霧と妖精

 夜の霧、森を包んでミルク色。まだ陽の照らしきらない場所でモヤモヤモヤモヤ雲みたい。中はゆうらり影だけで。全然見えんよ森の中。しばしまたれい森の外。朝日が昇って世界を照らし、溶けるように霧薄らいで。霧の重たさ振り捨てて、朝日燦々さんさん草の葉背伸び。花のツボミで、葉っぱのベッドで。スヤスヤ寝息の妖精たちも、あくび混じりに起き上がり、草花のほどの背筋をピンと、伸び一つ。


 ──さあてお仕事行きますか。

 ──夜の霧は眠ってしまった。

 ──昼の番は僕達さ。


 口々に言葉を交わし、妖精たちが森に散る。


 ここは迷いの森。夜は霧が阻み、昼は妖精が迷へ誘う。深い深い、新緑の森。




  Twitter300字ss第四十九回お題より……「灯り」(本文279字)

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