第112話 アブラマンダラ

ーーアブラマンダラ城ーー


「ギャァァァアアアアアアアアッ!!」


兵士達は神樹槍に串刺しにされて倒れる。


俺達が進む跡には死体の山。

グウネルは震えながらも俺の跡に付いて来た。


「この城、中は明るいな」


「お、おそらくは発光鍾乳石の影響かと」


「ふーーん。お前、物知りだな」


城内は特殊な鍾乳石で青白く光り、不思議なお香の匂いが充満していた。


「さて、確か地下だったな。階段はどこにあるんだ?」


「そうですね。……物品の運搬や利便性を考えれば、城の入り口から正面状にあるでしょう」


「よし、進もう」


扉を2つ潜ると地下に続く、大きな階段が現れた。


うむ。こいつが言う通りに階段が見つかったな。広い城なので憶測であれ、理にかなった思考は重宝する。無闇に探せば、ロメルトリア城の二の舞だ。あの時は王に会うのに日が暮れてしまったからな。

やはりグウネルは使える!


階段付近には城兵がうじゃうじゃいて、それが一斉に攻撃してきた。


グウネルは悲鳴を上げる


「ヒャァァアッ!!」


「神樹防壁!」


俺は神樹の壁でそれをいなした。

細い矢の攻撃さえも神樹で絡め取り俺達には届かない。


「グウネル。安心しろ。お前は俺の奴隷なのだ。お前の体に傷なんかつけるものか」


「は、はい! さ、流石はアスラ様でございます」


城の1階だけで既に5千程の兵士を殺害した。城内の青白く光っていた壁は真っ赤に染まり、豪華か絨毯が敷かれた床には無数の死体が横たわる。


静かになった城内にガチガチと歯が当たる音が響く。


「なんだ、まだ震えてんのか?」


「こ、こんなに死体を見るのは初めてなのです」


「じきに慣れる。さぁ、地下に降りよう」



◇◇◇◇



城の2階からは大きな穴が空いていた。

直径20メートル程の縦穴。どうやら真下までズドンと吹き抜けて空いているようだ。

地下へはその穴沿いに階段が続いていた。


始めは階段を降りていたが、面倒なので、グウネルを神樹で包み込み、穴に飛び込んで落下した。


ヒューーーーーーーーーン!



ストン!



着地。


「やれやれ。なんの穴だこりゃ?」


「物品の移動をする為だと思いますが……」


「大き過ぎんか?」


「ですね? 空気穴にしても大き過ぎるし……。光りを取り込むにしても、城内の灯りは鍾乳石が出しますからね。城の真ん中に直径20メートルの穴……謎ですね」



最下層は地下30階まで続いていた。



「随分と深いな。地上から階段で、ここまで降りるのか? こんな城不便すぎるぞ」


「おそらく、市場やレストランなども多数あって、小さな町が1つ収納されている感じでございます。なので、主であるアブラマンダラはほとんど外には出ないのでしょう」


「外に出ない支配者とは怠け者だなぁ。しかし、こんな地下城、落盤で終わるな」


グウネルは青白く光る鍾乳石でできた城の柱を触った。


「相当硬く、粘り気のある鍾乳石です。これならば落盤の心配はありません。そういえば、アスラ様の樹を生やすスキルは鍾乳石でも可能なのですか?」


「ああ、大地に根差していればどこでも出現可能性だ。この神樹は地神の力を具現化してるだけにすぎん。一時的な実体であって、幻のようなモノだ」


「それは凄い。ならばもっと深く潜っても安心でございますね」


「もしかして、まだ地下が続いているのか? 面倒くさいな」


「どうでしょうね……」


目の前には立派な扉。

明らかに王の間である。


城兵達はうじゃうじゃと現れ、穴の上を見上げると、弓矢、魔法使いが攻撃の準備をしていた。

その数2万人以上。


「ア、アスラ様! こ、ここは広場になっています! 私達は格好の的!」


相手の攻撃が当たりやすいなら、こっちの攻撃も当たるって事だ。


「ああ、そっちのが手っ取り早くて良いよ。どうせ皆殺しだからな」



俺は冷ややかに笑った。



「一掃してやる」



俺の神樹は赤く染まった。



「ギャァァァアアッ!!」



最後の兵士が断末魔と共に倒れる。

2万の兵は全て俺の神樹槍の餌食となった。


俺は地神操作ガイアマキナ神樹槍を使って王の間の扉をぶち壊した。




ドパーーーーーーーーーーーーンッ!!



現れたのは大男。

立派な黄金でできた玉座に座る。

顔は俺の3倍、身体は4倍はあるだろうか。ブヨブヨの脂肪の塊。男なのに、紫のアイシャドウをタップリと付けていた。

首に大蛇を巻きつけており、その蛇はチロチロと赤い舌を出す。男は余裕のある表情でこちらを睨みつけていた。


奇妙な笑みを見せる。


「ブヒョヒョ……」


「お前がアブラマンダラか?」


俺の質問に、男はニヤリと笑った。

だらしなく垂れた脂肪は運動不足のものだろう。蛇を撫でると、下顎の三重になった肉がタプタプと揺れた。


「ブヒョヒョ! お前、何者だ!? ……その手の甲についたタトゥー。煙突掃除人か!?」


「ひでぇ声だな。それに線香の臭いがキツイ。こんな部屋でずっと過ごしてるからそんな身体にもなるし、声も潰れるんだ」


「黙れ! 貴様のような掃除人がぁ! このアブラマンダラ様に勝てると思うてか!!」


俺は瞬時に神樹槍を喰らわせた。


「ア〜〜ブラマンダァァア〜〜ラァァア!」


奴の怪しい手の動きに呼応して、どこからともなく蛇の大群が現れた。


その数、数万匹!


蛇達は神樹槍に絡み付き神樹の動きを止める。


ほう……。中々やるじゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る