第11話 ピンチ到来!
ガアアアアッ!
深夜の会社の建物に、気味の悪い咆哮が響いている。
両腕を失い、服も体もボロボロになった【地縛霊】が、白導衣姿の美人姉妹と幼稚園児の葉手州くん、そしてその小さな肩に乗っているスズメに向かって威嚇している声だ。
「(どうして魔王の状態じゃなくなったんだ! 魔王のスキルも全然使えなくなったじゃねーかッ!)」
葉手州くんは、顔を真っ青にして自分の手を見つめた。
小さなスズメも「チュン! チュン!」と鳴いて、肩の上で慌てふためいている。
「(あー! もー! 魔王じゃなくなったら、ただの5歳の幼稚園児じゃねぇかッ! ――――死ぬッ……! 死んでしまう……ッ! せっかく美人姉妹のもとで暮らせるようになって、しかも美人で巨乳の姉のほうに気に入られて、一緒にお風呂とか入れるようになったのにッ!! 死んで……また他の人生に転生するなんて、絶対にイヤだ―――ッ!!)」
ツンツンに逆立った黒髪を手でかきむしる葉手州くん。
その小さな幼稚園児を守ろうと、姫崎友莉愛と姫崎芽愛が【地縛霊】の前に立ちふさがった。手には【破魔】の札を持っているが、それも残りの枚数が少なくなっている。
しかも、傷を負って怒りに目を真っ赤に燃え上がらせている【地縛霊】を、この【破魔】の札だけで成仏させることは難しいかも知れない。
「……今まで相手してきた中では、一番強い【地縛霊】だけど……。絶対、倒してやるんだから。……覚悟、しなさい」
「私とお姉ちゃんが一生懸命作った【破魔】の札だから、絶対、大丈夫。……お前みたいなヤツ、1枚で成仏させてやるッ」
傷つき、痛む体を手で押さえながら。
姫崎姉妹が凛とした目で、迫ってくる【地縛霊】を睨みつけていた。
その時。
「ハ―――ッハッハッハァ! お姫様のピンチには、やっぱり王子様が登場しないとなぁ!」
薄暗い部屋に、突然火の玉がいくつも浮き上がった。
炎の明かりが提灯のように周囲を照らし出す。
背の高い、齢20と少しくらいの青年が真白な歯を見せてニカッと笑いかけてくる。
「助けに来ましたよォ、この……阿部清満(あべの せいまん)様がァ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます