第101話 王になった掃除人

ーーロメルトリア王国ーー


俺はロメルトリア城の最も高い西の塔に衝突した。


ドガーーーーーーン!!


轟音と共に壁は大破。

城中大騒ぎとなる。


衛兵達が西の塔へと駆け上がる。

俺はガイアマキナ神樹槍を使って衛兵達を殲滅。


指揮をとる兵士の襟首を掴んだ。


「王はどこにいる?」


神樹槍によって体中が血だらけであるが、兵士は口を割ろうとしなかった。


「い、言うもんか……。こ、殺せ」


やれやれ、ここの王様はみんなに慕われているようだ。

王の居場所がわからんと厄介だな。

とりあえず城の中心部が怪しいか……。


俺は兵士を跡形もなく神樹槍で貫き殺害すると、城の中心部へと向かった。




◇◇◇◇




ーー王の間ーー


俺が入るやいなや、魔法使いが10人以上横並びに立っていた。


一斉に上位魔法を唱える。



「「「「「 ドラゴフレア 」」」」」



竜を模した大きな炎が5連。俺の身体を包み込む。


地神操作ガイアマキナ神樹防壁!」


瞬時にスキルを発動。城の床から無数の木を生やして壁を作った。


魔法使い達は即座に次の魔法を打つ詠唱へと入る。



「面倒だ。地神操作ガイアマキナ神樹槍」



同時に魔法使い達を串刺し。

瞬殺する。


玉座は無人。


この異常事態に緊急避難したと思われる。


少々、無計画すぎたな。

この広い城内で、1人の人物を探すとなると骨が折れる。


王の間には次々と兵士が押し寄せた。

俺はその全てを串刺しにして皆殺しにする。


ハンハーグは3万の兵がいると言っていたが、この城内には何人くらいいるのだろうか?

まだ数千人程度しか殺してないな。


1人しかいないというのは本当に不便である。やはり俺の為に動く奴隷は必要だ。

とはいえ、俺は魔王になる男だからな。

こんな国くらい1人で攻め落とせないでどうするよ。奴隷に示しがつかんよな。



「面倒だが、やってやろうではないか」



俺が両手を天に掲げると城のあちこちから木が生え出した。それは大蛇のようにうねり、動く人間を串刺しにする。



2時間後。



日暮れ。



「やれやれ、もう暗くなってしまうな」


俺はやっとの思いで見つけだしたロメルトリア王の襟首を掴んで持ち上げていた。


「国王よ、どうする? 俺の奴隷になるか? 死ぬか? 2つに1つだ」


国王は、俺の手の甲についたタトゥーを睨みつけた。


「き、貴様、煙突掃除人か!? な、なぜそんな力を持っているのだ?」

 

「知るかよ。生まれた時から持ってんだ。強すぎてつまんねぇんだよ!」


「な、ならばその力、平和の為に使え!」


「つまんねぇからヤダ」


「わ、わかるぞ。そなたは煙突掃除人として虐げられたのだろう。それで世の中に復讐を誓った」


「そんなんじゃねぇよ……」


俺は空を見上げる。


空天秤……。


空天秤は破壊神シバが放ったこの世を消滅させるエネルギーだ。

人間が死なないと浮くことができない。

平和が続けば空天秤は落ちる。

その瞬間に世界は消滅。

こうやって世界はバランスを取っているんだ。


俺はそんな世界を、煙突掃除人として、ただ眺めていたかっただけだ。


ニヤリと笑う。


「見てみろよぉ。空天秤が高く浮き上がってる。昨日より随分と高い。俺がたくさん人を殺したからだぜ」


「数日前から現れた。あ、あの空飛ぶ物体はなんなのだ?」


「奴隷になったら教えてやるよぉ」


「んぐ…………。い、命をかける君主の使命を知りたい。簡潔にそなたの目的を教えてくれんか?」


「掃除だ」


「……掃除?」


「俺の気にいらん人間は皆殺しにする」


「そ、そんな目的があるか!!」


「俺はこの世界を恐怖におとしいれる! 大量虐殺が俺の目的だぁ!!」


「き、貴様の奴隷になるくらいなら、し、死んだ方がマシだ!!」


「あ、そ」


俺はパチンと指を鳴らす。

すると、無数の小さな木が国王の体を貫いた。


ドシュ! ドシュ! ドシュ!



「ぐぇッ!」



国王も大した存在じゃないな。

死に際の声はカエルの鳴き声みたいだ。


さて、城は制圧したから、今からはここを根城にしようか。


俺は神樹反動を使ってハンハーグの屋敷へと戻った。




◇◇◇◇


ーーハンハーグの屋敷ーー


俺が着地すると、ハンハーグが大勢の奴隷を使って死体処理をしていた。


「ロメルトリアの城を制圧してきた」


俺の言葉にハンハーグとヤンディは冷や汗を垂らしたまま言葉が出ない。


「こんな小さな屋敷ではどうにもならん。今からお前達を連れてロメルトリアの城に移動する」


「さ、3万の兵を倒したのですか?」


「ああ。少々、骨が折れたがな。国王は死を選んだ」


「で、では城の運営は?」


「お前に任せる」


「は……ははは……。お、仰せのままに」


ヤンディは不満げな顔を見せた。


「あ、あの。私は何をすれば良いのですか?」


「うーーん。そうだな。俺の身の回りを世話をする秘書になれ」


「は、はい、喜んで! へ、へへへ……。アスラ様の秘書……。へへへ」



俺は地神操作ガイアマキナを使って大地から木を生やした。ハンハーグ邸で死体処理をする奴隷達を包み込む。

それは丸く大きな球体と化す。

それを神樹反動でロメルトリア城まで飛ばした。



ギューーーーーーーーーーーーーン!!



ドガーーーーーーン!!


ロメルトリア城の前には大きなクレーターが生まれた。


もう夜である。


暗闇の中、奴隷達は松明で城内を照らす。

そこは死体の山。

城の壁一面は赤く染まり、死臭が充満する。

奴隷達は恐怖で顔が引き攣っていた。


ハンハーグが奴隷に向かって手を叩く。


「お前達! まずはアスラ様のお食事、寝床を用意しろ! 本格的な死体処理は夜が明けてからだ」


ヤンディは恐縮しながら俺に聞いた。


「アスラ様は何が食べたいのですか?」


「そうだな……。干し肉と水かな」


「干し肉と水?」


「あ、いや……。肉と酒かな」


「承知しました!」


そう言うと大声を張り上げた。


「オラオラァ! アンタ達! 城の台所からとびきり良い酒を見つけてきな! それから今日は肉のフルコースを作るんだよ! アスラ様が喜ぶ料理をお作りするんだ!」


うむ。

やはり奴隷は良いな。


この根城を中心に、俺に敵対する人間は一掃してやろうか。ククク。

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