第3話 帰還
<リカの部屋>
リカの部屋がノックされる。
「はーい」
リカが部屋の鍵を開けて、ドアを開く。
「ケン、どうしたの?」
「リカ、ちょっと話があるんだ」
ケンはそう言うと、リカの部屋に入って行く。
リカの傍にケンが座る。
「ケ、ケン、ちょっと近いわよ」
リカが少し顔を赤くして言う。
「リカ、そんな場合じゃない。 少し話しておきたいんだ」
ケンが真剣な顔をして言う。
リカにもわかったのだろう、素直になった。
「リカがさっき言っていた自分のレベルを25って言っただろう」
「うん」
「他の召喚された人たちもそこら辺りのレベルを言っていた」
「うん」
「実はな、俺のレベルは27なんだ」
リカは少し驚く。
「え~どうして・・」
リカが声を少し大きくして言葉を出そうとすると、ケンに口を塞がれた。
「リカ、俺たちの会話はすべて聞かれていると思った方がいい。 だからこうやって近くで話しているんだ」
リカが口を塞がれたまま何度かうなずく。
ケンは小さな声で続ける。
「それでさ、元の世界に帰れるかもしれないって言ってただろ? リカはどう思う?」
「どうって・・帰れればユカたちもいるし、家族もいるからね・・」
リカは考えているようだった。
「俺はどうでもいいんだ。 こんな夢みたいな世界に来れたんだ。 それに俺たちは紛れもなくチートだ。 この世界で面白おかしく生きれるかもしれない。 最高じゃない?」
ケンが少し興奮気味に言う。
「う~ん・・よくわからないな。 男の子ってそういうことがいいって思うかもしれないけど、私はねぇ・・わからないな。 でもやっぱ帰りたいかな」
リカは軽く首を振りながら答える。
「まぁいいさ。 とにかくだ。 リカ、信用できるのはお前だけだ。 後の大人たちは敵ではないが、味方でもないと思った方がいい」
ケンが真剣な顔で言う。
「う~ん・・そうかなぁ・・結構いい人っぽかったけどなぁ」
「リカはいつもそれで失敗してなかったっけ?」
ケンが笑いながら言う。
「あ~! ケンったらまたバカにして」
リカがムッとした顔を向ける。
「リカ、とにかくあまり人を信用し過ぎないようにな。 俺もこの世界でうまく生き残れるようにしてみるから」
「ありがとう、ケン」
リカは微笑みながらケンを見つめる。
ケンはそれだけ言うと自分の部屋へと帰っていった。
◇
<ユウジの部屋>
ユウジの部屋にはケイコがいた。
「ユウジ、私まだ現実が受け入れれないんだけど・・あの子たちは凄いわね」
「ケイコ、それっておばさんの発言だぞ」
ユウジが笑いながら言う。
「ちょっと、あんたねぇ・・でも、そうかもね。 あの子たちからすれば、私なんておばさんよね」
「まぁ、そんなことはないけどな」
「ありがとうユウジ。 それにしてもこれからどうなるんだろう?」
ケイコが不安そうな顔をする。
「さぁな、それはわからない。 だが、すぐに俺たちを廃棄することはないだろう」
ユウジの言葉にケイコが驚く。
「ちょ、ちょっとどういうこと? 私たちは勇者として召喚されたのでしょ? それが廃棄って・・」
ユウジが答える。
「ケイコ、勇者ってどういう感じで
ユウジの言葉にケイコは返答できない。
!
