第103話 ビジネスクラス



俺は神崎の服をまくり上げる。

「失礼しまーす」

一応声をかけたぞ。

・・・

なるほど、見た目通りだな。

ブラは白か。

胸もかろうじて谷間は見える感じか。

俺の頭にサラの胸の映像が浮かんだ。

・・・

沈黙。

俺は神崎のブラを外し、服をきちんと元通りに直した。

ブラを俺の席の横に置き、元の位置に座って超加速を解除。


「あ、はい、どうぞ」

神崎が答えていた。

俺は座ったまま神崎を見る。

神崎は俺を見て瞬きをする。

「佐藤さん・・どうぞ能力を使われてください」

神崎が言う。

俺は一度目を閉じて答える。

「神崎さん、もう終わりましたよ」

「え?」

神崎の反応を見ながら俺は横の白いブラを見る。

俺の目線を追って神崎の目線も動く。

・・・

!!

「え? な、何? そのブラって・・え? えぇ!! どういうこと?」

神崎が慌てながら服の上から自分の胸を確認していた。


しばらくして、神崎がきつい目線で俺を見る。

「佐藤さん、いくら能力を見せろといっても、これってセクハラ間違いなしですよ。 変態ですね」

神崎は胸を両手で抱えながら言う。

「へ、変態?」

俺は少し驚きながらも、神崎のブラを返そうと手を伸ばした。

神崎がサッと自分の手でブラを奪取する。

は、速いな。

神崎も能力者か?

「佐藤さん、これは後でつけさせてもらいます。 それよりも一体どうやって私のブラを取ったのですか?」

神崎が聞いてくる。

「あ、それは・・」

俺は超加速で移動するとまるで時間が止まっているような感じなんだ、と答えようとした。

だが、この子の反応を見ているとどうもそういった回答ができそうにない。

私の胸を見たのかとか言われそうだ。

何か余計に面倒なことが起こりそうな気がする。


「何て言うのか・・一種のテレポートみたいな・・というか、スリのような能力と言うか・・」

俺が適当にごまかして伝えていると、神崎が勝手に理解してくれる。

「なるほど・・ゲームなんかで相手の物を盗める能力ですね。 ほんとにゲームのようなことができるのですね・・驚きです・・が、こんなことは二度とやらないでください。 仕事でご一緒するのですから、信用が第一です」

神崎が毅然とした態度で言う。

もっともだ。

神崎の言うことは正論で非の打ちどころがない。

俺がエロいだけだ。

やっぱ、もっと違うことをすればよかったと少しだけ後悔。

だが、服をまくり上げたと言わなくて良かったよ。

俺はホッとする。

後で神崎には気づかれることになるが。


俺たちは空港に着き、航空機に乗り込んだ。

政府専用機ではないが、ビジネスクラスの席を確保してくれていたみたいだ。

そんなクラス、乗ったことないぞ。


<テツたちが出発して少しした時>


クソウと山本に少し時間が出来ていた。

「山本君、本当に忙しいね。 だが、これからが大変だ」

「えぇ、そう思います閣下」

クソウが椅子に身体を預けてリラックスしていた。

「ふぅ・・それにしてもこれほどうまく物事が運ぶとは、予想外だよ」

クソウがニヤッとしながら言う、そして続ける。

「山本君、日本に・・いや私のところにこれほどの力が集約してくるのは何だか怖いね。 まさかアメリカからも来るとは思ってもみなかったよ」

「はい、全くその通りです。 閣下がそういった能力をお持ちなのではないですか?」

山本が微笑む。

「山本君、私を殺す気かね? 人は耳に良い言葉についつい振り回されてしまうものだよ。 今までの私が言うのも何だがね。 これは私の人生の最後の試練かもしれないね」

クソウが目を閉じながらつぶやいていた。

山本も黙ってクソウを見つめる。

「それにしても佐藤君・・彼がやはりキーパーソンだろうね。 イギリスでどう振舞ってくれるかな。 まぁ、神崎君がいれば問題ないだろう」

クソウは自分に言い聞かせるように話していた。


<イタリア>


クラウスとアンナは食事を済ませて街を散策していた。

ただ歩いているようだが、注意深く索敵はしている。

・・

「クラウス・・やはりこの国に帰還者はいないようね」

「うむ・・だが油断はするなよ」

「フフッ、わかっているわ。 もうあの日本人のようになめられるようなことはないわ」

アンナが微笑む。

「テツか・・彼はどうしているのだろうな」

「さぁ・・でも日本は軍事利用する感じじゃなかったし、何を考えているのかしら?」

アンナのつぶやきにクラウスも考える。

「うむ・・」

確かに日本は力を持っている。

あのテツの能力は強烈だった。

ロシアの帰還者を吹き飛ばし、まして魔族に傷を負わせていた。

いったいどんな能力を持っているのかわからないが、間違いなく俺たちよりも強いだろう。

テツ個人が動けば世界が変わるかもしれない能力だ。

だが、あの男にはそういう雰囲気はない。

子供だと言われればそうかもしれない。

だが政治家に利用されるとしたらどうだろうか。

上手く知らないうちに重要な戦力として利用されるかもしれない。

・・・

・・

考えれば考えるほど複雑になってゆく。

クラウスは頭を軽く振り、考えるのをやめた。

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