第2話
その後、用意された朝食を平らげ、残ってたその他諸々の事を終わらせて、俺とライアは学生寮を後にする。見慣れた景色を目に写しながら、いつもの路地を十数分歩いて行くと、すぐに目的地——『ノルヴァンテラ魔法学校』へ到着した。
『ノルヴァンテラ魔法学校』
ここは、この国——『レドリライト帝国』の最大の魔法科学校である。魔法に関わるほとんどの分野、高度かつ最新鋭の技法で学ぶことが出来、毎年のように何人もの優秀な人間を輩出している、いわゆる魔法学校界の名門校だ。
では、ここで彼らが学ぶ『魔法』そのものとは何か。
完結に言ってしまえば、人知の先にある神々が持つ世界の理でさえも凌駕する力、である。
もちろん、神の持つこれを人間が会得することはほぼ不可能とされている。しかし、そのほぼをかいくぐって不可能を可能にする
そんな彼らのことを世間では『魔法士』と呼んでいた。
だが、ここで注意して欲しいのは、魔法士達は神やその類いの存在になれたがために魔法を使えるようになったのではない、ということだ。
また、魔法士だからといって、身体的能力が上がったり、寿命が通常より長く延びたりすることといった、いかにも人間離れしたような力を手に入れることはまずない。魔法が使えることを除けば、彼らは一般の人間との違いはないのだ。
では、どのように彼らは魔法を手に入れたのか。それは、神々と——いや、正確には神格化した『英霊』や『精霊』と契約を交わしているからである。
身近な例を挙げてみるなら、学生寮にいる、象使いの大英雄ハバルニン=バルカもその一人だ。彼はライア=アルレインという青年と契約している英霊である。
とはいえ、その英霊や精霊との契約の結果で得た魔法は、実のところ魔法士のものになったのではない。あくまでも、英霊や精霊は人間に魔法を貸しているというだけであって、使わせたくない、もしくは魔法士との契約を破棄すれば彼らは魔法を使えなくなってしまうのだ。
そんな彼らが貸与してくれる魔法には、大きく分けて『魔術系統』と『構築系統』の二種類の系統が存在する。
その違いを端的に説明するなら、物体を動かす、止める、飛ばす、燃やす、凍らせる、消す等といった、自然の摂理を無視するような魔法が特徴なのが魔術系統。一方で、魔法の源である魔力を加工して別の何かを造ることができるのが構築系統である。
このように、系統が異なるだけで魔法の性質は変わってくるし、発動方法や操作の仕方も違ってくる。こういった知識や技能を独学で会得する魔法士も少なくはないが、今では魔法学校といった魔法専門の教育機関で学ぶことが主流となってきた。
では、どうして人間は魔法を使うのか。
もちろん、今の生活を便利に、豊かにする為でもある。現に魔法士達は工業や商業、医療や教育などを始めとする様々な分野で多くの活躍をしており、これまでもこれからも多大な期待が寄せられている。
しかし
それらは実際、後付けされたものであって本来の目的ではない。
なら、その本来の目的とは何なのか。
それはこの都市、この国の外側に広がる、かつて人間が領有していた領土を取り戻すためだ。
時間を遡ることおよそ三百年程前。このレドリライト帝国が世界を一つに統一し、戦争のない平和な時代を迎えてから数十年経った頃、首都から遠く離れた所にある小さな村に突然として現れた化け物の集団がことの発端であった。
彼らは現れるや否や、そこにいた住民を老若男女構わずに
その後も彼らの勢いは衰えることなく段々と活動区域を広げていく。気が付けばもう、人間は国土のほぼ全てをあっという間に失ってしまっていた。
生き物を平気な顔で殺められる残忍で狂暴な性格。これに加えて、人間とは思えない異様な姿——赤い眼に剥き出しの鋭い牙、アンバランスな体型、頭から生える二本の角、そして胸に宿す赤い球体、などなど——をした彼らを人々は『悪魔』と呼ぶようになった。
『悪魔』達はその容姿から見てこの世界の生き物ではない、とされている。そのためか、剣や銃といった本来の人間の武器では彼らを殺すことは出来なかった。
しかし、魔法は違った。人間を超えた先にあるその力のみが『悪魔』に抵抗できる唯一の手段だ。
故に、魔法士へとなった者はほとんど全てこの『悪魔』と戦うために戦術を身につけ、戦場へ駆り出されていく。
これこそ人間が魔法を使う理由、魔法士の通らざるを得ない道——魔法士の
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