第151話 アスラと対面
俺はママジャン王国でも、スタット王国と同じように演説した。勿論、ロジャースに応援演説をやってもらう。
演説の最後は盛り上がり、タケル・ゼウサード万歳で締め括った。
その調子でデイイーアの街でも演説を実施する。
そうしているうちに俺の支持者は50万人を超えた。
さて、次は支持者の移動であるが、アリアーグの状態はどうなのだろうか?
場所の確保は必須である。
俺は神速を使ってアスラ軍に隠れて様子を見に行くことにした。
◇◇◇◇
ーーアリアーグーー
その周囲にはアスラ軍の兵士が群れを成して囲んでいた。街の中にも兵士は入りこみごった返す。まるで家に巣食う白蟻のようである。
やれやれ。とんでもない人数だな。
遠くに見える山脈からは、追加の兵士がゾロゾロと行進してこちらに向かって来る。
壇上に立つアスラは奴隷兵士に向かって演説をしていた。
やり方は俺と同じ。周囲に魔法使いを配置して、顔を空中に映し、声を増幅させる。
「お前達が俺の奴隷兵士である限り、心の平穏と不自由のない暮らしを提供しよう!」
あのアスラが演説するなんてな。
おそらく奴は神のカリスマで勝つことにこだわっている。
その証拠に演説の文言はやけに練られていた。奴も相当に考えているようだ。
神のカリスマで勝利して2つ目の武器を獲得し、俺を殺す。それがアスラの理想なのだろう。
俺はアリアーグの近くに平地を見つけ、そこにアスラ軍が来ないことを確認すると、アーキバに戻った。
◇◇◇◇
ーーアリアーグ平地ーー
俺は支持してくれる50万人の兵士を配置する。
その全てをユユの転移魔法で移動させた。彼女は汗だくで舌を出して倒れる。
「も、もう疲れだぁあ〜〜」
そんなユユを僧侶リリーが介抱する。キンキンに冷えたオレンジジュースを渡していた。
リリーを含め、8人の妻達はこの場所に付いてきている。危険だから止めたのだが、俺のことが心配なようで、どうしても言うことを聞かない。
魔拳士アンロンは遠くの丘を指差した。
「師匠! あそこに男が立っているある!」
アスラである。
奴は腕を組み、俺が集めた兵士達を見つめていた。口角を上げ、余裕の表情を見せる。
「なんちゃぁ! もう見つかってしもうたたがか! 神のカリスマはまだ始まらんのか、タケル!?」
「ああ。ゼノは昨日と同じ時間と言っていたからな。アスラが
「戦うしか道はないぜよ!」
場にいるみんなは震え上がり、虎逢真は身構えた。俺は不敵に笑う。
「いや、まだ戦闘はないさ。奴は待つ」
「ま、待つって神のカリスマが始まるまでか? なんでそんなことが、おんしにわかるがか?」
確かめてみよう。
俺は飛び上がりアスラの目の前へと着地した。
「よぉ」
「フン……。友達みたいに気軽に話しかけるな。貴様、殺されに来たのか?」
「……喉の調子はどうだ?」
「……フン」
アスラはつまらなさそうに笑うと、俺が集めた兵士達を眺めた。
「城兵の身分でどうやってあれほどの人数を揃えたかは知らんが、貴様も随分と声を出したようだな」
「まぁな」
「本来ならば
これを聞いた虎逢真達は安心する。
アスラは完全に神のカリスマで戦うつもりだった。
アスラは、軽い気持ちで演説を始めたかもしれない。他者の気持ちを汲み取るなんて、奴にとっては苦痛だろう。だから、始めはなんとなく、神のカリスマの数値を上げる為に、簡易的に演説を始めたんだ。でも最中に目覚めた。
"ここまでやるなら、この勝負に勝ちたい!"
これは賭けだったが上手くいった。奴がそこに無頓着なら俺の集めた兵士達に攻撃を加えたり、俺達を
アスラにとって俺は最強の敵。そんな存在を完膚なきまでに叩き潰すのが奴の理想なんだ。
アスラは俺が集めた兵士達を見つめる。
「あの数……。クク……。もう勝負せずとも勝ちは見えているな。お前が集めた兵士より、俺の集めた奴隷兵士の方が圧倒的に多いぞ」
「そう簡単にはいかないさ。この勝負は数じゃない。どれだけ愛され、信頼されているかなんだ」
「俺は魔王になる男だ。必ず選ばれる」
「魔王なんてこの世に必要ないさ」
アスラは自軍の元へと戻り、大声を上げて兵士達を鼓舞した。
「神の武器を手に入れるのは、この俺だ!!」
それを加勢するように賢者の女の怒号が響く。
「てめぇらはアスラ様の奴隷なんだ! アスラ様がいるから生きていられる! アスラ様を心から想えば一生安泰だ! アスラ様が全て! アスラ様こそこの世のルールなんだぁああ!!」
同調して兵士達は叫ぶ。それは盲信的で、何かの宗教のようにも思えた。
あそこまでやるということは、もう確実だが、勝敗が不確定なのだろう。
アスラ達は地下に入れなかったんだ。
もしも入れるなら、今頃は、地下を支持者達で埋め尽くして俺の支持者は入れないようにしているはずだ。
教会の地下はどうなっているのだろう。確かめてみよう。
アリアーグの中央に位置する教会へ行くと、建物は無くなって、地面には四角い大きな扉があるだけだった。それは地下へと続く螺旋階段のある部屋を隠す扉だった。
昨日入った時はあの扉を開けたのだが、今は青いオーラで包まれている。バチバチと稲光りを発しており、ハエが近づくと焦げて焼け落ちた。
「やはりな……」
青いオーラがバリアとなって、扉を触れないようになっている。
時間は昼を過ぎ、地下へと続く扉が開いた。管理人のゼノがゆっくりと空を飛び
浮いて出てきた。そのまま宙に上がる。彼が周囲を見渡すと、テラスネークのように心の声で呼びかけてきた。
『神の武器を欲する者達よ。集え』
俺達とアスラ達はゼノの元へと集まった。
『さぁ、試練の始まりだ』
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