第5話 決めた!
俺はその様子を見ながら思う。
最近の若い連中は荒いな。
この思考はおっさんか?
これで俺が傷ついたら、強盗致傷だろう。
そんでもってこいつ等が捕まっても世の中変わることはないよな?
俺が刺されて痛い思いをする。
最悪死ぬかもしれない。
まぁ、ナイフなど刺さらないがな。
こいつ等が警察に捕まる。
もしかして捕まらないかもしれない。
俺が運よく生き残り、一生モノの傷を負っても誰も治してくれない。
そして、裁判などでこのバカどもが裁かれる。
何年かすれば、こいつ等は野放しになるのだろう。
その時に被害者の俺は、不自由を背負ったまま一生を過ごさなければいけない。
俺がいくら声を大きくしても、今のルールではこんな奴等でも死ぬことはない。
そして、世間も一応は同情をしてくれるがすぐに風化する。
クズに厳罰を望んでも人権人権と言われて、被害者の俺がまるで悪者のようになる場合もあるだろう。
!
バカか。
冗談ではない。
「おい、金を探せ」
ナイフを突きつけている奴が指示を出す。
仲間が俺の上着を
「よし、決めた!」
「「なに?」」
俺が動けないと思っていたのだろうか。
俺の言葉に男たちはビクッとなる。
俺は、まず上着を漁っている男の足を蹴り飛ばした。
シッ!
ボキボキ!
男の両足が折れただろう。
俺の上着を漁っていた男の両足が変な方向に曲がりながら、ビルの壁まで吹き飛んでいく。
ドン!!
壁に激突して落下。
続けて、俺にナイフを当てている男の両腕も軽く払う。
バキ!
ナイフはどこかへ飛んでいき、男の右腕が折れたようだ。
「う、がぁ・・」
!!
残りの男たちが俺を見てつぶやく。
「な、何だ?」
「このおっさん、強ぇぞ」
いやいや、軽く払っただけなんですけど。
俺は指をパチンと鳴らす。
同時に男たちの身体に沿って膜のような結界を作る。
「や、やべぇぞ、取りあえず逃げるぞ!」
残りの男たちは駆け出そうとした。
!!
「あれ、動かねぇ」
男たちは自分の足元を見る。
「こ、凍ってる・・んなバカな!」
男たちの足元に氷の塊があり、地面に固定されていた。
男たちは俺の方を見ながら言葉を出してくる。
「お、おっさん、なにし・・」
俺はその言葉と同時につぶやく。
「サイレンス」
「「・・・・」」
!!
男たちの声が消える。
男たちはもがきながら、お互いの顔を見合わせている。
足が折れ、吹き飛んだ男はそのまま動かない。
ナイフを突きつけて来た男は、その場でうずくまって腕を押さえている。
身体が半分ほど凍って声は出ないようだが。
俺は吹き飛んだ男を拾いに行った。
そのまま片手で持ち上げると、仲間のところへ連れて来る。
ドサ。
仲間の前に男を落とす。
「う~ん・・どうしたものか」
俺は軽くつぶやきながら、取りあえず同じように結界膜を張る。
こんな連中は警察に引き渡しても、また同じことを繰り返すだろう。
ただ、ここで処分しても世の中が平和になるわけじゃないし、できるはずもない。
・・・
だが、目障りだな。
俺はそう思うとまた指を鳴らす。
パチン!
すると男たちの胸の辺りに小さな黒い炎が
男たちは声もなく顔を見合わせたり、俺を見たりしている。
「それはヘルフレイム。 対象物を燃やし尽くすまで消えることはない」
俺はそれだけを言うと、その場からゆっくりと歩いて遠ざかって行く。
結界膜の中で黒い炎が荒れ狂っている。
外からは何やら黒い煙のようなものが集まっているように見えただろう。
俺の後ろではザワザワした声が集まって来ていた。
「・・おーい、火が・・人に火がついているぞ」
「誰か水を持ってきてくれ~!」
「・・こっちは凍っているぞ・・」
「火が消えないぞ・・」
「携帯で撮影を・・って、え? う、写らない・・なんで?」
・・・
・・
俺は自分が宿泊しているビジネスホテルへと戻ってきていた。
部屋に入ると服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
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