第2話

夏になって、

一番最初のプールの時間。



地味子は、プールサイドで制服姿だったのだが、体操座りをして見学してた。


その体操座りというのが、

もうなんかスカートのなか、見えそうで見えないから俺はあの日みたく、派手な色のやつ

身につけてんのかな?と妄想がふくらみ、

地味子を気にかけてしまっていた。



そんな矢先のことだ。





クラスの女子ボスの林ユーコが、プールのなかで彼女に対して手招きしてた。



「ねぇー!地味子ちゃん!

私、足をつってしまったみたいなの。

ちょっと悪いんだけどぉ、手を貸してくれない??」


「手を貸してくれたら、プールサイドに楽に上がれるからぁ!!」


「え?」


地味子が立ち上がり、プールのなかにいる近づいた。


今、思えば。


林ユーコの罠だった。


「これでいい?」


地味子は彼女に右手を差し出した。


林ユーコは代わりに左手を差し出したのだが、

地味子の手首を掴むと、

ぐい、と引っ張ったんだ。


1分後。


派手な水捌きが上がった。



「ごっめぇーん!地味子!

大丈夫??」


適当な謝罪感。


林ユーコはわざと、地味子を

プールに落とした。


先生が倉庫に行っていて、

席を外してるときに、

狙ってやったみたいだった。



「都会からきたくせに、地味な見た目しちゃってさ!!頭もよくて、運動もできるとか

マジでムカつく!

あんたが来たせいで、私、成績が二番になっちゃったじゃない!運動だって、私が女子のなかで一番にできたのに!」

あんたなんか、せいぜい、透け透けになって

困ればいいわ!!」


「プール見学ってことはさ、泳げないって

ことっしょ?」


ふふーん、とユーコは勝ち誇った顔してた。


「ほら、やっぱり。

泳げないんだ」


地味子はばたばたしてた。



そんな時。


地味子が一旦、水のなかに潜って慌てふためいてから、水中に顔を出してみせたんだが、

ヤバかった。

色んな意味で。



「た、たす、助けて、シンちゃん... !」


俺とばちっと目が合って。


手招きするように、俺に手を振ってきたんだ。



俺のこと。


シンちゃんなんて呼ぶのは、

遠い昔に一緒に遊んだことのある

男友達だけだった。


お、おかしいな。


昔、一緒に遊んでた、マヒロは、俺が男だと

思い込んでいただけで、

女だったってことか?



ウィッグが外れて。


ショートカットの金髪美女が顔を出してた。


周りの連中が、こう騒いでた。


「おい、あれ、アイドルのマヒロじゃね!?」


「ほ、ほんとだ。そ、そっくりだし」


「こ、声も同じだよな!」


俺はとりあえず、プールに飛び込んだ。


子供時代。マヒロは


「俺、泳げないんだ。昔、海で溺れかけちゃってさ」と



話してくれたことを思い出してた。


「お、おい、大丈夫か!?」


「なんとか。それにしても、

姫だっことか照れるな」


その後。


水から出たマヒロに、林ユーコは平謝りしてた。


「ごめんねぇ。わざとじゃないの。

わざとじゃない!」


「でさー、私ね、将来、モデルかアイドルになりたくてぇ。事務所の社長に口聞いてもらえないかな??おねがいよぉ」


マヒロは、


「それはできないなぁ。

私はアイドルじゃないし」


「頑張って、オーディション端から受ければいいじゃん?」


最もな正論だった。


でもな、林ユーコは


「受けたのぉ!でも、なかなか受かんなくてぇ!」と涙目だった。


顔はそこそこ可愛いが、

性格最悪の林ユーコ。


おそらくだけど、面接官に、

そのガラの悪さ、見抜かれているんだと思う。


マヒロは自身をアイドルじゃないわ、

と終始すっとぼけてたけど、

こんな大騒ぎのあと。


「正体がバレちゃったから転校しなきゃ」


と俺に言って、

転校しちまった。


マヒロとはこれでさよならか、と

思ったのだが。


でもな。転校後に、

とあるお洒落な喫茶店に呼び出された俺。


そこで、



俺はマヒロにこう脅されていたんだ。



「私のスカートの中、モロに見たんだから

責任とって、付き合えよな」


「え、バレてたの?」


俺はアイスコーヒーを吹き出しそうになった。



「流石に、あれだけ、突風が吹けば、

見えてあたりまえだろ?」


「しかも、おまえ、顔真っ赤になってたし。

目撃してしまいました、と言っているような

もんだったぞ」


「俺の勝負ショーツを見てしまったわけだから。覚悟決めて、交際しろよ」


「や、やっぱりあれ、勝負系の下着だったわけだな。れ、レース使いの赤いショーツ...」


「派手派手だった」


俺は一呼吸おいて、言い返した。


「いやでもさ、アイドルは恋愛禁止だろ?

世間にバレたら、バッシングの嵐に見舞われるだろ、絶対!それはダメなやつだろ、

誰がどう考えたってさ」


「いや、バレなきゃいいし。

バレたらバレたで、そのときはそのときだ」


ほんっとうに、男っぽい性格だった。


そんなことを言われ、交際を余儀なくされた感がある。



マヒロ転校後。

現在、

俺らは事務所に内緒で細心の注意をはらい、付き合ってる。


ある日のデート中。

地味子にばけてるマヒロとこんな会話をした。


「それにしても、だな。今日も派手なショーツ履いてんのか??」



「うん、まぁね」


「もう少ししたら、私の部屋で

上下見せてあげるからね」




「あ、いや、まだ俺ら高校生だしさすがにそれは、はやくね?」


「なーによ、男のくせに意気地無しね!

昔からぜんっぜん変わってないね!

もっと、グイグイきなさいよっ!」


バシーンとマヒロに背中をたたかれた俺。



マヒロはアイドルになっちまったけど。

男っぽさは昔のまんまだと俺はこのとき思ったのでした。


「ほら、あの新しくできたおしゃれな喫茶店入るよ!なんか、フルーツのジャンボパフェが

美味しいらしいの!一緒に食べよう」


「いや、俺、甘いものは苦手でだな...」



「カップルしかたのめない限定のパフェなの!

ほら、奢ってあげるから!」


「お、おうわかった」


俺はマヒロに完全に尻に敷かれた状態で

パパラッチに怯えつつ、こんな感じで交際してるのでした。

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陰キャ地味子のスカートの中をガン見してしまったんだが、派手な赤いパンティーだった→あとで彼女が実は俺の幼馴染だと判明するんだが、更に国民的アイドルになって帰ってきた件 雲川はるさめ @yukibounokeitai

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