第2話 魔法使っちゃう系女子と変態
とある高校の昼下がり。
屋上でイチャイチャとお弁当の食べさせあいっこをしているカップルたちの前に巨大なカラスの様な怪人が姿を現した!
「カーカッカッカッカ!!イチャイチャイチャ目障りなやつらめ!このドン・カーラス様が貴様らの愛を消し飛ばしてくれるわ!!」
ドン・カーラスの羽がカップルたちを襲う!!
「キャアアア!!」
「あ、危ない!!」
彼女を守る様に男たちが羽を受け止める。
「ぐあ……!」
「スバル君!大丈夫?」
彼女が彼氏に駆け寄る。その時、彼女は信じられない光景を目にした!
「ス、スバル君……?どうしたの?」
羽を受けた男たちは突如、彼女の制服の糸くずを取りながらお尻を横に振り出したのだ!!
これには彼らの彼女たちもドン引きである!
「カーカッカッカッカ!!それはカラス特有の行動だ!貴様らの彼氏はこれから一生、気持ちが昂るたびに貴様らの服を綺麗にしながらお尻を横に振ることになるのだ!!」
「そ、そんなのイヤアアァ!!」
屋上に悲しき悲鳴が響き渡る。
このままでは屋上のカップルたちの間に芽生えた愛は失われてしまう!
「待ちなさい!」
その時、屋上に一人の少女が現れた!
「愛を奪おうとするカラスさんは、この愛と正義の魔法少女ラブリーピンクが許しません!!」
可愛らしいポーズと供に現れたのは、この地域の人気ヒロインだった!
ピンクと白が中心の可愛らしいフリフリの衣装に、腰まで伸びたピンク色のツインテールが風に揺れる。
彼女の姿を見て、ドン・カーラスも苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「出たな……ラブリーピンク。だが、貴様もこの男たちのようにお尻をフリフリするように変えてくれるわ!!」
ドン・カーラスの羽がラブリーピンクを襲う!だが、彼女は信じられないほどの跳躍で華麗にその羽を躱した。
「はああ!!」
彼女の蹴りがドン・カーラスに突き刺さる。
「カアアアア!?」
「一気に決めます!」
ラブリーピンクが手に持ったステッキを構える。ステッキの先端にピンク色の光が集まっていく。
行け!ラブリーピンク!とどめをさすんだ!!
「ぐう……簡単にやられてたまるか!!」
しかし、ドン・カーラスもただではやられない。彼が羽を大きく広げると、羽をぶつけられた男子高校生たちがラブリーピンクを取り押さえたのだ!
「え!?……は、放してください!」
男子高校生程度の力であればラブリーピンクにとって振り払うことは簡単だ。しかし、そうすれば少なからず彼らを傷つけることになる。
心優しき魔法少女にはそんなことはできなかった!
「カーカッカッカ!形勢逆転だな。食らうがいい!ブラック・フェザーバレットオオォ!!」
ドン・カーラスの羽がラブリーピンクに襲い掛かる!
ラブリーピンクがやられてしまう!そう思った時、一人の男がラブリーピンクの前に現れた!!
ズドオン!!
「カーカッカッカ!ラブリーピンクもこれでお終いだ!」
高笑いするドン・カーラス。しかし、彼の目論見は一人の男によって阻止された!!
「カア!?」
彼の視界にラブリーピンクの盾になるように立つ一人の男と、無傷のラブリーピンクの姿が写る!
「お前は誰だ!」
「俺は……シャイニング村田だ!!」
ラブリーピンクを守ったのは我らのヒーローシャイニング村田だった!!
「卑怯な手を使う怪人め。このシャイニング村田がお前を倒す!!」
そう言うと、シャイニング村田は直ぐにドン・カーラスに接近し右ストレートを食らわせる!
「カアアアア!?」
吹き飛ぶドン・カーラス!その隙に、シャイニング村田はラブリーピンクを抑えている男たちに首トンをして意識を奪った!
「あ、ありがとうございます!」
地元でも人気のヒロインにお礼を言われ照れるシャイニング村田。
「気にしないでください」
さて、ここで質問だが可愛らしい美少女にお礼を言われテンションが上がらない男がいるだろうか?答え……多分いない。
「村田さん……」
「こ、これは!?」
村田は男だった。そして、愛と正義の魔法少女ラブリーピンクは美少女だった!つまり、たった今ドン・カーラスの羽を受けた村田は心の昂ぶりをお尻を振ることで表現してしまったのだ!!
すぐに気づき、お尻のフリフリを抑えようとするもそれは出来なかった。可愛い女子の前で辱めを受けたシャイニング村田の怒りはドン・カーラスに向けられる!
「うおおお!許さんぞおおお!!」
「カア……地味なくせに何てパワーだ。カ!?」
身体を起こしたばかりで隙だらけのドン・カーラスにシャイニング村田の拳が襲い掛かる!
「カ、カアアア!!」
悲鳴を上げるドン・カーラス!彼の肉体はもうボロボロだった!
「村田さん!後は任せてください!!」
ラブリーピンクがそう言うと、村田は素早くその場から離れる。
「これで終わりです!ラブリーヒーリングシャワー!!」
ピンク色の極太ビームがドン・カーラスを包み込む。
「カアアア!」
ビームを受けたドン・カーラスはただのカラスとなってその場から飛び去って行った。
戦いの終わりを確かめると、ラブリーピンクはキョロキョロと周りを見る。だが、彼女が探すシャイニング村田は既にその場から姿を消していた。
「またお礼を言いそびれてしまいました……」
ガックリと肩を落とすラブリーピンク。
シャイニング村田と同地区でヒロイン活動をする彼女は今回を含めて、何度かシャイニング村田に助けられているのだが、村田がすぐに立ち去ることから未だにお礼をちゃんと言えていないことを気にしているのであった。
***
ガン!
さっきまで屋上で激闘が繰り広げられていた高校の三年A組で一人の男が机に頭をぶつけていた。
「村田?大丈夫か?」
彼の友達が心配そうに彼に声を掛ける。
「女の子の前で尻を横に振る男ってどう思う?」
村田の突然の質問に友達は何があったんだと思いながら、質問に答えた。
「そうだな。……多分、変態だな」
「だよね」
そう言うと、村田は沈黙した。
「村田、安心しろ。お前が変態でも俺はお前の友達だ」
村田の肩に手を置き、優しく語り掛ける友達。村田は感極まってその友達に抱き着いていた!
「ははは!全くお前ってやつは……村田?お前……」
徐々に言葉から力が無くなっていく村田の友人!彼の視線の先にはフリフリと揺れる村田のお尻があった!
「違う!これは誤解なんだ!」
必死に弁明する村田!だが、その思いは友人には伝わらなかった!
「ひっ!す、すまねえ村田……俺は、女が好きなんだあああ!!」
友人は村田から離れていった。
「誤解なんだあああああ!!」
後には呆然と立ち尽くす村田の姿があった。
ドン・カーラスは倒した。だが、羽の効果はまだ消えていなかったのだ!
「ちくしょおおおお!!」
悲しみに叫ぶ村田。
ドン・カーラスは確実に村田に大ダメージを与えたのだった。
その後、カラスの羽の効果は無事に消えたが、彼はしばらくの間、友人たちから距離を置かれることになった。
更に、学校で行われた応援したいカップルランキングに彼と彼の友人の名前が載った。
彼は思った。欲しいのはこっちの人気じゃない……。
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