第78話 これは悪いことなのか?



「そう・・わかったわテンジン。 でもね、テンジンのそばで見させてもらってもいいかしら? 私の目的は中国にいる帰還者、テンジンに会うことだったから」

サラが笑顔で話していた。

おい!

この女って、こういった仕事に向いてないんじゃないのか?

平気で秘密をボロボロとばらしそうだ。

だが、俺みたいなタイプはこの見た目にやられるな。

「サラ、それは構わないが・・むごい場面を見ることになるかもしれないぞ」

「それは覚悟しているわ」

サラは軽く答える。

「そうか・・サラが近くにいてくれると、拙僧も心強い」

テンジンの言葉にサラが喜んでいた。

「ありがとうテンジン。 ちょっと席を外すわね」

サラがそう言うと俺たちの目のつかない場所へ移動していく。

なるほど・・トイレか。


さて、と。

俺はテンジンを見る。

「初めまして、俺はテツといいます」

「うむ、拙僧はテンジンという。 よろしくお願いする」

テンジンは握手を求めてきた。

俺もしっかりと握り返す。

俺は確認しておこうと思った。

サラがいない今しか確認できない。

「テンジン・・確認したいことがある」

俺の言葉にテンジンの顔つきが変わる。

「何かな、テツ殿」

「テンジン・・あなたはサラの胸をチラチラ見ていただろ?」

!!

俺のこの言葉に予想外という感じを受けていた。

そして、驚きが入り混じったような顔をして次の行動に移行できていない。

「な、な、な・・いきなり何を言われるのか。 せ、拙僧、仮にも僧侶の一人・・そんなことは・・」

テンジンは明らかに混乱している。

「いや、男なら当たり前です、テンジン。 サラの胸・・俺も見たことないけど、着痩せするタイプなのかもしれない。 形が良い感じがするし、大きさも結構なものだと思うのですよ」

「テ、テツ殿・・見たことないのによくわかりますな」

テンジンが反応する。

やっぱりね。


「えぇ、ちょっとした事故で触れたことがあるのですよ。 その・・ムニュッとしていて・・」

俺は説明しながら手でサラの胸の形を勝手にイメージしてみた。

「ブフォ・・テツ殿、それはまことですか!」

テンジンがむせていた。

「いや、俺も見たことはないので何とも言えないのですが、やはり良いものだと思います」

「な、なるほど・・見てみたい・・えへん! 拙僧もまだまだ修行が足りません・・そんなことで心を乱されるとは・・」

テンジンが咳ばらいをしながら気持ちを整えているようだ。

「テンジン、何を言っているのす。 日本などの僧侶はすべて破壊僧ですよ。 本来の仏教は結婚できないでしょう。 それなのに時間とともに勝手に解釈をして妻帯してますからね。 もう本来の仏教ではないですよ。 だからテンジンも時代に合った僧侶になればいいのです。 人を救うことがテンジンの目的なのでしょう?」

俺も話していて何か熱くなってきた。

サラの胸の話じゃなかったっけ?

「テツ殿、それはまことですか?」

俺はうなずく。

「時代と共に変化か・・原典を守り、修行を行っても仏陀にはなれないのはわかっている。 拙僧みたいな邪僧ではなおさら・・だが、今テツ殿が語ってくれたように、人を救うのが目的と言われれば確かにその通りです。 原典を守っても人は救えませんからね」

テンジンが何やら勝手に納得してくれている。


俺は確信する。

おっぱい好きに悪い奴はいない(笑)


サラが帰って来た。

「何2人で話しているの? もう仲良くなったんだ」

「え、あ、あぁサラ、トイレってあったっけ?」

俺は言葉が見つからず余計なことを言ってしまった。

ドン!

サラにいきなり殴られる。

「テツって、全くデリカシーがないのね? 最低~」

え?

サラってこういうキャラだったっけ?

いや、知らないけど。

「テンジン、こういった男になっちゃダメよ」

「あ、あぁ、大丈夫だサラ。 拙僧は僧侶だ」

テンジンの目が泳いでいる。


よし!

俺は決めた。

俺はテンジンに触れて超加速のスキルを使う。

「テンジン、これは俺のスキルだが、俺たち以外の時間はほとんど動いていない」

俺はテンジンに説明をする。

サラのやろう・・少し懲らしめてやる。

「テ、テツ殿・・ものすごいスキルをお持ちなのだな? まさに無敵ではないか! そんなことよりも、初見の拙僧などにスキルを見せても大丈夫なのか?」

「テンジン・・そんなことはいい。 この時間を利用しようと思ったんだ」

「なに?」

俺はニヤッとしてサラの胸を見る。

「な、ま、まさか・・それはいけない! テツ殿、それはいけない!」

テンジンが同じ言葉繰り返す。

「テンジン、見たくはないのか、サラの胸を」

「そりゃ見たいが・・いや、拙僧は僧侶。 修行が足りん」

テンジンがブツブツ言っている。

「テンジン、要は弱い人たちを救えればいいんだよ。 山に登るのにどの道を行っても同じだろう。 それに悪いことをしているわけじゃない」

俺は言葉を並べる。

「悪いこと? う~ん・・いや、悪いことかもしれぬ。 いや、違うか・・」

テンジンは迷っている。

俺はテンジンに構うことなくサラの前に行く。


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