第164話 神の子の存在
テラスネークの分体はアスラが取った人質の方へと向かう。分体には
分体が人質を助ければアスラに3つ目の武器を渡すことはない。
アスラは念を押した。
「タケル、テラスネーク。最後の武器は俺の物だ! いいな!」
ゼノは俺達に指示を出して誘導。地下への入り口を中央にして、三角の点を結ぶように配置した。
「条件は揃った。さぁ3人の神の子らよ。最後の武器を持つ者を決めるのだ」
アスラは勝ち誇ったように笑う。
「最後の武器は俺が所持する!」
それは宣言と同時。
アスラの頭上には【アスラ・シュラガン】の名前が浮かび上がり、淡い光りを発した。
テラスネークの分体はまだ人質を助けていない。
さて、少し時間を稼ごうか。
「ゼノ。これは神の子でなくても、俺達が指定すれば、その者が神の武器を持つことになるのか?」
『そうだ。3人の神の子を集めるのは試練にすぎない。武器の所持者は自由に決めれる』
なるほど……。500年前にテラスネークが人間と戦った話と条件は同じだな。その時、人間である最強の夫婦は神の武器を所持していた。
思い返せば、
つまり、誰でも神の武器を所持できるんだ。
そうなると、俺達、神の子の存在がわからなくなる。
「ゼノ。神の子とはこの最後の武器を所持するのに必要な条件に過ぎないのか?」
アスラは苛ついた。
「いい加減にしろタケル!! そんな話しは俺が最後の武器を所持してからにしろ!!」
「……お前が武器を手にしたら、俺に会話をする時間は生まれない」
「フン……。俺が最強になればそれくらいの猶予はやる」
「少しくらい待て。お前だって俺達の存在意義を知りたいだろう?」
「……………フン。俺達は最強だ。人間を超越した存在。ただそれだけだ」
俺もそう思っていた。
しかし、どうも違和感がある。
どうして俺達、神の子をこの世界に存在させたのか。
ゼノは無表情ながら、少し呆れた空気を出した。
『タケル・ゼウサード。そんなこともわからないのか』
「そんなことだと? どういう意味だ?」
『お前達、神の子は潜在意識の中に組み込まれているはずだ──』
ゼノの言葉に場が凍る。
妻達を含めた、俺の仲間は額から流れ出る汗が止まらなかった。
『人間を殺せと』
俺が言葉を詰まらせる中、アスラは歓喜した。
「ハハッ!! そうか! ハハハ!! 俺の考えは間違っていなかった!! 人間なんか掃除しちまえばいいんだ!!」
ゼノはその言葉に同調した。
『神の武器は人間を殺す物。そして、神の子は人間を殺す者だ。心の底から湧いて来ないか? 人間を殺したい欲求が』
やれやれ……。とんでもない秘密だな。
しかし、これでアスラの殺戮衝動も理解できる。
でも俺は──。
みんなは俺の言葉に注目した。
「ラッキーだったのかもしれない。優しい父さんと母さんに育てられた」
その影響なのだ。
俺はお茶が好きなのんびり屋で、人間が好きだ。例え、潜在意識の中に恐ろしい心が隠れていたとしても、優しい父さんと母さんがその心を抑えてくれた。母さんが殺された時、俺は山賊を殺さなかった。あの時から、俺は変わったんだ。
仲間達は口々に大きな声を張り上げる。
「タケルさんは優しいんです!! 人間を殺したいなんて思いません!!」
「タケル様は大勢の人間を助けてきました! これからも永遠にその行動は続くんです!!」
「師匠は人間の味方ある!!」
「タケルはぜにまっこといい男ぜよ! 人間の敵なんかじゃないっちゃ!!」
俺だけじゃない。
彼女だって──。
「テラスネークだって、人間の味方だよな」
彼女はコクリと頷いた。
『ええそうです。私は人間の味方です』
丁度その時、テラスネークの分体がアスラの取った人質の元へと辿り着いた。
よし!
分体が人質を助ければアスラの要求は通らない!
ゼノは呟く。
『お前は本当に珍しい存在だ……。神の子が、人間の味方とはな』
俺は笑う。
「そうでもないさ。俺だけじゃない。あのテラスネークだって人間の味方なんだ」
ゼノは首を傾げた。
『…………タケル・ゼウサード。本気で言っているのか?』
「何!? どういう意味だ!?」
刹那。
叫び声が聞こえる。
「「「 ギャァァァアアアアアアッ!! 」」」
それは100メートル先。アスラが作った神樹の球体から聞こえた。
スキル
球体の格子状の入り口から、大量の血が流れ出ていた。逃げようとしたのだろう。格子の隙間から伸びる手は、爪が剥がれ血だらけだった。
どういう事だ!?
「テラスネーク!?」
テラスネークはニヤリと笑う。
『ククク……。私が人間の味方だと……。ククク。笑わせるな』
突如、仲間達から悲鳴が上がる。
見ると、テラスネークの分体達がみんなの体に絡まって身動きを封じていた。
「なんちゃぁ! テラスネークゥウウ!! どういうことぜよぉ!?」
「きゃあああ!! テラスネークさん、どうしてこんなことするんですか!?」
「師匠、助けて欲しいあるっぅうう!!」
「化け蛇がぁあ! ざけんなよゴラァ!!」
「タケルどん! おいどんも蛇に捕まってしまったでごんすぅうう!!」
テラスネーク……どういうつもりだ?
突然、
急いでそこから
テラスネークは城内に分体を侵入させていた。
驚くことに、アスラの仲間まで分体で捕まえていたのだった。
賢者の女は泣き叫ぶ。
「アスラ様ぁああああああ!!」
「この化け蛇めぇ! あちきをどうするでありんすかぁ!!」
美食ギルドのグウネルは黙り、中年の男は泣き叫ぶ。
「アスラ様ぁああ! お助けくださいぃいいいい!!」
本来ならば
アスラは
「クソ! 城の中だと力を吸えない!」
……分体に
テラスネークは俺の思考を見越したように笑う。
『タケル。城を解除しないでくださいね。そんなことをすればアスラの
用意周到だな。
想像もしたくないが、これは彼女の裏切りか……。
「テラスネーク……。お前は、初めからこれを狙っていたのか?」
彼女はおぞましい笑みを浮かべた。
「ククク……。アスラが人質を取った時はヒヤヒヤしたが、結果的には上手くいった。やっとチャンスが巡ってきたわ。500年は長かったぞ」
やれやれ。俺達は騙されていたのか。
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