第7話 友達との作戦会議3


「エイミー、僕に会いに来てくれて嬉しいよ」

「殿下、何を仰っているんですか!私はきたくてここに来ているわけじゃないのですよ!?」


 私は前の約束を守るためにここまで来ただけなのに、勘違いされるような言い回しはやめてほしいわ!


「それでも僕は毎回嬉しいんだ。だからエイミー、ありがとう」


 殿下との話し合いは毎回こうして始まるせいで、私はいつも出端を挫かれてしまうのよね……。

 だけど今日の私は一味も二味も違うのだから!

 殿下に嫌われる会で前回の失敗を考察した結果、気が付いたことがあるのよ!

 さあ、何処からでもかかってきなさい!

 

「エイミー、今日の君の髪飾りは黒い髪に似合っていて素敵だ。より一層、君の可愛さが引き立てられている。そんな君をもっと僕に見せてくれないか?」

「いやいや、急に積極的すぎて無理!!!」


 なんで今日に限って、積極的なのよ!!

 恥ずかしくて余計に顔も見せられないわよ!!


「顔が赤くなってるエイミーもチャーミングで可愛いね」

「いや、もうそれ以上は言わないでください!!」


 もうこれ以上は耐えられないわ……次に何か言われたらここから飛び出してやるんだから!


「ああ、ダメだ……」


 そう言いたいのは私なのに、何故殿下のほうが声に出したのですか!?

 もう、文句言ってやりたいぐらいよ!!


「今日は少しは我慢しようと思ったのに、僕にはやっぱり無理だったよ」

「えっと……一体何が……?」

「エイミー!!」

「は、はい!!」


 不穏すぎて、つい返事しちゃったけど変な話じゃないわよね……?


「僕は、君の事が好きなんだ……」

「は、はぁ。お断りします……」


 え、終わり!!?

 じゃあさっきのは一体なんなのよ……。いつもと変わらない告白じゃない。


「今日はエイミーに告白しないように頑張ったのに、ダメだった!!!」


 え?頑張るのそこなの!!!?

 何故かしら、殿下はいつも頑張る方向を間違えている気がするのよね……でも私としては頑張って欲しくないから、絶対に言わないわ!


「くそ~、押してダメなら引いてみろ作戦だったのに!!」

「全然引けてませんでしたけど!!!?」


 あれで引いてるつもりなら驚きだよ!!!

 

 

「そうだ、今日はエイミーに渡したい物があったんだった」

「殿下、私は物で釣られるような女じゃありませんよ!」

「そんなのわかってるよ。でも、エイミーにどうしても贈りたかったんだ。受け取ってくれ」


 流石にこれは受け取らないわけにはいかないわよね……一体何が入って……。


「ぇえ!!?これ、私の好きな紅茶ブランド何ですけど!!??一体何で!?」

「僕はエイミーのこと何でもしってるからね!」

「いや、そんな自信満々に言わないでください!それただのストーカーですよ……!」


 流石に私もドン引きですから!!!

 

「ええっ?好きな人のことは全部知ってるのが当たり前だって……!!?」

「誰ですかそんな怖い事行った人……」

「婚約者だよ!!!」

「婚約者様怖っ!!!!」


 少し変わっているとは聞いていたけど、婚約者様が私の中でだいぶ変な人に格上げしたわよ!!

 まあ、前座はこのくらいにして……今日は殿下のタイプを聞きに来たんだから!

 前回は嫌いな物だったからいけなかったのよ!

 だから今回は好きなタイプを聞いて、それに外れた行動を取ろうと思うわけなのよ!


「あの、殿下の好きなタイプを聞いてもいいですか?」

「え?好きなタイプ……もちろん、エイミーだよ!」


 なんなのこの殿下!!

 しかもドヤ顔で言うんじゃなーーい!!!!

 これじゃあ答えになってないじゃない!!?

 もうこうなったら逆もきいてやるんだから!


「じゃ、じゃあ嫌いなタイプは?」

「エイミーをいじめる奴全員」


 この人何言ってんのーーー!!!!

 しかもなんか目が笑ってないんですけど??


「もしエイミーをいじめる奴がいたら、すぐに島流しにしてやる」

「殿下!!暴君みたいな事を言うのはやめてください!」

「おっと、すまない。エイミーがいじめられたらと考えたらどうも感情が抑えられなくなってしまったよ」


 えぇ、怖っ!!!!

 もし私をいじめる人があらわれた日には、すぐに逃げて!としか言えないわね。全くおかしな話だけど!


「でもいじめられているエイミーの事を考えたからかな、僕はエイミーの事が少し理解できた気がするよ!」

「え!?妄想の中なのに!!!?」

「ああ、妄想の中でもエイミーは天使のようだった」


 ちょっと話がついてけないわ!!

 もうこんなんじゃ、作戦は大失敗じゃない!

 でも私の殿下に対する好感度も大幅ダウンしたからいいのかしら?



「ねえ、エイミーは昔のことは覚えてないよね?」

「昔?昔っていつぐらいのですか……?」

「いや、覚えてないならいいんだ。確認したかっただけだから」


 そんな風に言われると、気になるじゃない。


「でも、子供の頃のエイミーも天使のようなんだろうね!てこと、今は大天使!?」

「そんなわけ、あるかーーーー!!!!」



 こうして今回も失敗してしまったけど、正直これなら痛み分けよね。

 でも殿下が言っていた昔の話と言うのが何故か私は少し気になってしまって、私が何かを忘れているのかしらと、首をかしげてしまったのよね。

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