第140話 クララの攻撃
俺はクララの顔を見たり、下を向いたり、遠くを見たりと落ち着きがない。
「全く・・どうすることもできないとは・・」
俺はつぶやく。
「テツ、この魔族だけど、明らかに帰還者を狙っているわね。 次はどうするのかしら?」
クララが冷静に分析していた。
!
そうか・・そうだよ。
「クララ・・そうだよな・・次だ。 このディアボロス、次はどうするのだろう。 俺たちが狩られないようにするためにはどうするべきか・・それが出来れば何とか対処できるかもしれない」
クララが微笑む。
「でしょ? とにかく焦ってはダメね」
「クララ・・ありがとう」
俺はクララに微笑むと続ける。
「クララ・・実はな・・俺、もしかしたらクララがディアボロスの仲間じゃないかって疑っていたんだ。 あ、いや、ほんの少しだけだよ・・だって相手を捕食するだろ・・」
俺は思い切ってこのタイミングでクララに打ち明けてみた。
だが、俺にはそこまで言葉にするのが精いっぱいだった。
クララが震えている。
「テ、テツ・・あなたねぇ・・こんな下品な魔族と私を一緒に考えていたの・・ショックだわ。 私、テツに対してこんなに心を寄せているというのに・・ショックだわ」
「い、いや、本当にすまないクララ・・俺が悪かっ・・」
ドン!
クララが俺にボディブローを放つ。
「グッ!」
こ、こいつ、結構いいパンチ打つぞ。
レベル差って関係ないのか?
ダメージ・・だよな、これって。
身体の中に重いものを持たされた感じだ。
ドン!
ドン!
ドン!
連続してクララの拳をくらう。
「うぐ・・」
俺は思わずその場に膝をついた。
そしてそのままクララに引きずられて部屋に連行される。
バタン。
ドアが閉じられ、俺は部屋の中で這うようにして意識を保っている。
声が出せない。
「どう? テツ、かなりのダメージでしょ。 いやダメージじゃないわね。 私の能力を逆流させたのよ」
クララが壁に背を当てて両腕を組みながら話している。
俺はゆっくりと顔をクララの方に向ける。
かなり重い。
「ま、すぐに軽くなると思うけど、生命力を吸収するだけじゃないのよ。 今テツが感じているように内部にダメージを与えれるの。 もしこれに私の意思を込めれば、最悪死ぬわね。 それに私しかエネルギーにできないものなのよ」
クララが俺の傍に来て膝をつく。
そして俺の背中をスッと
!!
いきなり身体が軽くなった。
俺は驚いてクララの顔を見る。
クララが微笑んでいる。
「テツ、あなただから私の能力を見せたのよ。 私がついているわ。 こんな魔族、サクッと片づけちゃいましょ」
俺は少しでもクララを疑っていたことを後悔した。
そして感謝する。
また、もしこれがクララの罠だとしても、疑い続けるよりも信じてバカを見た方がいい。
この瞬間に俺はクララを信じることにした。
「クララ・・ありがとう」
「うん」
クララは笑顔でうなずくと、俺の顔面に正拳突きを放つ。
ドン!
「ぐへぇ」
な、なんで?
俺には訳がわからない。
「テツ、これは私を少しでも疑った罰ね」
クララはそういうと俺の頬にキスをする。
「これからもよろしくね」
クララは俺を残して部屋を出て行った。
俺は最後に殴られた顔面とキスされた頬を軽く触れて放心状態だ。
「いったい何がしたいんだ? クララというか、女の人はわからん・・」
顔を殴られたダメージはほとんどない。
これはレベル差だろう。
だが、あの俺の内部に対する攻撃はすごかった。
戦いはレベルだけじゃないってことだな。
俺は改めて戦い方の複雑さを思い知らされる。
◇
プルル・・。
俺の携帯が鳴っている。
俺は画面に表示されている名前を見てみた。
!
ケン君だ。
一体なんだろう?
「テツさん! 今、もの凄い魔素を感じました。 前にも同じような魔素も・・って、テツさん帰って来ていたのですね。 良かった。 あ、で、どうだったのですか、イギリスは?」
ケン君が矢継ぎ早に話してくる。
・・・
・・
俺はケン君に今の状況を伝える。
イギリスで帰還者と合流したこと。
仲良くやって行こうとなったこと。
魔族のボスがいて、それを捉えるのが目的な事。
それに日本に帰属したデイビッドなる帰還者がいることなどなど。
簡単に説明をしてみた。
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