第141話 王になったオータク
そこは廃れた教会だった。
そこでオータクとロメルトリアの王女カナン姫は結婚した。
みんなに祝福される中、オータクは決意する。
「この街はこれから国と成る。アーキバ国だ。平和な国を作るなり!」
集まった100人ばかりの民衆から拍手が沸き起こる。
アーキバ国、オータク王誕生である。
俺はテラスネークに頼んで捕虜が住む穴を拡大させた。
捕虜達がオータクを認め、アスラから解き放たれた時、地上に上がりアーキバの国民となるのだ。
アーキバには城が無い。
よって、ある程度の人数が収容できて頑丈な魔法銀行が城の代わりになった。
ーーアーキバ城ーー
みんなで集まって会議。
今後の話を詰める。
現状は悪い。
アスラ軍はロメルトリアの半数以上を制圧し、アスラの生死はわからない。しかも、残党は残虐で、その数は多かった。
虎逢真は眉を寄せる。
「カンザサの森まで探索したが、アスラの遺体は見つからなかったぜよ。気になる洞穴があって、そこでは人が生活した跡が残っていたっちゃね」
洞穴で生活……。
そういえば、アスラの仲間。賢者の女がアスラを追って移動魔法を使っていたな。
おそらく、その女が傷ついたアスラを治して洞穴で数日過ごしたのだろう。
アスラは生きているのか……。
奴と戦えば、大きな被害が出てしまう。
圧倒的な力があれば被害を無くして勝つことができる。
……力が、欲しい。
『タケル。アリアーグにある神の武器を手に入れましょう』
魔法銀行の窓からテラスネークの大きな瞳がこちらを覗いていた。
「神の武器はそんなに強いのか?」
『神の武器は人類が持てる究極の武器。強くなった人類を制圧する為に、最上位の神によって作られたのです。それさえあればアスラなど恐るるに足りません』
人類を制圧する為に作られた武器……。
ふ……、それが人類を救う訳か。
「そんな武器が簡単に手に入るとは思えないな。手に入れる条件はなんだ?」
テラスネークはゆっくりと説明し始めた。
◇◇◇◇
〜〜アスラ・シュラガン視点〜〜
ーーアリアーグーー
人口20万人。
そこは岩山に囲まれた寂れた街である。
資源に乏しく、周囲の街から物資を輸入して成り立っていた。
アスラ軍は簡単に制圧した。
反対する民衆は殺害。賛同する者は奴隷となっていた。
俺は参謀達を連れて街の中央に位置する教会に来ていた。見た目はボロボロ。千人も入れば一杯の広さだった。
こんな場所に最強の武器が眠っているのか?
美食ギルドのグウネルが頭を下げる。
「ハンハーグさんの話しでは、この教会の地下にあるそうです」
地下に降る階段は教会の中央部分にあるという。俺は神樹操を使って教会の長椅子を外に出し、木の床をベリベリと剥がした。
大きな石の扉が現れる。
それを神樹で持ち上げて開くと、螺旋階段になっていた。そこの材質は僅かに青く光っており、灯りが無くとも足元が見える。
「アブラマンダラの城と同じ、発光鍾乳石だな。しかし、深い。先が見えんぞ」
螺旋階段の周囲は丁寧に装飾されており神聖な雰囲気があった。表に見えるボロボロの教会とは、明らかに様子が違う。
参謀達は冷や汗を垂らす。
ふん……。面白くなってきたな。
俺は神樹で参謀達を包み込み、一気に地下へと飛び降りた。
随分と深い。底まで何分かかるのか?
着地は地面から神樹を出して掴みとった。
そこは広い空間。5万人以上は収容できるだろう。発光鍾乳石の影響で常時明るく、昼なのか夜なのかわからない。相変わらず、壁には丁寧な装飾がされており、自然にできたモノではないことがわかった。
「随分と手がこんだ場所だな」
俺達はキョロキョロと辺りを見渡す。
突然聞こえる男の声。
「何をしに来た?」
見ると、目の前には30代くらいの男が立っていた。いつ来たのか、元からいたのかわからない。ただ、無表情に立つ。
壁と同じ装飾模様の服を着ており、肩から見える腕は筋肉質だった。服装から神官と思われるが、鍛えあげられた筋肉はとても祭事を行う者とは思えない。白髪で鋭い目をしていた。
こいつ、無表情の癖に殺気を放つな。
ふ……。面白くなってきた。
「お前こそ何者だ? 返答次第では命がないぞ」
男は眉一つ動かさず答えた。
「私は、ゼノ。この場所の管理人だ」
「そうか。なら話しが早い。神の武器をよこせ」
「……お前の全身から邪悪な力を感じる」
「ククク……。そうか、ありがとよ。褒め言葉だ。それでどうする。邪悪な者には武器は渡せないのか?」
ゼノと名乗る男は目を細めた。
「第1の試練だ。お前達に神の武器を持つ資格があるかを探る」
元公爵のハンハーグが言っていたな。
3つの試練があると。確か、資格、能力、神のカリスマだったな。
まずは資格か……。
ゼノの瞳は渦を巻いていた。
何か力を発動させて俺達を見ているようだ。
探ると言っていたな。
何を見ているのだろう?
ゼノは表情を変えず口を開いた。
「合格だ」
フン。呆気ないな。
試練が聞いて呆れる。
「俺は何もしていないが、もう終わりか? 何を探ったか知らんが時間の無駄だったな」
「資格が無い者に武器は授けられない」
「資格とはなんだ? 何を探った!?」
「お前達が神にとって、どの位置の存在なのかを調べた」
神にとっての位置だと?
「どういう意味だ?」
「お前は神の子だなアスラ・シュラガン」
「ほう……。人の名前がわかるなんて優秀な目を持っているじゃないか」
「名前だけではない。お前がどんな人生を歩み、この先どう生きるかもわかったぞ」
「それで合格なんて物分かりがいいな」
「神の武器は人間を弱体化させるのが目的だ。神の敵を作る為に授ける武器ではない」
「フン……では人間を殺しまくってやるから、さっさと武器をよこせ」
「そうはいかん。神の武器を手にするには3つの試練があるのだ。第1の試練は資格。お前の目的は人類を殺すことだ。資格は十分にある。次に進もう」
やれやれ。
「まどろっこしい。貴様を殺せば武器は手に入るのか?」
「私がいなければ永遠に神の武器は手に入らないぞ」
「フン……。ならさっさとやれ。すぐにでも片付けてやる」
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