第124話 意外な発言



「ふ~む・・自分を強くする・・レオ、あなたたちはどうやって自分を鍛えたのですか?」

女王が聞く。

「は、はい・・僕たちは魔素を含む対象・・例えば魔物を狩ったりして経験値を積み重ねていくとレベルが上昇しました。 ただこちらの現実世界ではそういった魔物が存在しません・・物語ではいますがね」

レオの言葉に女王が微笑む。

なるほど・・そういえば物語などではいろんな魔物がいるよな。

それってもしかしたら、今までにも帰還者みたいな人がいたのかもしれないな。

俺はそんなことを考えていた。

すると女王が俺を見て言う。

「ミスター佐藤、先程ミス神崎の発言に少し妙な表情をしていましたが、何か思いついたのですか? よければ教えてもらえませんか?」

!!

俺はドキッとした。

この女王、鋭いな。

しっかりと状況を把握しているじゃないか。

「え、えぇ・・私も自分を強くするという言葉で考えていました。 実は・・我々帰還者ならば魔素を備えています。 もしかすると・・と思ったのです」

女王の目が大きく見開かれた。

「なるほど! ディアボロスはあなたたち帰還者を捕食しようという訳ですね」

女王は明確な回答を言葉にする。

俺はその言葉を聞いて、想像したくないことを考えさせられた。


もしかすると、テンジンがディアボロスに捕食されたんじゃないかということだ。

認めたくはないが、それならばあの現場は納得できる。

バックパックを置いて誰もいなかった状況は不自然ではなくなる。

それに大量の人を狩って注意を惹き、自分が倒せそうな敵をおびき寄せる。

それで危険そうなら立ち去るし、狩れそうなら狩る。

今までは帰還者がこれほど現実世界にいなかっただろう。

・・

だが、あのテンジンが倒されるということが俺には納得しにくい。

もし倒されたとしても、ディアボロスも無事では済まないはずだ。

それほどの力を持っていたと俺は思っていた。


レオとソフィも大きくうなずいている。

「なるほど・・それならば理解しやすいです」

「えぇ、嫌な感じだけど納得だわ。 私たちが標的だなんて・・」

ソフィが複雑な表情でつぶやく。

女王が俺たちを見渡して大きくうなずいた。

「よろしい。 ではこの脅威は我々全員の脅威と捉えましょう。 私のところでも友好国に早急に連絡を入れます。 ミス神崎、あなたもクソウ大臣にお伝えください」

「はい」

神崎がうなずく。

「ミス神崎、改めて日本と友好を結べたことを喜びます。 わざわざイギリスに来ていただきありがとう。 我々も情報がわかり次第、すぐに連絡をいたします。 それと・・ミスクララ・・あなたはどうするのですか?」

女王がクララに声をかける。


クララが丁寧に一礼をして答える。

「はい、私は佐藤に付いて行こうと思います」

クララの言葉に女王は意外そうな顔を見せる。

「ミスクララ、あなたはフランス人のはずですよね? 自国に協力しなくて良いのですか?」

女王は当然の質問をした。

クララが両肩をすくめて微笑む。

「女王陛下、私たちは自由人の集まりの集団です。 政府を信用してはいません。 それにお話を聞いていると私たちのような帰還者がエサになるようですし、単独で自国にこもるよりもテツ・・いえ、佐藤のような人物と行動している方が抑止力が強いと思います」

クララの発言に女王の目がやや大きくなっていた。

「なるほど・・あなたの言う通りね。 幸い我が国には2名の帰還者が存在します。 帰還者が集まればディアボロスの動きを制限できそうですね。 酷な言い方ですが、一般人に被害が少なくて済むかもしれません」

女王はクララの言葉に答えながら自嘲する。

そして続ける。

「フフ・・ですが、それが出来れば戦争など起きないでしょうし・・ま、とにかく友好国を多く持つことが良いということでしょうね」

女王はそう言いながら俺たちに労いの言葉をかけてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る