第148話  ユユ大活躍!

〜〜タケル視点〜〜


ーーアーキバ城ーー


俺達は転移魔法使いユユのおかげで、アスラ達から逃げることができた。


ユユは、ゼノが作った転移魔法陣に重ねて俺達だけが移動できる転移魔法陣を作ったのだ。


「ユユが起点を利かせてくれたおかげでなんとか命が助かったよ。ありがとうな」


「ユユはタケルの空気を察しただけ。アスラの強さに何も考えられなかった〜〜」


「いやぁ、ユユはやっぱりおいの相棒ぜよ! 小さいけんど頼りんなるぅ!!」


「小さいは余計〜〜」


「にしても虎逢真。お前の演技は少し嘘臭かったぞ。アスラにバレやしないかと冷や冷やした」


「おっかしいのぉ。絶望感を掻き立てる名演技じゃと思ったがの〜〜」


「虎逢真のは迷うと書いて迷演技〜〜」


みんなは笑った。

僧侶リリーは俺の腕に回復魔法で施す。

アスラの神の創時器デュオフーバにやられた腕からは、痛々しくも血がボトボトと流れ出ていた。回復魔法が効き出すと、次第に腕は元に戻り、リリーはホッとため息をつく。


「良かったです。本気で……負けてしまうかと思いました」


額を俺の体にくっつける。

彼女には怖い思いをさせてしまった。


優しく頭を撫でる。


「リリー。心配させたな。すまん」


ユユはその姿を何度も見返してソワソワした。


「ユユもおいで」


「う……うん」


ユユは顔を赤らめて俺の体を抱きしめた。


「ユユもリリーもありがとう」


俺は2人の頭を優しく撫でる。

2人とも嬉しそうに笑うのだった。



『タケル。明日までに仲間を集めなさい』


城の窓から大きな瞳がこちらを覗く。


『2つ目の武器は必ずあなたが手に入れなければならないのです』


テラスネークの言うとおりだ。

今回は先の見えない未知の事象に逃げ道があった。次はそんな隙はないだろう。もしも、2つ目の武器をアスラに獲られてしまったら、本当に世界は終わってしまう。

なんとしても2つ目の武器を手に入れなければならない。


僧侶リリーが首を傾げる。


「神のカリスマってどうやったら増やすことができるんでしょうか?」


前回は4対3で負けてしまった。

今回はその数値をアスラ側より上回らなければならない。


数値を上げる方法は1つだけ。

他者に愛され、信頼されること。


つまり、大勢の仲間を集めればいい。

俺はしがない城兵だ。アスラのように兵士を持たない。そんな俺ができることといえば……。


「ユユ。大変だが、明日まで俺と一緒にあちこち回ってくれないか? お前の転移魔法が必要なんだ」


「え? 全然いいよーー。タケルと2人きりなんて……嬉し……。あ、いや、世界の危機だもん。ユユが頑張るのは当然〜〜」


「なんちゃあ、おまん、タケルと2人きりで行動できるんに喜んどるじゃないかぁ。世界の危機なんて二の次じゃろうがぁ」


「虎逢真は余計なこと言わないーー。ギルド長に毎晩お酒飲みまくってること言っちゃうよーー」


「な、なんでそうなるんじゃあ! 謝るから絶対にそんな事はやめてくれぇい!」


「酒癖の悪い相方の苦労をわかってない〜〜。ギルド長にお尻ペンペンしてもらお〜〜」


「悪かったきに! からかってすまん! 謝るから許してくれぇええ!」




アーキバ国王、オータクは腕を組み、一連の流れについて考え込んでいた。


「タケル。アスラはこのアーキバ国に攻めて来ないだろうか? お前がいる場所は粗方目星がついてる訳で、明日まで待たずとも今日攻め込まれてしまう可能性があるなりよ」


確かに一理ある。

俺が武器を手にするより、今殺した方が確実だ。

しかし、


「来ないだろうな」


「なぜなり?」


「俺がどこに潜んでいるかは、奴にとって不確定事項。探して見つからなかった時は疲れるだけだ。そんな労力をかけて探すより、確実な行動をとるだろう」


「確実な方法?」


「探さなくても明日になれば俺はアリアーグに現れる。俺が武器を手にする前に俺を倒せば済む事だ」


「ふむ……。確かに」


「だから今、奴はアリアーグ周辺の警備を固めているだろう。そして、アスラ軍の全兵士を集めているはずだ」


「全兵士を集める? なぜなり?」


「奴には余裕がある。力も人脈も。だから、俺を倒す選択肢があるんだ。なら、もう一度勝ちたいはずだ。神のカリスマで」


「なるほど。余裕のあるアスラなら、次の試練でも勝ち、2つ目の武器を手に入れて勝つ方を選ぶだろうな。その方が、ただ勝ってしまうより、格段に嬉しさが増す。徹底的に倒したいというアスラらしいやり口なりね。神のカリスマは数値化されるから、自分を崇拝する兵士達をアリアーグに集結させるわけか」


「そういうことだ」


厄介なのが、その数値の計上ルールだ。

あの空間に入る人数で判断されるのだろうか? そうなると勝ち目はない。今頃、あの地下はアスラ軍の奴隷兵士で埋め尽くされているだろう。


オータクは俺と同じ考えになっていた。


「タケル。その地下にアスラ軍の兵士達が詰め込まれて、お前の仲間が入れなかったらどうするんだ? お前を測る神のカリスマがゼロだと勝ち目は無いぞ」


「うむ……。今、俺もそれを考えていた。管理人ゼノは、あの地下は特別な場所だと言っていた。だから、そう簡単には人が入れない。つまり、明日まで閉ざされているんじゃないだろうか?」


あくまで推測だ。

しかし、そうしなければ早い者勝ちになってしまう。神が判断したいであろう、神のカリスマは不正で生まれる数値ではないはずだ。

ゼノのなんでも見通す不思議な力。あの緻密さは神がかっている。やはり、正確に神のカリスマを測るだろう。


きっとアスラもこの思考になっているはずだ。

だから、今やる事は……。



「明日までに仲間を集める」


『そうですタケル。急ぐべきは仲間を集めることです。あなたを慕う仲間を、できるだけ多く集めなさい』


やはりそうなると……。


このアーキバ城は元魔法銀行である。各国に資金を送金する転移魔法陣が設置されているのだ。


「タケルーー。あったよーー。スタット王国への転移魔法陣ーー」


俺はユユと共に転移魔法を使って祖国スタット王国へと移動した。

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