四ノ二十四 倒せ、悪の戦士!
「ちっ、悠長にかまえすぎたか」
バンは唇をかんだ。
「ジンザ、お前は馬をおさえこめっ、そのかんに俺とゲンマで銀色をやるっ。いくぞ!」
号令し、バンは金棒を地面にむかって振り、大量の土砂をヴァイアンに向けて飛び散らせた。同時に、ジンザのフドウがトーマへとホバーを噴出させて進撃する。
砂塵の目くらましのなかに黒い影が動き、ヴァイアンの正面からゲンマのフドウが飛び出し、金棒をふるう。
サクミは辛くも攻撃を刀で受け止める。
そこへ、ゲンマ機の後ろから回り込んだバン機がヴァイアンの側面にタックルをしてくる。
よろけるヴァイアンに、続けざまに、バンが金棒を打ちおろす。
サクミがよけたところに、さらにゲンマの金棒が襲う。
それをよければ、すかさずバンが攻撃してくる……。
よけてもよけても、次々に襲い来る金棒の連撃がとまらない。
しだいに、ヴァイアンはまた校舎のほうへと追い込まれていく。
「こ、こんな」
焦るサクミの視界の二機のフドウのむこうにうつったのは、敵にたいして突進をくりかえしているアスハのトーマであった。
アスハのがんばりが、サクミを発奮させたといえるだろうか。
「こんにゃろめっ!」
ヴァイアンはさがるのをやめ、腰を落とすと、頭から敵にむけて突撃した。
ぱっと二手にわかれて二機のフドウはそれをさける。
背中をむけたヴァイアンに、ゲンマ機が、金棒を横殴りにふるった。
その視界をコウメイが横切って視界を覆う。
「目障りなハエめ!」
バンが金棒でコウメイを叩き落とそうするが、シオンはふわりと上昇してその一撃をさけた。
バン機の構えがくずれたところに、ヴァイアンが振り返りつつ刀を薙いだ。
肩のあたりをめがけてくる一閃を、バンはしゃがんでかわす。
が……。
天空高く伸びた兜の頭を、付け根のあたりから白月が斬り落とした。
「ぬあっ、俺の自慢の兜がっ!?」
即座に立ち上がりつつ、立ち上がる勢いをのせて金棒がしたからふりあげられる。
ヴァイアンがそれをのけぞってよける。
上空へ振り上げられた金棒が燕返しに振り下ろされる。
と、そこへ、バン機の側面からなにかが激突した。
アスハのトーマに突き飛ばされたジンザ機であった。
二機はもつれあって、よろける。
「魔導斬りっ!」
よろけたバンのフドウに向けて、サクミは大上段からの必殺の一撃を打ち込んだ。
左肩からみぞおちあたりまで、がりがりと鋼の装甲を切り裂き、火花をまきちらしながら、白月が振りきられる。
体勢を立て直したジンザ機が右前方から、地響きたてて倒れ込むバン機をさけつつゲンマ機が左後方にまわり、同時にヴァイアンに向けて金棒をふった。
が、ジンザ機の横腹に、トーマの二本のツノが喰い込んだ。
「これでも喰らえ!」
叫んでアスハは、突き刺さったツノから
さらにゲンマ機にむけ、決死の光線がコウメイの目から発射され、背から胸をつらぬき、同時にヴァイアンが脇腹を一太刀で両断した。
「なっ、俺たちが、こんなガキどもに!?」
バンの悔しまぎれの叫びとともに、三機のフドウが黒い光に包まれて、宝具であるそれぞれの金棒へと戻っていく。
その黒い光がはじけて消えた。
その運動場の地面には、地団駄を踏んで悔しがるバン達三人の姿があり、その前には、魔導力を消費して通常の大きさにもどったトーマにまたがるアスハの姿があった。
トーマと同様に魔導力を使い果たして失速するコウメイから、シオンはジャンプしてヴァイアンの肩に飛びついた。コウメイは墜落まぎわに光となって姿を消し、シオンの扇にもどされた。
「ふん、戦いかたがずいぶん下品だと思っていたけど、操縦者も下品な顔だちをしてるのね」
馬上から見おろして侮辱の言葉を吐いたアスハを、バンは歯ぎしりしてにらんだ。
「命はたすけてあげる。たいして戦闘経験のない小娘たちに倒されたことを、のちのちまで悔やんで生きるといいわ」
言い終わると、アスハはトーマを校舎のほうへとむけて、歩き出した。
堂々としているようにみえ、内実はトーマの魔導力が減少していることを悟られないように虚勢をはっているにすぎないのであるが。
歯ぎしりするバンたちのわきを、アスハを追って、ヴァイアンの足がふみしめ、歩き去っていった。
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