第165話 テラスネークの狙い

テラスネークは神樹に捕まっていた人達を殺し、俺達の仲間を人質に取った。

アスラも俺も戸惑いを隠せない。


「どうしてこんなことを!? お前の目的はなんだ!?」


『私の目的はアスラと同じです。人間を奴隷にして自分の世界を作ること』


「蛇の分際で俺と同じ野望だと!? ふざけやがって!!」


『ククク。蛇の世界が今日から始まるのです!!』


初めから、俺達を騙していたのか……。

良い仲間だと思っていたが……。


悔しい気持ちより、悲しい気持ちの方が勝った。

それほどに、彼女とはいい記憶しかないのだ。


「テラスネーク。アーキバの子供達が悲しむぞ。優しいお前だったのに」


俺の意見に僧侶リリーは同調した。


「テラスネークさん、嘘と言ってください! 私達と女子会をした貴女は、とても優しくて面白くて、魅力的な女性でした!!」


『ククク。あんなものは偽り。お前達を騙すためにやったこと。本当の私は、人間の命なんてこれっぽっちも大事には思っていない。奴隷として利用することしか考えていないのさ!!』


つまり、アブラマンダラの呪印が解けた時から、瞬時に嘘をつき始め、この計画を立てたのか……。

えらく用意周到だな。

一体どこからが嘘なのだろうか?


「500年前に存在した最強の夫婦も嘘なのか?」


『半分は嘘です。夫婦はいた。ただし私の部下としてですがね』



最強の夫婦は人間だが、同じ人間を奴隷にして、世界を征服しようとしていた。

そんな夫婦が部下ということは、つまり、500年前からテラスネークは人間の敵ということか。


『私達は人間を奴隷にしたかった。しかし、対抗する人間は聖騎士の軍団を作ってね。意外にも厄介だった。だから、神の武器を求めたのです。神の創時器デュオフーバと聖剣クサナギがあれば私達は無敵だった。しかし、私はミスをした。欲張って最後の武器を手に入れようとしてしまったのだ。だから、3人の神の子を集める試練を、私と夫婦の3人でやってしまった。夫婦は人間。故に最後の武器は手に入らなかった。しかも、嘘をついた私は罰が当たり石化されてしまったのです。それから500年、石のまま。馬鹿な呪術士アブラマンダラが私の石化を解くまではね!』


これが真実か。

アブラマンダラの呪いは俺が解いた。その間にテラスネークは察していたのか。

俺とアスラには勝てないことを。

だから、最後の武器を手に入れる計画を立てたんだ。


『アブラマンダラは、私が持つ神のカリスマの力を使って信者を集め国を作った。随分と利用されましたけどね。おかげでアスラとタケルの強さがわかりましたよ』


テラスネークは不気味な笑みを浮かべた。


『さぁ、私を選びなさい。最後の武器を持つ者に』


「だ、誰が貴様なんかを選ぶもんか!!」


アスラの反抗と同時に心の城ハートキャッスルからは呻き声が響く。

分体が締め上げる力を強めたのだ。


「ギャァァァア!! ぐ、苦しい」

「ア、アズラざまぁあああッ!!」


テラスネークは不敵な笑みを見せた。


『ククク。あなたの大切な奴隷を殺してもいいのですか?』


「グ…………ッ!!」


『それにね。貴方が私を選ばなくてもタケルが私を選ぶのです。そうしないとタケルの仲間達が殺されるのですからねぇ』


「タ、タケル! テラスネークを選ぶな! この試練は不成立だ! 2人でコイツを殺すんだ!」


「…………」


『ククク……。無駄ですよアスラ。答えは決まっている。タケルは私を選ぶ。私を殺しに来れば、当然、人質は死ぬ。人質を助けようとしても、私はそれをいち早く察知して人質を殺す。どうあがいても人質の命はない。私を選ぶしか選択肢がないのですよぉおお!!』


やれやれ。500年生きてきたのは伊達じゃないな。相当に頭が切れる。

彼女の言うとおりだ。


「アスラ……。俺はテラスネークを選ぶ」


「ふざけるなよタケル! この蛇はお前を裏切ったんだぞ!!」


「しかし、まずは武器を手に入れることが肝心だ。この機会を逃せば、次は100年後になってしまう」


「ングゥッ! し、しかし!!」


「テラスネークに武器が渡っても終わりではない。お前には神の創時器デュオフーバ。俺には心の城ハートキャッスルがある」


『アハハ! 最後の武器は最強の力を持っています!! あなた達が束になっても勝てはしない!!』


「なら約束しろ。お前を選べば人質は解放すると」


『フフフ。いいですよ。ちっぽけな人間の命などに興味はありませんから』


俺は大きな声を張り上げた。


「よし。ならばその最強の力をお前にやろう。俺は……。タケル・ゼウサードは、テラスネークを指名する!」


その宣言と共に俺の頭上には【テラスネーク】という文字が浮かび上がった。


『ホホホ。当然、私は私を選びます』


その頭上には【テラスネーク】と浮かび上がる。


残りはアスラだけである。

彼の頭上には本人が宣言したとおり、【アスラ・シュラガン】の名前が浮かんでいた。


「アスラ。お前の仲間を助ける為だ」


アスラは項垂れた。

その拳は怒りで震える。

心の城ハートキャッスルから、アスラの仲間達が助けを求める声が聞こえた。その瞬間、アスラの拳は更に力が入る。



「お、俺は……。アスラ・シュラガンは……。テラスネークを選ぶ」



管理人ゼノは声を張り上げた。



『最後の武器はテラスネークに授ける!!』



突然の地響き。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


辺りは暗い闇に包まれた。

今までの神様とは雰囲気が違う。

三角の点を結ぶように配置されていた俺達。その中央部分から光りの柱が立ち上る。


次第に光りは大きな人の形になった。



「ふぅ……」あれが破壊神、シバか……。

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