見えない君と想い
雪が深々と降り続け、冷たい風が彼女を貫く。小学生の頃からいつも一緒にいた彼女はひどく寒そうに体を震わせ手に息を吐いて暖を取ろうとしている。しかたないと思いながら君の手をとってギュッと握り少しでも俺の体温が君を温めますようにと願う。
そんなことは起きるはずはない。だって俺は君に触れられていないし、姿を見せることも叶わないから。
俺が命を落としたのは三年前、会社から家に帰る途中でスリップした車が俺目掛けてぶつかってきて、記憶が飛んだ。・・・気づけば葬式場にいた。見れば親は泣いてるわ、友達は暗い顔、んで誰も俺に気づかない。完全に理解してしまった。
あぁ、死んだんだって
それから、すぐに君を探したら涙一つ流さないで、ケロッとしてるものだから流石に寂しかったなぁ。生前も俺ばかり好きで半場、強引に付き合ってもらっていたところもあった。それでも少しくらいは好かれていたと、悲しんでくれると思っていたのだけど見当違いだったようでほんの少しだけ残念だった。
それでも好きなことに変わりはない。君が怪我しないように、怖い思いしないようにできる限り見守ってきた。
でも、もう行かなきゃみたいだ。最近意識があやふやになって、暖かな感じに包まれることが増えた。たぶんお迎えってやつなんだろう。
だから、最後に伝えたいことがあります。
聞こえないだろうけど、どうしても言いたかったこと
「俺と一緒にいてくれてありがとう。俺の好きに付き合ってくれてありがとう。どうか、・・・どうか幸せになってください。俺は生前も死後も幸せにしてあげられなかったけど、君の幸せをずっと願ってます。大好きでした。」
あぁ、温かい。暖かくて気持ちが良かった。
最後に見た君の顔はなぜか涙を浮かべていた。
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目の前から好きだった人が消えた。最後の最後まで言わなかった、言えなかった。本当はあなたともっと一緒に居たかった。ずっとあなたの未練になりたかった。でも私は嘘つきだから、全部全部隠してた。
でも、もういないから一言だけ言えなかったことを言うね。
「私の方こそありがとう。ずっとずっと大好きでした。」
風がこぼれた涙も想いもさらって空に登っていった
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