第149話  神の武器争奪戦



ーースタット王国ーー




スタット城、王の間。



「何!? 魔神アスラと神の武器の争奪戦じゃと!?」



俺の妻であるスタット国王のサレンサは目を見開いた。


「込み入った話しは兵士達がいるとやり辛い。別室に行こう」


別室に通された俺とユユは、兵士達のいない部屋にて3人だけになる。


サレンサは俺に抱きついた。


「まずはお帰りなさいなのじゃぁああ〜〜!!」


ユユは目を瞬かせた。


「あ、あ、あのう……。どういうこと?? 国王様が城兵に抱きついてるんだけど??」


「ああユユ。少し言うのを忘れていたんだがな。彼女は俺の妻なんだ」


「え!? こ、国王が城兵の妻??」


部屋の扉がバタンと開いて、次々と美少女が入って来る。


「タケル様! お帰りなさいませ!」

「タケル! 無事で良かった!」

「師匠おかえりなさいある!!」


続いてバルバ伍長、キャンドル職人アイカ、魔法使いレイーラと続く。

みんなは俺に抱きついて無事に帰って来たことを喜んだ。

別室は美女の香りで埋め尽くされる。

まるでお花畑にでも来たように良い香りが充満した。


その光景に、ユユは顔を赤らめて呆然とした。


「タ、タケルーー。この綺麗な人達はーー??」


「ああ、すまない。彼女達は全員。俺の妻なんだ」


「リ、リリーだけじゃなかったんだ……」


俺は転移魔法使いユユをみんなに紹介すると、アスラとの戦いを一部始終話した。




「それは大変じゃな! そうなるとスタット王国の兵団30万人をアリアーグへと向かわせよう」


兵の数は問題ではなかったりする。


「その兵士達が俺のことをどれだけ想ってくれているかだな」


「安心せぇ! 城内だけの秘密とはいえ、タケルは私の旦那様なのじゃ! タケルへの信頼は愛国心と等しいわい。みながワシのことを想うように、タケルのことも慕っておるわい」


「いや、流石にサレンサ国王と俺の信頼度は同じではないぞ。俺は一介の城兵にすぎん」


「謙遜するな! タケルは素敵な人間じゃあ!! みんなはタケルのことが大好きじゃぞ」


「そう思ってくれるのはありがたいがな。今回は表面上で支持してくれても無意味なんだ」


あのゼノの力に小細工は効かない。

きっと見抜かれる。だから心の底から、俺を信頼してくれないとダメなんだ。


「ではどうすれば良いのじゃ?」


バルバ伍長が不敵に笑う。


「なーーに。タケルの人徳は既に城内に広がりつつある。30万人の兵士達の憧れの的だろう」


「なぜだ? なぜそんな噂が広がっているんだ?」


「お前はデイイーアの大火災を鎮火させた立役者だぞ。ワーウルフ討伐で危機にあった第二兵団小隊を救い、サレンサ国王のハートまで射止めた。そして、この私もな! もはや伝説級の事件ばかりだ。英雄と言っても過言ではない。そんな男が城兵達の噂にならん訳はなかろう」


うーーむ。

デイイーアとワーウルフの件は、まぁいいとして、サレンサとバルバを娶った件は世間に胸を張り辛いな。

嫁自慢は他人にすることではないだろう。


やはり、直接話すのがいいだろうな。


「よし。では、その30万人の兵士の前で演説をしようか」


「うむ。流石はワシの旦那様じゃ。そんな大きな事を臆せずに言う。また惚れてしまうわい」


世界の危機だからな。

俺のことを推してもらわないと、アスラに2つ目の武器を獲られてしまう。30万人の多さに尻込みしている場合ではないのだ。


「しかしタケル。30万人の兵士を一箇所に集めるのは少々骨が折れるぞ。もうすぐ夕方じゃ。演説は明日の朝からでも良いかの?」


確かにそうだ。

大勢の移動や場所取りは相当に時間を食う。


「手間をかけさせてすまないな。頼む」


サレンサは顔を赤らめた。


「な、何を言う! ワシはお前の妻なのじゃぞ。タケルの為になるのならなんでもやる!! 気にせずドンドン要求せえ!!」


バルバ伍長は眉を上げた。


「よし! ではその演説にロジャース達、第二兵団小隊を加えてやろう。応援演説というやつだ。タケル1人より効果的だろう」


「うむ。助かる」


さて、スタット王国の兵団30万人がどれほど俺を慕ってくれるかは未知数だ。全員が盲信的に俺を信頼してくれるはずもない。これはアスラ軍にも言えるはずだ。しかし、アスラはロメルトリア大陸をほとんど制圧している。奴隷の数は圧倒的に多いだろう。一体、どれほどの人数をアリアーグに連れて来るのだろうか?


ママジャン王国の姫、アーリアは俺の手を取った。


「タケル様。人手が必要なら私にもおっしゃってください。ママジャン王国はタケル様に救っていただいたのですから」


数ヶ月前、俺はママジャン王国の負債を返済したことがあった。あの時はキャビアとクジラを売ったんだったな。


世界の危機が迫っているんだ。

ママジャン国王にも協力を頼もう。


「よし。マーリア。一緒にママジャンへ行こう」


俺とユユはマーリアを連れて転移魔法陣を使ってママジャン王国へと移動した。


ママジャン王国はアスラ軍の進行を食い止める為、臨戦態勢であった。

しかし、大陸の離れにあるママジャンは、まだアスラ軍の攻撃をまともには受けていなかった。


事情を聞いた国王は2つ返事で協力してくれることとなる。

ママジャンからは20万人の兵士がアリアーグへと向かうことになった。


明日の朝には演説することにして、俺とマーリアとユユはデイイーアの街へと向かった。

この街は火事を鎮火させたり、火事の復興を手伝ったりと色々と縁がある。

街にはマーリアの像が立っているらしい。彼女の影響力も使って、協力を仰ごう。

時間は明日の昼過ぎまで。限界まで集めるとしよう。

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