第187話 右腕パワーアップ!
〜〜タケル視点〜〜
右側が軽いな。
腕が無くなるとはこういうことか。
俺は右肩からゴッソリ無くなった腕のことをみんなに話した。
「ブラフーマ様に聞いたんだ。アスラの命は大陸10個分の価値があるらしい」
僧侶リリーは泣きながら頷いた。
「それがタケルさんの右腕だったんですね……」
「普通の右腕では無理だった。だから
妻達の嗚咽は部屋中に響いた。
ガネンジャ様も涙する。
「ダゲルッゥウウウ〜〜。仲間を助ける為に自分の腕を犠牲にするなんて、なんて意地らしい男なんだぁああああ!! オラは涙が止まらねぇだぁああああ!!」
アスラを一瞥すると、彼は奥歯を噛んで目を逸らした。
◇◇◇◇
ーー広場ーー
「ブラフーマ様、こんな所で何をするんですか?」
「なぁに、オラからの餞別だぁよ。
その言葉と同時。空から無数の鉄屑が降ってくる。それが俺の肩へと集まり、次第に腕の形と成った。
「おお!! これは!!」
右腕が動く!!
やや見た目がイカツイが、それを除けば、問題ないぞ。
右腕が復活した!!
「これで不自由はないだぁよ。オラの命が続く限り、その腕は力を発揮する」
とういうことは──。
「この右腕にはガネンジャ様の力が宿っているんですか?」
「んだ。おめぇさんの肉体が朽ちても、その右腕だけは100億年以上その姿を保ち続けるだぁよ」
凄い腕だな。
心なし力が湧いてくるようにも思える。
俺がブンブンとその腕を振り回すと広場には突風が巻き起こった。
「「「 きゃぁあああああああああああッ!! 」」」
風は女子達のスカートを捲れ上がらせた。
女達は真っ赤な顔でスカートを抑える。
しまった。
まさかここまで威力があるとは。
軽く降っただけで突風が生まれてしまった。
「だはぁあああ!! でかしたタケルゥウ!! 目の保養だぁああああ!!」
社長のゴリゴスは、その大きな手で勇者グレンの顔を覆った。
「急に暗くなったぁああああ!!」
「見たらダメでごんす」
それにしてもこの腕……。
相当パワーアップしているかもしれん。
ガネンジャ様は、いつの間にか大きな岩を持ち上げてたい。
10メートルはあるだろう。下敷きになればみんなぺちゃんこだ。
「その腕の力を試したいでよ?」
その通りだ。
もうその岩をどこから持って来たのかとか気にならない。
「お願いします!」
「うんじゃ、いくだぁよ! ホレェエ!!」
大きな岩が俺に落ちる。
本来ならば
それを通常の腕で──。
殴る。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!
大岩は大破。
みんなは目を見開いた。
その光景に言葉が出ない。
僧侶リリーはやっとの思いで唾を飲み込んだ。
「パ……パワーアップしちゃいましたね……」
「ああ、そのようだな」
どうやら、神腕を使っていなくとも神腕程度の力は出せるらしい。
それに感覚も繋がっているようだ。握った感触も何もかもわかる。
「ガネンジャ様、ありがとうございます」
「うんうん。仲間の為に腕を犠牲にしたおめぇさんが不憫だでよ。こんくらいはさせてくんろ」
リリーは安堵のため息をつく。
「ああ……。ちょっと残念かもです」
「なんの話だ?」
「タケルさんの右腕が無くなったら、普段の生活に補助が必要だと思ったんです」
「いや、左があるからとくに必要はないぞ?」
「無理しちゃダメです!! おトイレに行った時、誰がお尻を拭くんですか!?」
「だから左がある」
「きっとみんなが拭きたがると思うんですよね。だからクジを作って妻達でシフトを組んでフォローしようと思っていました」
「聞いているか? 左があるんだ」
ママジャン王国の姫マーリアは顔を赤らめた。
「マーリアはタケル様の、お、お尻を拭きたいです。きゃっ! 言っちゃった!!」
いや……。なんでそうなるんだ。
気がつけば俺の尻を誰が先に拭くかという話題で盛り上がっていた。
やれやれ、右腕がパワーアップして本当に良かったな……。
ふと、アスラを見ると、つまらなさそうに腕を組んでいた。
俺と目が合うと、また奥歯を噛む。
「チッ……!!」
ふふ……。アスラらしい。
俺も何かを求めて助けた訳じゃないからな。
でも、俺の右腕のことはアイツにとって重荷になるかもしれんな。
「アスラ。気にするな。右腕は以前よりパワーアップした」
「くッ!! ………………れ、礼なんか言わんぞ! 俺は頼んでなかったんだ!!」
リリーは頬を膨らます。
「アスラさんそれはないんじゃないですか!? タケルさんは右腕を犠牲にしてまで、仲間であるあなたを助けたんですよ!!」
「誰が仲間だ!! ふざけるな!!」
アスラの一括に場は静まり返る。
やれやれ、テラスネークの攻撃から俺達の命を救ってくれたのにな。
素直じゃない奴だ。
アスラは
「この亜空間は
彼が両手を広げると、それに連動して空間が開く。
その先には元の世界が広がる。どの場所かはわからないが、緑の森が広がっていた。
「アスラ、どこへ行く?」
「帰るんだよアスラ城に!!」
「空天秤の話をしたい」
「ふざけるな!! 俺が聞く理由はない!!」
「空天秤を止められるのは俺達だけだ……」
「ふん! 俺は生きたいように生きる! 誰のさしずも受けん!!」
アスラは
コイツはロメルトリア大陸の侵略を続けるのだろうか?
「アスラ……もう、人は殺すな」
彼は顔をゆがめた。
「チィッ!! 何様だ貴様はぁ!! 俺に命令するな!!」
「命令なんかじゃない。頼んでいるだけだ」
「ふん! 同じことだ!! それにな。神の子は人間の敵だ。生まれた時から人間を殺すことになってんだよ!!」
悲しいな。
ただそう思う。
「そんな運命に従うな」
アスラは舌打ちをして後ろを向いた。
その先には元の世界が広がる。
アスラ、お前はどうして俺達を助けたんだ?
あの時の言葉がお前の本心なんだろう?
涙をながしながら言っていたじゃないか。
『ヤンディとかさ…………。俺の仲間…………。護ってやってくれよ』
奴隷なんて言葉は使わなかった。
「アスラ…………」
俺はアスラを呼び止めた。
「 お 前 は い い 奴 だ 」
アスラはハッとして立ち止まった。
その首筋は真っ赤になる。
「ふざけんなッ!!」
その言葉を最後に、アスラ達は元の世界へと帰っていった。
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