・・私の魔素を受けたんだもの。 ダメージじゃないけど疲労しているはずよ」
「マジかよ・・クララって、俺より強くね?」
俺は思わず聞く。
「さぁ、それはわからないわ。 私の感覚だと、テツの方が遥かに強い感じね。 ま、レベルが強さじゃないけどね」
クララが平然と言う。
「確かにな・・俺もこちらに帰って来て、どうやら平和ボケしたようだな・・それよりもどうしたんだ、こんな朝早くに・・」
「えぇ、朝食よ。 このホテルの朝食ってバイキングが有名だって書いてあったのよ。 6時30分から食べられるようだから、誘いに来たよの」
クララは早朝だというのにしっかりとした顔で言う。
「そ、そうか・・じゃあ少し用意するから待っててもらっていい」
俺がそう返事をすると、俺と一緒に部屋に入って来た。
「・・クララさん、俺の部屋で待つのですか?」
俺は思わず聞いていた。
「もちろん。 何か迷惑だった?」
「い、いや、そういうわけじゃないけど・・俺、着替えるから・・その・・」
俺は口ごもる。
「気にしないでいいわよ」
クララは言う。
いや、気になるから。
俺が気になるんだよ。
・・・
まぁ、パンツを脱ぐわけじゃないし・・いいか。
俺は椅子の上に置いた服を取り、そのまま着替える。
クララは本当に気にならないようだ。
軽くうがいをして顔を洗った。
ふぅ・・やっぱぬるま湯で顔を洗うと気持ちいい。
魔法でパッとやってもいいけど、感覚は大事だからな。
所要時間5分。
俺たちは一緒に朝食を食べに行く。
◇
<ドイツ>
メリケン首相のところに電話が入っていた。
アメリカと日本からだ。
メリケン首相が難しい顔をして椅子に座っている。
少し考えていたかと思うと声を出す。
「すみません、アンナとクラウスを呼んでもらえますか?」
事務室で待機していた行政官に言う。
行政官はすぐに行動した。
しばらくするとアンナとクラウスがメリケン首相の前にいる。
「どうかされたのですか?」
クラウスが聞く。
「えぇ、先程アメリカと日本から連絡が入りました」
アンナも真剣な顔になり、メリケン首相を見つめる。
メリケン首相がうなずくと話し出す。
「クラウスとアンナが感じていた脅威についてですが、アメリカにいるビリオネアたちが動いているというのです」
クラウスは少し驚いた顔をする。
「ビリオネア・・ですか? メリケン首相、どうして国ではなく金持ちが動くのです?」
クラウスは当然の質問をした。
「それはわかりません。 ですが、アメリカの帰還者が亡くなったという話が出てきました。 それにビリオネアたちが飼っている帰還者がアメリカに集まっているというのです」
メリケン首相は言う。
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