竜の涙

 竜には友人がいた。


 鋼のように頑丈な、疲れを知らぬ翼の小鳥。友はオオワシ、小鳥は不服だったが。竜にとっては、小鳥であった。


 ある日友は寿命で死んだ。竜は涙し、大粒が友の身体全てを包み、彼は生き返った。


 竜は、自分の涙に蘇生の力があると知った。


 ──このような力があれば、友が死ぬたび同じ事を繰り返す。翼が折れ、飛べなくなれど、死を打ち消す。


 竜は去った。友は余分に生き永らえて一人、空を翔ける。 


 おれがいつか飛べなくなっても。お前には褪せない翼がある。広い背がある。竜をとまり木に空を永久に翔けられたら、どれだけ良かったか知れないのに──。




 Twitter300字ss第五十一回お題……「涙」(本文264文字)

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