第126話 警戒アラーム



<テツたち>


神崎が急遽きゅうきょ、飛行機の座席を1名分予約してくれた。

女王陛下が専用機で送ってくれると言っていたが、神崎が断ったそうだ。

借りを作りたくないのだろうか?

俺にはよくわからない。

ただ、今の状況は俺にもわかる。

神崎の冷たい視線。

明らかに汚いものを見る目で俺を見ている。

・・・

俺のせいじゃないのですけど・・。

言い訳をすると余計に泥沼にはまりそうだ。


座席だが3列のシートを俺たちで横並びに使っている。

窓から俺、クララ、神崎の順番だ。

クララが神崎など全く見ることもなく俺の方を向いている。

しかも俺との境の腕を置くバーを取っ払って、遠慮なくその身体を俺に押し付けている。

しかも俺に質問攻めのような感じだ。

どこかのスナックパブか?

また、俺に対して耳元でささやくように話しかけてきていた。

クララは神崎などの存在を全く意識していないようだ。

「ねぇ・・テツ。 あなた魔族領域にいたというけど、どんなところだったの?」

甘くかすれるような声で俺の耳に届く。


おい、クララ、俺を誘ってるんじゃないだろうな?

誘われたら俺、間違いなく落ちる。

後が怖いけど・・というか、いいことの最中に取り込まれるかもしれないリスクがある。

クララって、信用できそうだけど信用すると怖い感じがする。

けれどもその色っぽさにすべてを失ってもいいと思える何かがある。

・・・

・・

俺たちの状況にいい加減疲れてきたのだろう。

神崎が言葉を出す。

「クララさん、もう少しおとなしく座っていてもらえますか?」

クララがゆっくりと神崎の方を振り向いて微笑む。

「そうなの? 別に誰に迷惑をかけているわけでもないし、私はテツに用があるのよ。 あなたに用はないから放っておいてちょうだい」

クララはそういうとまた俺にくっついてくる。

俺の腕にはクララのボリュームをバッチリ感じている。

「こっのぉ・・えへん! クララさん、私には迷惑です」

神崎も負けていない。

「あら? 神崎ってテツのこと好きなのかしら?」

「へ? な、何言ってるんですか! そういうことを言っているのではないのですよ・・」

「そう、じゃ放っておいて・・ねぇテツ、ネズミがうるさいけど・・どこまで話したっけ? あ、そうそうその魔王の依頼を受けているんだっけ?」

クララは全く神崎を無視。

その存在すら忘れているんじゃないか?

「あ、あぁ、そうなんだよ。 魔王からディアボロスを捉えてくれって言われているんだ」

「でもぉ、実際捕まえることなんてできるのかしら? とてもじゃないけど、私では無理だわ」

クララは冷静に分析をしているようだ。


「あぁ、今のディアボロスなら何とか俺でも抑えられるかもしれない。 倒すとなると怪しいけどね」

俺はクララの質問に答えていく。

「ほんとに? テツって凄いのね。 でも倒せないとなると捕まえても危ないんじゃない?」

クララが当然の疑問をぶつけてくる。

俺は思わず真意を話してしまいそうになった。

ただ、神崎の視線が俺を目覚めさせてくれる。

俺的には危なかったんじゃないかと思える。

何故か?

俺がモテるはずがないからだ。

俺のモテ期は俺が目覚める前に終わっている。

中学生くらいの時だろう。

まだ自分がよくわからない時に結構モテたと思う。

その時には女の子からよく連絡をくれたり、待ち伏せされたりした。

だがそのありがたみが全くわからなかった。

わかるようになったらモテなった。


さて、その前提が頭に甦って来た。

このクララ。

もしかしてディアボロスの配下の人間じゃないだろうな?

同じような能力を持っているし、俺から情報を引き出そうとしている。

そういう考えが頭に浮かんできた。

一度その考えが浮かぶと、すべてが怪しく感じてくる。

神崎ので少し冷静に見ることができたような感じだ。

神崎、ありがとう。

俺はクララを少し引き離して言う。

「ク、クララ、ちょっと待ってくれ。 えっと・・ディアボロスを捕まえるのは難しいと思うよ。 だからこれを使うんだ」

俺はそう言ってダガーをアイテムボックスから取り出して見せる。

クララの表情が興味深そうに変化した。

・・・

やっぱり怪しいな。

俺の直感が警戒する。


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