四ノ二十三 対決、血迅隊!
「なんだこいつは!?」
バン・グンジは画面にうつる白銀の慧煌兵をののしった。
さっきからやる気があるのかないのか、よけてばかりでまるで攻撃をかえしてこない。
生徒たちを逃がすために時間稼ぎをしているのはわかるが、だったら俺たちを倒してしまったほうが得策だろう……。
――もっとも倒せればの話だがな。
しかし、そのさけかたが、堂に入っているというか、すさまじい反応速度をしているとでもいうべきか。
「今度こそもらった!」
バンが確実に当たると確信して振るった金棒の一撃が、一髪のところでするりとかわされ、フドウがたたらをふむ。
僚機であるゲンマとジンザのフドウがたてつづけに攻撃するも、ひらりひらりとヴァイアンはかわしてしまう。
「だったら!」
バンはヴァイアンが攻撃をかわして後ろを向いた隙に、金棒を背中におさめて、すっと間合いをつめた。
そうして白銀の機体がくるりと振り返ったところに組み付いた。
「これならどうだ、ヴァイアン!」
「な、ななっ!?」
サクミは突然ふところに飛び込んできた敵機に、完全に虚をつかれた。
相撲でいうもろ差しでまわしを取られたかたちになって、ぐいぐいと押してくるフドウに、右手に刀を握ったままで抵抗をこころみたが、腰が浮いてしまってまるで力がはいらない。
「ぬはははは、このまま押し切ってやる!」
接触回線をつたって、敵の豪気な声が耳をうった。
ヴァイアンは敵の言葉どおりにそのまま校舎間際まで押し切られた。
「ま、まずい」
校舎は無人であろうと思われるが、だからといって今日まで勉学にいそしんできた、なじみのある校舎を破壊するのは、気がひける。
先日のアスハとの稽古のときのように、逆転しようにも、今の体勢ではいかんともしがたい。
フドウは、そのままヴァイアンを吊り上げるようにして、校舎に押し崩そうとしてくる。
ならば、とサクミは思い切って全身の力を抜いて、横ざまに倒れ込むように動いた。
つられてバンは、横へ向けて、ヴァイアンをしたて投げに投げ倒した。
からくもヴァイアンは校舎の壁すれすれにころがる。
駆けつけた二機が地面に這うヴァイアンにむけて金棒を振り下ろすが、サクミはさらに転がってそれをかわし、すっと立ち上がった。
刀を構えて、敵を正面にとらえたまま、そろそろと横すべりするように、運動場へともどっていく。
ヴァイアンを囲むように迫っていく敵の三機に向けて、コウメイで上空を旋回していたシオンは、ここぞとばかりに、ヒヨリからもらった爆弾を投下した。
爆弾は、丸い兜の一機に当たったが、まるでダメージをあたえていない。
「やっぱり、目くらまし程度の効果しかないのか」
ヒヨリからレクチャーはされていたものの、やはり慧煌兵相手にはまるで効き目のない武器のようだ。
ちなみに、アスハのトーマがツノの間から光弾を放てるように、コウメイも目から高威力の光線を放てるのだが、出力高く放ってしまうとやはりエネルギー切れを起こして、動きがにぶくなる。つまるところ空を飛んでいる状態で光線を出せば、墜落しかねない危険性をはらんでいるので、ほとんど無用の長物といっていい機能なのであった。
しかたなしに、敵の視界を横ぎるように飛んで邪魔をするくらいしか今のシオンには、ヴァイアンを援護するすべがないわけであった。
そうして、敵の前を行ったり来たりすると、フドウの僚機の一機が、うるさいハエを追い払うように、金棒をコウメイに向けて振った。
コウメイは上昇して逃げていく。
「ほんと、役に立てなくてごめんね」
シオンは自分のふがいなさを嘆くしかない。
が、その上空へ退避していくシオンのコウメイを、偶然同調するようにして、そこにいた四機の慧煌兵が目で追った瞬間であった。
僚機のフドウの一機が、突然横合いから突き飛ばされるようにして、地面に倒れこんだ。
今度も皆がいっせいにそちらを見る。
と、そこには、巨大化したアスハのトーマが突撃してきていて、さらに皆がいっせいに、あっと思った時には、バンのフドウに向けて二本のツノが槍の穂先のように一直線に走った。
バンは突進してくる巨大馬にむけて、ちょうど野球のバッターのように、金棒を横殴りにふるった。
が、うなりをあげて振られた金棒がうち砕いたのは、トーマにうしろから飛びかかってきたザンリュウの頭であった。
頭を破壊された恐竜型慧煌獣が、黒い光となってはじけて、その宝具へと格納されていくなか、金棒をかがんでかわして走りすぎたトーマは運動場をくるりと回ってヴァイアンの正反対の位置――つまり、二機でフドウ三機を挟み込む位置に陣取った。
「さあ」
とコクピットでアスハは不敵な笑みを浮かべた。
「お遊びはここまでよ」
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