馬鹿と僕

「あーーー、恋愛したい…彼女欲しいぃ」


「はあ、君も変わらないね。」

「馬鹿は影響受けやすいらしいけど、恋愛映画を見て急に猛烈に恋愛したいマンになるのは馬鹿と言うか純粋というか」


静かになり、夕焼けが差し込む教室で君の妄想に耳を傾けている。昔からの仲だが君には恋愛がしたくなったというボヤキがうるさくなる時期がたまに来る。

恋愛の何が良いんだろう。無駄にドキドキしたり、ロマンチックな空気を一人で感じたり、馬鹿みたいと思う。


なにかに熱くなるのは嫌いだ。恋い焦がれるというのは苦しくて息ができなくて、海に溺れているようだから。

でも、この感覚も君がくれるものと思うとひどく愛しいから不思議だ。


まったく、矛盾だらけだ。


というか。僕が君をこんなに想っているのにも気づけないようではこのド馬鹿に彼女なんて一生できないと思う。いや、これは願望かな。ずっと彼女なんて作らないでほしい。ずっと、彼女欲しいと僕の横で嘆いていてほしいものだ。


「でさ、この前の映画みたいなセリフを言ってみたいと思ってさ!俺女の子を落とすやつ考えてきたんだ!それじゃあ実験台!ぜひ試させてくれ!」


「え?あぁ、うん」


なんだかぼーっとしていたようで、独り歩きしていた思考が頬を触られたことで帰ってくる。



「好きだ。これからもずっと俺のそばにいてくれ。」


「随分とキザなセリフだね。それに、「これからも」じゃ僕くらいにしか言えないじゃないか。」

「ほら、もう時間も遅くなってきたし帰ろうよ。」



いつもの思いつきだとわかっているけど、言葉をもらうだけでこんなに嬉しくて、こんなに幸せなんだね。僕も君の馬鹿に乗っかって少しだけ素直になろうかな。



「僕も君が好きだよ、ずっとね。」

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