第41話 話を聞け!



「アレクセイ、俺たちの能力は他国に知られてはいけないのだ。 この地域は西欧諸国と近い。 スパイもかなり入っている。 気を付けてもらわねば大統領が困るのだ」

ミシチェンコが丁寧に話す。

「ミ、ミシチェンコさん、私たちは決して他国の人と接触はしていないし、情報も流していないわよ」

ナターシャが言う。

ミシチェンコが首を振る。

「ナターシャ、言葉だけが情報伝達ではない。 お前たちの行動が問題だと言っているのだ。 突然人が燃えたり、家屋が消滅したり、おまけに小さな山が消えたと聞いている。 何をしているのだ?」

「い、いや、あれは街の連中があまりにも俺たちに無礼な振る舞いをするし、軍まで寄ってたかって俺たちを排除しようとするんだ。 それに銃を向けて来るんだぜ。 仕方ないじゃないか」

アレクセイが弁明をしている。

「ふぅ・・わかっていないな。 俺たちは普通の人間から見れば超人だ。 お前もアメリカ映画を見たことがあるだろう。 スーパー〇ンだ。 そんな人物が目の前でいるのだ。 怯えるのも当然だろう。 それを・・」

ミシチェンコがそこまで話すと、アレクセイが一歩下がる。

「ミシチェンコ! そ、それで俺たちを消しに来たわけか!」

アレクセイが声を大きくしながら言う。

「いや、話を聞け」

ミシチェンコがアレクセイの方を向く。

「だ、誰がやられてやるもんか。 俺たちはロシアを出るんだ。 他の国に行って自由に暮らすんだ」

アレクセイはかなり興奮しているようだ。

「アレクセイ、だから俺の話を聞けと言っている」

ミシチェンコはそう言って立ち上がる。


アレクセイはその動きを攻撃開始の行動と認識したようだ。

「ただではやられはしないぜ。 くらえ!!」

アレクセイの手から炎の塊が飛んでくる。

ミシチェンコが左腕で防御する。

魔法を展開していた。

「やるなミシチェンコ。 だがな、こういった時のために温存しておいたんだ。 俺の極大魔法を浴びせてやるぜ」

アレクセイはそういいながらナターシャを見る。

ナターシャもうなずく。

「だから話を聞けと言っている!」

ミシチェンコが声を大きくして言葉を出す。

だが、アレクセイには届かないようだ。

アレクセイの両手が黄色からやや白っぽく光っている。

!!

ミシチェンコがナターシャの方を見る。

どうやら2人での合成魔法のようだ。

ミシチェンコの直感が教えてくれる。

いくらレベルが下とはいえ、それぞれの魔法を合成するとレベル以上の効果が起こることがある。

その暴走に巻き込まれたら、ミシチェンコといえども危ない。

「アレクセイ、ナターシャ、ま、待て!」

ミシチェンコがそこまで叫んだ時だ。

アレクセイの極大魔法が放たれた。

「くらえ、ノヴァ・フレア!」

同時にナターシャが雷系の魔法を放っていた。


アレクセイとナターシャは魔法を放つと大きく後ろにジャンプする。

空中で魔法の放ったところを見ていた。

炎がドロドロと煮えたぎりながら広がろうとしている。

それをナターシャの雷系の魔法がバラの棘のように包んでいる。

棘の中で炎の行き場のないエネルギーがドンドンと高まって行っているようだ。

アレクセイも驚愕している。

「へへ・・ミシチェンコ、あんたが悪いんだ。 俺たちを殺そうとするから・・」

ナターシャの張り巡らした棘がパリン、パリンと弾ける。

すると突然炎が収束し、一気に広がった。


ドッゴォォオォォーーーーーン!!!


炎の膜が広がって行く。

「グッ! ナターシャ!」

「キャア!」

アレクセイはナターシャを掴み、上空へと舞い上がる。

地上では爆発の炎が急速度で広がる。

直後、爆発の中心に向かって空気が集まっているようだった。

アレクセイはナターシャを抱きながら地上を見ている。

「ア、アレクセイ、ありがとう。 あの地上ってどうなっているの?」

ナターシャが地上を見ながら言う。

「わからない。 おそらく大爆発の後、気圧が急低下したからそこへ周りの空気が集まっているんじゃないかな・・」

アレクセイの見方は間違っていない。

爆発規模が大きく、その中心付近はほぼ真空状態になっていた。

その真空部分が限界まで広がると、その部分を埋めようと急速に収束し出したのだ。

「アレクセイ・・あなたって飛べたのね」

ナターシャがアレクセイの顔を見ながら言う。

「ハハ、飛べるわけじゃない。 風魔法で漂っているだけだ。 ゆっくりと落下しているよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る