「あはは・・ケイコ、心配することはないよ。 俺たちはそれなりの能力を持っている。 もしもの時はこの国を飛び出せばいいんだよ。 勝手に召喚した連中に命を懸けることはない。 ただ、元の世界に戻る方法だな。 もしそれが出来なければ、ここで生きていくしかないが・・ケイコがいる。 俺は大丈夫だな」
ユウジが真剣な顔でケイコを見つめた。
「ユウジ・・」
ケイコはそっとユウジと唇を重ねる。
◇
<テツの部屋>
やっぱり夢じゃないな。
さて、これからどう処理されていくのだろうか。
勇者なんて使い捨てだろう。
それに俺たちを召喚した時に運ばれていたミイラのようなもの。
おそらく俺たちの召喚に関係した人だろう。
魔力を使い果たしたか、人柱となったかわからない。
どちらにしろ、力を得るためには手段を選ばない国のような感じだ。
◇◇
テツたち召喚されたものは、それぞれの思惑を胸にこの世界に慣れようとしていた。
・・・
それからはこの世界のシステムを教えられ、魔法の使い方や剣の使い方、身体の使い方などを教え込まれた。
俺は武術の経験があったのでそれなりにこなせたが、他の人たちはなかなかしんどかったようだ。
だがレベルの恩恵は大きかった。
そのうちダンジョンに連れて行かれて実戦をさせられる。
みんな少しずつレベルが上がっていった。
リカはレベルが上がったと喜んではしゃいでいた。
みんなの・・といっても、リカのレベルが30くらいになった時だ。
俺たち全員を連れて魔族領域にいきなり侵攻することになった。
後でわかったことだが、新しい勇者を召喚したという話を聞いた。
召喚するには適した日があるんじゃなかったのか?
違ったようだ。
どうやら魔力の多い人間が見つかると、手当たり次第勇者召喚をしているようだった。
ただ、俺たちの召喚された時は本当に50年ぶりの最適期だったらしい。
新たに召喚された勇者はレベル20くらいの欧米人だったようだ。
その人たちは人間種族の他国へと侵攻戦力にするという。
俺たちはそんな事情も知らずに魔族領域にいきなり放り込まれる。
結論から言えば、完全な敗北だ。
魔族は最低でもレベルが40を超えていた。
魔王に至ってはレベルがわからないらしい。
魔族は自ら侵攻することはないが、侵略されれば反撃はする。
俺はスキルの恩恵かわからないが、死なずに済んだようだ。
魔族に捉えられる。
他の召喚された勇者たちはどうなったのかわからない。
俺たちのいた場所が広範囲に吹き飛んだからだ。
俺は魔族に手厚く保護された。
魔族の連中と話しているととても感じがいい。
無駄な侵攻もせず、とても友好的な種族のようだ。
ただ、その種族人数が少ない。
俺は人種族だというのに差別を受けることはない。
しばらく一緒に生活するとわかってくる。
どうやら俺たちを召喚した国のみならず人種族がこの世界の諸悪の根源のような感じを受けてきた。
俺は魔族の戦士たちに戦闘技術と魔術を習って鍛えて行った。
レベルも44になる。
人種族では存在しないレベルだという。
レベル40を超える人は見たことが無いと話していた。
魔族の話では、人種族の神が召喚に必要な力を与えているのではないか。
その神をどうにかできれば召喚自体がなくなり、無駄な戦闘も終わるだろうという。
だが、魔族ではその領域に入るだけで本来の力を出すことができない。
俺は聖戦士という職種だ。
何の問題もない。
俺が神を倒すべく人間社会に戻って行った。
いろいろと調べ、やっと神殿から神のいる場所へと移動。
すると、神が鎖につながれているではないか。
聞けば、遠い昔に人との約束を果たせなかった罰を受けているのだという。
俺は遠慮なくその鎖を断ち切った。
神が完全に復活するとともに、その力で無駄な召喚術を封印するという。
神はお礼に俺を元の世界に戻してくれるそうだ。
俺は少し迷ったが、ありがたく受け取ることにした。
俺を召喚した国はどうなるのかと聞いてみた。
自然と滅ぶだろうと神は言う。
俺が会得した魔法や戦闘術で滅ぼすまでもない。
神が言っているのだ。
任せておこう。
俺はそのまま元の世界への帰還を頼んだ。
すると俺が召喚させられた時間と場所にいたというわけだ。
◇◇
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